【1937】 ○ アガサ・クリスティ (山下暁三郎:訳) 『牧師館の殺人 (1954/11 ハヤカワ・ミステリ) 《(羽田詩津子:訳) 『牧師館の殺人 (2011/07 早川書房・クリスティー文庫)》 ★★★★

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ミス・マープルを"目撃証人"にして、自らのアリバイ作りに利用した犯人の大胆さ。

『牧師館の殺人』 (1954.jpg牧師館の殺人 クリスティー文庫 新訳.jpg  牧師館の殺人 kurisu.jpg  牧師館の殺人 ハヤカワ文庫.jpg  牧師館殺人事件 sinntyou .jpg
『牧師館の殺人』(ハヤカワ・ミステリ(山下暁三郎:訳))『牧師館の殺人 (クリスティー文庫)』(新訳/羽田詩津子:訳)カバーイラスト:安西水丸 『牧師館の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)』 『牧師館の殺人 (1978年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)』(田村隆一:訳) 『牧師館殺人事件 (新潮文庫)』(中村妙子:訳)

The Murder at the Vicarage.jpgThe Murder at the Vicarage - Fontana.jpgThe Murder at the Vicarage - Fontana 839.jpg 小さな田舎村セント・メアリ・ミードにある牧師館の書斎で治安判事のプロズロー大佐が銃殺されているのが発見された。牧師館の住人であるレオナルドド・クレメント牧師とその妻グリゼルダが共に外出している時を狙って行われた犯行らしく、現場には被害者が6時20分に書いたと思われる手紙と、6時22分で止まった時計があった。しかしその時計は牧師が常日頃から15分進めていたもので、警察は犯行時間の特定に苦慮する。そうした中、プロズロー大佐の妻と恋仲に押し入っていた画家のローレンス・レディングが自首してくるが、らにその直後、今度は大佐の妻が自首してきた―。(First Edition Cover (1930)/Fontana (1961・1963))

THE MURDER AT THE VICARAGE  .jpg 1930年に刊行されたアガサ・クリスティ(1890‐1976)の作品で(原題:The Murder at the Vicarage)、ミス・マープルの長編初登場作品(短編では「火曜クラブ」(1928年)に先に登場。但し、『火曜クラブ』が短編集として刊行されたのは1932年)で本作の2年後)。

 早川書房のハヤカワ・(ポケット)ミステリに山下暁三郎訳(1954年)があり、その後ハヤカワ・ミステリ文庫に田村隆一訳(1978年)が、そして、それがクリスティー文庫(2003年)に収められ、その田村隆一訳のクリスティー文庫を羽田詩津子氏の新訳に置き換えたようですが(田村隆一訳から実質30年以上経っていたためか)、クレメント牧師の「手記」という体裁をとっている本作が、更にすらすら読めるようになったようにも思います。

THE MURDER AT THE VICARAGE. .Fontana 1988

 ミス・マープルの住まいと牧師館の位置関係などが図で示されていて、時間トリックなど、このシリーズにしては本格推理っぽい色合いもありますが、一方で、セント・メアリ・ミードの村の(殺人事件を抜きにすれば)長閑な様子や、老婦人たちのお喋りなど、ミス・マープル・シリーズに欠かせない要素が詰まっています。

 最初に画家のローレンス・レディングとロズロー大佐の2人が自首してきて、でも、お互いに相手を庇っての"勘違い"による自首だったということで、そうなると今度は別に怪しいのが4人も5人も出てきて、さあ、この中の誰が犯人か―という、読者の導き方が上手いなあと。

牧師館の殺人 dvd2.jpg牧師館の殺人 t2.jpg  結局、犯人は、物語の"脇役"が最後に突然浮かび上がってくるような、或いは、後から付け足したような人物ではなかった― 但し、こうなると、犯人は捜査がどのように行われるか計算づくであったばかりでなく、村の噂なども利用したことになります。更にスゴイことには、ミス・マープルが観察眼に長けた人物であることを予め見抜いたうえで、逆に彼女を"目撃証人"にして、自らのアリバイ作りに利用しているわけだから、大胆と言えば大胆、強者(つわもの)と言えば強者だったなあ。   「ミス・マープル(第5話)/牧師館の殺人」 (86年/英) ★★★

牧師館の殺人 o3.jpgMURDER AT THE VICARAGE 2004 01.jpg 「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第2話)/牧師館の殺人」 (04年/英) ★★★☆

【1954年新書化[ハヤカワ・ポケットミステリ(山下暁三郎:訳)]/1976年文庫化[創元推理文庫(厚木淳:訳)]ミス・マープル最初の事件1978年再文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(田村隆一:訳(『ミス・マープル最初の事件』)]/1986年再文庫化[新潮文庫(中村妙子:訳)]/2003年再文庫化[早川書房・クリスティー文庫(田村隆一:訳)]/2005年再文庫化[偕成社文庫(茅野美ど里:訳)(『牧師館の殺人―ミス・マープル最初の事件』)]/2011年再文庫化[早川書房・クリスティー文庫(羽田詩津子:訳)]】

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