【1945】 ○ アガサ・クリスティ (橋本福夫:訳) 『蒼ざめた馬 (1962/01 ハヤカワ・ミステリ) ★★★☆

「●く アガサ・クリスティ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1389】 クリスティ『鏡は横にひび割れて
「○海外サスペンス・読み物 【発表・刊行順】」の インデックッスへ

意外とライト感覚で楽しめた作品。敢えて言えば、犯人がしなくてもいい余計なことを...。

The Pale Horse.jpg蒼ざめた馬 ポケットミステリ.jpg 蒼ざめた馬 アガサ・クリスティ ハヤカワ文庫.jpg 蒼ざめた馬 アガサ・クリスティ クリスティー文庫.jpg
蒼ざめた馬 (1962年) (世界ミステリシリーズ)』『蒼ざめた馬 (1979年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)』『蒼ざめた馬 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
 
The Pale Horse (Agatha Christie Collection)(2002)

fTHE PALE HORSE     f .jpg 歴史学者のマーク・イースターブルックは、ムガール建築に関して本の執筆のためにチェルシーに部屋を借りていたが、ある日、執筆の息抜きに入ったカフェで女の子同士の喧嘩に遭遇し、喧嘩騒ぎの後に一方が他方の髪の毛をごっそり引き抜いた束が落ちていたのを見る。喧嘩の後に店員から彼女らの名を聞いていた彼は、その1週間後に髪の毛を引き抜かれた方の娘が死んだことを新聞で知る。彼は教会の募金活動への協力を依頼に推理作家のオリヴァ夫人のもとを訪れた折にこの話をする。
 一方、ある霧の夜、ロンドンのある下宿屋である女性の臨終に立ち会い、その告白を聞いた神父が帰り道で撲殺されるという事件が起こるが、彼の靴の中に紙切があり、そこには9人の名が書き連ねられていた。神父の検視を担当した警察医のコリガンは、そのことをルジューン警部から知らされる。その9人には何の関連もないように思われたが、そのうち数人は既に謎の死を遂げているようだ。
 マークは友人たちとの劇場からの帰りのお喋りの中で女友達の一人から「蒼ざめた馬」という言葉を耳にし、翌朝にオリヴァ夫人からの電話でまた募金を行う教会の近くにある「蒼ざめた馬」という名の館の存在を聞かされる。そんな折、友人である警察医のコリガンから先の神父殺しの事件について聞き、最近亡くなった名付け親の名前が死んだ女性のリストにあったと知って事件に関心を持つ。教会に出かけたマークは「蒼ざめた馬」に住む3人の女が魔法で人を呪い殺すという噂を耳にし、一連の事件とこの館は関係があるのではないかと直感して自らを囮に館へ乗り込むが―。
Fontana (1964)
The Pale Horse - Fontana.jpg 1961年にアガサ・クリスティ(1890‐1976)が発表した作品で(原題:The Pale Horse)、ポアロもミス・マープルも登場しないノン・シリーズもの。謎解きそのものものさることながら、オカルトっぽい雰囲気が独特のマクベス改版 角川文庫クラシックス.jpg作品です。シェイクスピアの「マクベス」のことが触れられていて、三人の魔女とかが出てきて、本作の探偵役とも言える主人公のマークに「魔法は存在する」やら「直接手を下さなくても人を殺すことができる」やら説きます。作者であるクリスティ自身はオカルトを否定していて、それに沿った結末なのですが、「魔法は存在する」はともかく、「直接手を下さなくても人を殺すことができる」はあり得るかも。

マクベス―シェイクスピアコレクション (角川文庫クラシックス)』['96年](カバーイラスト:金子國義)

 「蒼ざめた馬」に読者の関心を引き付けるためにかなりのページを割いているように思いました。但し、マークが、言わば現代の若き知性の代表格のような人物造型であるため(この作品は主に彼の一人称で綴られている)、このオカルトっぽい仕様は、あくまでも犯人が仕組んだ見せかけのものであることは容易に想像がつきます。

 プロット的には意外と複雑では無かったのですが、事件の黒幕たるに相応しい有力な容疑者に読者の疑いをじわじわと引き付けておいて、もうこれが間違いなく犯人だと思わせておいたところでラストはストンと落とされる感じで、マークと彼が新たに出会った女友達のジンジャーが事件の探究を通して急速に接近していくという恋物語も含め、どちらかと言うとライト感覚で楽しめた作品でした。

蒼ざめた馬 dvd.jpgアガサ・クリスティー・コレクション 蒼ざめた馬.jpg蒼ざめた馬 1997 axn.jpg ただ、敢えて言えば、犯人がしなくてもいい余計なことをして自ら墓穴を掘るというパターンが推理小説の一つの常套的The Pale Horse 1997 e22.gif展開であるとは言え、この作品についてはあまりにそれが著しく、そこがどうかなとも。犯人の事件への絡み方も、やや説明不足のような感じがしました。
「アガサ・クリスティ/青ざめた馬 (魔女の館殺人事件)」 (97年/英) ★★★☆

蒼ざめた馬 DVD.jpgTHE PALE HORSE AGATHA CHRISTIE`S MARPLE.jpg蒼ざめた馬 1997 3老婆.jpg 「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第17話)/蒼ざめた馬
」 (10年/英・米) ★★★☆  

  
【1962年新書化[ハヤカワ・ポケットミステリ(橋本福夫:訳)]/1979年再文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(橋本福夫:訳)]/2004年再文庫化[ハヤカワ・クリスティー文庫(橋本福夫:訳)]】

About this Entry

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1