【1926】 ○ ロバート・バトラー 「刑事コロンボ(第22話)/第三の終章」 (74年/米) (1974/12 NHK) ★★★★

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小説の梗概という証拠が凝っている。シリーズの中でもプロット的には優れている方か。

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Riley Greenleaf (Jack Cassidy)
特選 刑事コロンボ 完全版「第三の終章」【日本語吹替版】 [VHS]

刑事コロンボ(第22話)/第三の終章op.jpg刑事コロンボ/第三の終章 03.jpg 大衆向けの官能小説で知られる出版社の社長グリンリーフ(ジャック・キャシディ)は、地方紙の記者として燻っていたアラン・マロリー(ミッキー・スピレーン)の作家としての才能を見出したが、その後はマロリーの意思に反して官能小説ばかり書かせていた。売れっ子作家になっていたマロリーはそのことにうんざりし、シリアスな小説を書くために大手の出版社に移籍しようとしていた。そこでグリンリーフはマロリーの新作「サイゴン刑事コロンボ/第三の終章 02.jpgへ60マイル」と保険金を詐取するためにマロリーの殺害を計画。ベトナムからの復員兵で爆弾マニアのエディ・ケーン(ジョン・チャンドラー)を使ってマロリーを射殺。その後、エディも爆弾作成中に事故死したように見せかけて殺害する―。

 第22話「第三の終章」は、このシリーズで3度犯人役を演じているジャック・キャシディ(1927-1976)の第3話「構想の死角」(監督はS・スピルバーグ)に次ぐ登場で(あとの1回は第36話「魔術師の幻想」)、前回は「自分では1行も書かないミステリ作家」という役でしたが、今回も、「売れっ子作家に本人の意に反して官能小説を書かせ、自分は儲ける出版社の社長」という、ちょっと似た感じの役どころかな。

Mickey Spillane COLUMBO.jpg 殺人の被害者となるベストセラー作家マロリーを演じたのが、『裁くのは俺だ』など私立探偵マイク・ハマーが主役のハードボイルド小説の作家ミッキー・スピレーンその人であったり、コロンボがグリンリーフに、「うちの署にも本を書く奴がいましてね」と話すのが、当時、実際にロス市警に勤務しながら小説を発表していたジョセフ・ウォンボー(リチャード・フライシャー監督の映画「センチュリアン」('72年)の原作者)を指していたりと、小説ネタが遊び感覚で織り込まれています。

刑事コロンボ(第22話)/第三の終章 07.jpg グリンリーフは、新作のネタに困っていたマロリーがエディの小説の構想を盗み、それを恨んだエディがマロリー殺害に及んで、本人は爆弾製造中に事故死―という筋書きを完成させますが、たまたまコロンボが、「サイゴンへ60マイル」がロック・ハドソン主演によって映画化されることになったため、主人公を死なせるわけに行かず、最近になって結末を変えたという話を関係者から聞き及んでいて、エディの死亡現場にあった以前にグリンリーフに持ち込んだとされる小説の梗概に、その変えられた結末が既に書かれていたことから、変えられた結末の方しか知らなかったグリンリーフが、エディに罪を被せるために偽造した梗概に最終稿の梗概を書いてしまっていたことが決め手に。

 まあ、いつも通り、コロンボ早くからグリンリーフが犯人であると睨んではいたのでしょうが、小説の梗概の中身が証拠というのが凝っているというかお洒落で、しかも、結末が変更されたものであることを知らされたグリンリーフが、その場でギブアップせざるを得ない強力なものであり、シリーズの中でもプロット的には優れている方だと思います。

橋爪功.jpg 加えて、ジャック・キャシディの不敵な面構えと犯行の大胆さ(「構想の死角」でも、作家に加えて真相を知った雑貨屋の女主人を殺害している)、ジョン・チャンドラーの偏執的な爆弾マニアぶりも良かったです(吹替えは無名時代の橋爪功で、当時、小池朝雄の所属劇団の後輩)。


pubper.jpgモーリス・マルサック.jpg 聞き込みで高級レストランを訪れたコロンボが、メニューに載っていない好物の「チリ」を注文し、更にケチャップやらクラッカーやらを持ってこさせて老ウェイター(モーリス・マルサック)を憮然とさせ、逆に支払いの時はその値段を見て驚くという、お約束のコミカル・シーンなども楽しめます(後で若い警官に「チリには気をつけた方がいい」と聞く側には訳の分からないアドバイスをしている)。

 因みに、この作品は、NHKでの当初の放送予定日だった'74年8月31 日のその前日30日に、丸の内で過激派による「三菱重工本社ビル爆破事件」が発生したため、冒頭に爆破シーンがあることや、爆弾マニアのエディ・ケーンが登場することからNHKは放映を自粛(差替えとして、第23話「愛情の計算」を先に放映)、その年の12月になってやっと放映されました。
 
 「刑事コロンボ(第22話)/第三の終章」●原題:PUBLISH OR PERISH●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・バトラー●製作:スローランド・キビー&ディーン・ハーグローブ●脚本:ピーター・S・フィッシャー●音楽:ビリー・ゴールデンバーグ●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/ジャック・キャシディ/ミッキー・スピレーン/マリエット・ハートレイ/ジャック・オービュション/ジョン・チャンドラー/アラン・ファッジ/モーリス・マルサック●日本公開:1974 /12●放送:NHK:★★★★)
マリエット・ハートレイ in「第三の終章」(第22話)/「死者のメッセージ」(第41話)
マリエット・ハートレイ 第三の終章.jpgマリエット・ハートレイ 死者のメッセージ.jpg

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