【1998】 △ ルノー・ベルトラン 「クリスティのフレンチ・ミステリー(第11話)/エッジウェア卿の死」 (12年/仏) (2012/09 AXNミステリー) ★★★

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"改変の妙を愉しむ"という範疇を超えている。前監督の方が改変のツボをわきまえていた。

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輸入盤DVD

 モリエールの喜劇「ドン・ジュアン」公演を控えた劇場で、若い女性が惨殺される。犯人からの挑発を受け、劇場を訪れたラロジエール警視とランピオン刑事。時を同じくして、ラロジエールの娘ジュリエットが母親の家から家出してくる。若手俳優に熱を上げる娘に気を揉みながら捜査を開始する警視だったが、まもなくそのジュリエットが行方不明に。娘の身を案じる警視。やがて佳境に入ったリハーサルの舞台裏で連続殺人の幕が開く―。(AXNミステリー「クリスティのフレンチ・ミステリー」第9話「エッジウェア卿の死」ストーリーより)

クリスティのフレンチ・ミステリー エッジウエア卿の死3.jpg ポワロやミス・マープルに代わって、ラロジエール警視とランピオン刑事のコンビが事件を解決していく「フレンチ・ミステリー」の2012年の作品で、「AXNミステリー」で放映された際は第9話でしたが、もともと「フランス2」での放映では「第11話」となっています。このシリーズは2013年4月に第13話が放映されていますが、アントワーヌ・デュレリ(ロジエール)、マリウス・ コルッチ(ランピオン)コンビとしてはこの「第11話/エッジウェア卿の死」が最終出演作品でした(日本での放映は本国放映(9/14)の翌日(9/15)であり、この日はクリスティの誕生日だった)。

エッジウェア卿の死 ハヤカワミステリ文庫.jpg 原作は、アガサ・クリスティ(1890‐1976)が1933年に発表した名探偵ポワロシリーズの長編第7作で(原題:Lord Edgware Dies)、結構プロットは複雑な方ではないかと思いまが、どう料理するのかと思ったら、最初からいきなり原作には無い絞殺魔(劇場の管理人)が出てきて連続殺人を犯し、次は、事件の捜査に当たるラロジエール警視にくっついてきた娘のジュリエットを狙うという展開で、なんじゃこりゃという感じ。

クリスティのフレンチ・ミステリー エッジウエア卿の死1.jpg 往年の大女優が夫と離婚したがっているのは原作と同じですが、この夫は原作にあるエッジウェア「男爵」ではなく、かつては名優で今はアル中の「役者」という設定になっていて、大女優は彼と別れて伯爵(原作では「公爵」)と結婚したいと思っているけれど、今はとりあえず夫と「ドン・ジュアン」の舞台稽古をしている―ところが夫はいつもへべれけで稽古はままならず、これには大女優も舞台監督(オカマっぽい)も切れてしまう。一方、ラロジエール警視は昔から憧れていた大女優に会うことが出来て感激し、彼女を崇拝するあまり、捜査の方はやや片手間気味で、しかも、そこへ娘が行方不明になるという事態が発生し、なおさらそれどころではないといった状況に。そんな中、大女優の夫が殺害されますが、大女優の要請で代役でなんとラロジエールがドン・ジュアンを演じることに。更に、大女優の付き人の元女優(原作では有名女優の形態模写を得意とする新進女優)が殺害されます。一方、絞殺魔の劇場の管理人を追って娘の行方を突き止めたラロジエールが、娘共々管理人に殺さそうになったところへランピオン刑事が駆けつけ、あわやのところでの逆転劇。これで絞殺魔が犯した倒叙型の事件は決着。絞殺魔の最期の言葉から、大女優の夫と付き人を殺害した犯人は別にいると察したラロジエールは、犯人と思しき人物にある罠をかける―。

クリスティのフレンチ・ミステリー エッジウエア卿の死4.jpg 大女優の夫を殺害したのが大女優自身であり、アリバイ作りに自分にそっくりの真似ができる女性をパーティに出席させていたというのは原作と同じ。更に、パーティの席上で古代エジプト文明についての知識を披瀝したのが大女優の偽者であったことを確認するために、ラロジエールが大女優にエジプト風の置物をプレゼントしたというのも、原作のモチーフを一応は踏襲しています(原作では、別々のパーティに出席した同一女性であるはずの人物の教養の格差に気付き不審に思った俳優がポワロに相談をしようと電話するが、その前に殺害されてしまう。大女優よりも「新進女優」の方が教養があったということだが、ここでは大女優よりも「付き人」の方が教養があったということになっている)。

 この映像化作品だけ単独で観れば結構楽しめるかと思われ、今述べたように、原作の最も肝心なポイントは一応踏襲するなり織り込むなりしていることもあって自分も実際それなりに楽しみました。但し、あまりにも前半の"原作には全く出てこない"絞殺魔"の話のウェイトが大き過ぎて、"改変の妙を愉しむ"という範疇を超えているという印象。「どうせ別物」と割り切って観ればいいのかもしれませんが、個人的にはやはり、ここまではやり過ぎのように思いました(監督はいつものエリック・ウォレットではなく、初顔のルノー・ベルトラン。前監督の方が改変のツボをわきまえていた)。

クリスティのフレンチ・ミステリー エッジウエア卿の死5.jpg「クリスティのフレンチ・ミステリー(第11話)/エッジウェア卿の死」」●原題:LES PETITS MEURTRES D'AGATHA CHRISTIE/ LE COUTEAU SUR LA NUQUE(Lord Edgware Dies)●制作年:2012年●制作国:フランス●本国上映:2012/9/14●監督:ルノー・ベルトラン●脚本:Thierry Debroux●出演:アントワーヌ・デュレリ/マリウス・コルッチ/A Maruschka Detmers/Jean-Marie Winling/Alice Isaaz/Guillaume Briat/Julien Alluguette/Frédéric Longbois●日本放映:2012/09/15●放映局:AXNミステリー(評価:★★★)

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