【1969】 ○ アンディ・ウィルソン 「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第1話)/書斎の死体」 (04年/英) (2006/12 NHK-BS2) ★★★☆

「●TV-M (クリスティ原作)」の インデックッスへ Prev|NEXT⇒ 【1970】「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第2話)/牧師館の殺人 
「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●海外のTVドラマシリーズ」の インデックッスへ(「アガサ・クリスティー ミス・マープル」) 「●く アガサ・クリスティ」の インデックッスへ

原作からの改変点とビジュアル面の美しさが、シリーズの愉しみ方のポイントか。

ミス・マープル 書斎の死体 dvd.jpg書斎の死体.jpg 第1話「書斎の死体」3.jpg
アガサ・クリスティーのミス・マープル Vol.1 書斎の死体」(DVD)  
ジェラルディン・マクイーワン/ジョアンナ・ラムレイ
Joanna Lumley2.jpg書斎の死体 t.jpg セント・メアリー・ミードにあるバントリー大佐(ジェームズ・フォックス)の屋敷で、ブロンドの若い女性の死体が発見され、同じ頃、観光地のマジェスティック・ホテルでダンス・ホステスをしていたルビー(エマ・ウィリアムス)が失踪したとの情報が入る。ルビーの従姉ジョージーが遺体を確認したところ、殺されたのはルビーであることが判明。バントリー夫人のドリー(ジョアン第1話「書斎の死体」1.jpgナ・ラムレイ)に捜査を依頼されたミス・マープル(ジェラルディン・マクイーワン)は、ドリーと共にマジェスティック・ホテルに滞在することになる。捜査に当たるバントリー大佐の友人メルチェット本部長(サイモン・カロウ)と応援のハーパー警視(ジャック・ダヴェンポート)は、最初はマープルが捜査に口を挟むのを迷惑がるが、次第に彼女の推理に頼るようになる。調べてみると、ルビーは大富豪のジェファーソン(イアン・リチャードソン)に気に入られており、多額の信託財産を受け取ることになっていた。養女になる話まで進んでいたという。ルビーが死ぬことで得をするのは、ジェファーソン家の嫁アデレード(タラ・フィッツジェラルド)と娘婿のマーク(ジェイミー・シークストン)だが、どちらもアリバイがあった。ルビーの相手役ダンサーのレイモンド(アダム・ガルシア)や映画製作者バジル(ベン・ミラー)にも容疑がかる。捜査が難航する中、またもや若い女性の死体が発見される―。

ミス・マープル 書斎の死体 001.jpg 2004年制作のジェラルディン・マクイーワン(Geraldine McEwan)主演の英国グラナダ版で、この年に作られたシリーズ1全4話の内の第1話。グラナダ版は2013年までにシーズン6・全23話が制作され、ジェラルディン・マクイーワンがマープル役を演じたのは第3シーズン通算第12話まで。日本語版吹き替えは、第4話まで岸田今日子が担当しています(第5話から草笛光子)。
 
書斎の死体 ハヤカワ文庫.jpg 原作は1942年にアガサ・クリスティが発表した、ミス・マープルシリーズの第2長篇ですが(第1長編は『牧師館の殺人』)、この映像化作品では時代設定は、映画「日の当たる場所」('51年/米)の話が出てくることから、そのあたりかと思われ、シリーズを通してそういう時代設定になっているようです。

Joanna Lumleyc5.jpg バントリー大佐を「チャーリーとチョコレート工場」('05年)にも出ていたジェームズ・フォックス、その妻ドリーをボンドガールも演じたことがあるジョアンナ・ラムレイ(Joanna Lumley)、マジェスティック・ホテルに滞在中の資産家老人ジェファーソンを、ミュージカル「マイ・フェア・レJoanna Lumley.jpgディ」で知られるイアン・リチャードソン、ジェファーソンの義理の娘アデレードを、「ウェイキング・ザ・デッド 迷宮事件特捜班」で女性法医学者を演じたタラ・フィッツジェラルド、映画関係の仕事をしているということだったが実は下っぱの大道具係りだったというバジル・ブレイクを、「ミステリー in パラダイス」で警部補役を演じたベン・ミラーと、堅い役者らが脇を固めている印象。

