【1983】 ○ エリック・ウォレット 「クリスティのフレンチ・ミステリー(第9話)/書斎の死体」 (11年/仏) (2012/09 AXNミステリー) ★★★☆

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最初はビックリ。でも意外とプロットの根幹部分は変えず、"味付け"にこだわっている感じ。

フレンチ・ミステリー(第11話)/書斎の死体 dvd.jpg クリスティのフレンチ・ミステリー⑪書斎の死体05.jpg 書斎の死体2.jpg

 泥酔したラロジエール警視が目覚めると、ベッドに若い女性の死体が横たわっていた。全く身に覚えのないラロジエールだったが、第一容疑者として警察に身柄を拘束されてしまう。やがて、女性は娼婦と判明する―。

書斎の死体 ハヤカワ文庫.jpg ポワロやミス・マープルに代わって、ラロジエール警視とランピオン刑事のコンビが事件を解決していく「フレンチ・ミステリー」で、2011年10月に本国で放映されたもの。原作はアガサ・クリスティが1942年に発表したものです。シリーズ9話目ともなると、思い切り遊んでいる感じもします(「AXNミステリー」で放映された際は〈第11話〉としての放映だったが、元々のフランス2での放映時は〈第9話〉として放映された)。

クリスティのフレンチ・ミステリー⑪書斎の死体01.jpg そもそも原作では、「退役大佐の家の書斎」で若い女の死体が見つかることになっているのが、何と、このシリーズの探偵役であるラロジエール警視の「自宅」で女の死体が見つかってしまうわけで、冒頭からビックリ。これ、爆笑パロディ版なのかと。

書斎の死体4.jpg 原作では、被害者の女性がホテル付きのダンサーであったことから、ホテルを舞台に謎解きが進むわけですが、こちらは「ホテル」ではなく「売春宿」になっていて、しかも、ラロジエール警視の馴染みの店であるというのが笑えます。拘禁の身にあったラロジエールは、移送中に脱走し、売春宿に逃げ込んでそのままそこを根城にしてしまう―。

クリスティのフレンチ・ミステリー⑪書斎の死体04.jpg 事件の源となる大金持ちの老人も、高級ホテル住まいの客ではなく、売春宿の女に惚れてそこに滞在し続けているという設定で、原作はこのホテル住まいの大富豪を中心に関係者の姻戚関係がかなり複雑なのですが、そこは放蕩癖のある「娘婿」を「実の息子」に置き換えたり、「息子の嫁」も方は出てこなかったりして、やや端折っています。
 でも、原作は容疑者が豊富で、富豪の娘婿・息子の嫁の他に、いつも自宅で騒がしいパーティを開いている映画関係の男、ホテル・ダンサー兼テニスのコーチのハンサム男、被害者の女が消える前に一緒にいた男などがいましたが、大体それらに該当する人物は一応は揃えてみせています。

書斎の死体5.jpg 前半は第一容疑者としてラロジエール警視に容疑がかかっているため、その無実を晴らせるかどうかは、ランピオン君にかかっているという感じすが、ラロジエール警視の指示で、ホモセクシャルの彼が嫌々ながら売春宿に行った揚句、宿の経営を手伝っているハンサム男とホモ達になってしまうのは、このシリーズならでは(何と、ホモ達同士ベットで知恵を出し合う。そして、ランピオンがその彼を犯人ではないかと疑ってしまったことで二人の仲は決裂、そのことをランピオンは後々まで悔いる―という、この部分だけでBL的なストーリーが1つ仕上がっている)。

 結局、この話は、言ってしまえばアリバイ作りのための「死体入れ替え」トリックであって、結構"本格"推理っぽい複雑さを秘めたプロットであるわけですが、ラロジエール警視の最後の謎解きは、それを分かりやすく説明しているため、原作のプロットを忘れてしまった人は、この作品を見て十分思い出せると思います(但し、犯人像は一部改変されてしまっている。おそらく、原作を知っている人向けに捻ったのだろうが)。

クリスティのフレンチ・ミステリー⑪書斎の死体02.jpg 個人的には原作を大きく捻じ曲げているものはあまり好きではないのですが、このシリーズは最初から「改変の妙」を楽しむものであってあまり気にならず、この作品などは、冒頭どうなることかと思ったけれど、結局は、意外とプロットの根幹部分は変えずに、どう"味付け"するかにこだわっているなという感じ。

 時代設定はクリスティの原作に近いところまで遡るようですが、雰囲気はイギリスとフランスで全然違うなあ、「ホテル」を「売春宿」に置き換えてしまったというのが、その大きな要因としてあるかと思いますが、売春宿の退廃的レトロ感と言うか気だるい雰囲気などはよく出ていたように思います。コアなクリスティの原作ファンには、冒頭でもうすぐに拒絶反応を起こしそうな出だしだったけれど、観終わってみれば個人的にはまあまあ面白かったです。

クリスティのフレンチ・ミステリー⑪書斎の死体03.jpg「クリスティのフレンチ・ミステリー(第9話)/書斎の死体」」●原題:LES PETITS MEURTRES D'AGATHA CHRISTIE/ UN CADAVRE SUR L'OREILLER(BODY IN THE LIBRARY)●制作年:2011年●制作国:フランス●本国上映:2011/10/28●監督:エリック・ウォレット●脚本:Sylvie Simon ●出演:アントワーヌ・デュレリ/マリウス・コルッチ/Valérie Sibilia/Juliet Lemonnier/Nicolas Abraham/Charles Templon/Vernon Dobtchef●日本放映:2012/09●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)

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