 先行するBBC制作のジョーン・ヒクソン版の「書斎の死体」('84年)が156分の長尺であるのに対し、こちらは95分とコンパクトでテンポはいいですが、人物関係が富豪の口から早口で説明されたりするので、原作を知らないと全体把握はキツイかも。逆に、過去に原作を読んでいて、ちょっと忘れかけている人には丁度いいくらいで、その辺りに照準を合わせているのかも。

Joanna Lumley

 原作では飛行機事故で亡くなったことになっていた富豪の息子・娘を、プロローグでいきなり戦争中に自宅で誕生パーティの最中に被弾死したことに変える必要は無かったのでは。但し、そんなことよりもっと大きな変更点は、犯人の一人が男性から別の女性に変えられてしまっていることで、これにはちょっとビックリしました(しかも、共犯者と同性愛関係? シリーズとしてのオリジナリティを出そうとしたのか)。

 ミス・マープルにくっついて事件に身を乗り出してきて、一方で高級ホテルでの生活もエンジョイするドリーを演じるジョアンナ・ラムレイのファッションや、ホテル内やプールなどの豪華な設備、ダンスホールで毎晩繰り広げられるチャールストンやタンゴなど、お洒落、ゴージャス感、音楽を楽しめます。

第1話「書斎の死体」2.jpg マジェスティック・ホテルはクリスティの生まれ故郷トーキーにあるインペリアル・ホテルがモデルとされていますが、この映像化作品での美しい海岸線の白い崖は、映画「さらば青春の光」のラストシーンに出てきたイーストボーン郊外にあるビーチヘッドの崖ではないかと。

アガサ・クリスティー ミス・マープル vol1.jpg グラナダ版はビジュアル面で明るく綺麗に撮っているなあという印象で、ストーリー改変に不満を抱く人も当然いるだろうけれど、こうしたビジュアルを愉しむのと併せて、原作からの改変点を見つけることも(この作品の場合、"探す"というほどのこともないほど明確な違いがあるわけだが)愉しむようにすれば、映像、ストーリー共にそれなりに愉しめるかも。
アガサ・クリスティーのミス・マープル DVD-BOX 1」 
【収録内容】
全4話収録:第1巻『書斎の死体』/第2巻『牧師館の殺人』/第3巻『パディントン発4時50分』/第4巻『予告殺人』

                              Joanna Lumley in 007
女優のジョアンナ・ラムリー.jpgjoanna lumley 007.png「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第1話)/書斎の死体」●原題:THE BODY IN THE LIBRARY, AGATHA CHRISTIE`S MARPLE SEASON 1●制作年:2004年●制作国:イギリス●本国放映:2004/12/12●演出:アンディ・ウィルソン●製作:マシュー・リード●脚本:ケビン・エリオット●音楽:ドミニク・シャーラー●原作:アガサ・クリスティ「書斎の死体」●時間:95分●出演:ジェラルディン・マクイーワン/イアン・リチャードスン/タラ・フィッツジェラルド/ジェイミー・シークストン/ジョアンナ・ラムレイ/ジェームズ・フォックス/ベン・ミラー/メアリー・ストックリー/エマ・ウィリアムス●日本放送:2006/12/07●放送局:NHK‐BS2(評価:★★★☆)

ミス・マープル ジェラルディン・マクイーワン.jpg「アガサ・クリスティー ミス・マープル」AGATHA CHRISTIE`S MARPLE (ITV 2004~) ○日本での放映チャネル:NHK‐BS2(2006~)/ミステリチャンネル、AXNミステリー
ミス・マープル:

ジェラルディン・マクイーワン (Geraldine McEwan)(1作目「書斎の死体」~12作目「復讐の女神」まで)
ジュリア・マッケンジー (Julia McKenzie)(13作目「ポケットにライ麦を」~)

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1