【1918】 △ 丸根 賛太郎 (原作:丸根 賛太郎) 「殴られたお殿様 (1946/03 大映京都) ★★★

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"のほほ~ん"とした予定調和。「水戸黄門」が風刺の対象になっている?

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「殴られたお殿様」(1946) 羅門光三郎/市川右太衛門

 旅役者中村三津蔵(羅門光三郎)と東家勘平(原健作)の二人は、一座離散のため金に困り、宿屋に泊っては夜になると逃げ出すという旅を続けていたが、ある城下で夕立金左衛門(市川右太衛門)という男に出会う。三人は、お忍びの巡検使と間違えられ、豪華な酒宴に招待されるが、義に厚い金左衛門は、領内の悪政を知って黙ってはおれず、苦しめられていた民衆を救うべくお殿様(阿部九洲男)に直談判を申し入れる―。

 1946(昭和21)年3月公開の、市川右太衛門(1907-1999/享年92)の戦後の映画出演第1作で、GHQ統制下でチャンバラ映画が禁止されていた時期の時代劇であり、そうした所謂"殺陣の無い時代劇"としての戦後初作品である「狐の呉れた赤ん坊」('45年)に続く、同じく丸根賛太郎監督作品です。

 武士階級の非道が糾弾され、民衆の団結が高らかに叫ばれるという展開は、戦後民主主義の勢いを表しているとともに、同年4月に、今井正監督による、戦時中の工場での財閥の横暴を描いた「民衆の敵」('46年/東宝)が公開されていることなどからも、映画制作にGHQに意向が少なからず反映されていた時期でもあったことが窺えます。

 一方、この時期、こうした明るくユーモラスなコメディ映画なども多く(この作品と同時に封切られた大映作品は「明治の兄弟」「町の人氣者」「母性病院」)、時代は終戦の安堵の後に戦争で疲弊し貧困化した暮らしが現実のものとなっていたことを考えると、"努めて"こうした明るい作品が作られたのではないかとも思います。

 この作品もギャグシーンの連発ですが、個々のギャグにはクスッと笑えるものもありましたが、全体のストーリー展開としてはあまりに"のほほ~ん"とした予定調和で、パターン化し過ぎているかなあと

 偽巡検使はゴーゴリの「検察官」をヒントにしているようですが(この作品はフランス映画「検察官」を翻案したものとも言われている)、本物より偽物の方が活躍するというのが面白く、また、三人が化ける「ご隠居と従者」の一行も、後からから出てくる本物の「巡検使」一行も、共に「水戸黄門と助さん・格さん」のイメージをそのままなぞっているのが興味深かったです(つまり、「水戸黄門」が風刺の対象になっている?)。

殴られたお殿様3621 - コピー.JPG殴られたお殿様3621 - コピー (2).JPG「殴られた殿様.」●制作年:1946年●監督・原作・脚本:丸根賛太郎●製作主任:黒田豊●撮影:松井鴻●音楽:西梧郎●時間:83分●出演:市川右太衛門/羅門光三郎/原健作/阿部九洲男/大井正夫/香川良介/小川隆/寺島貢/南部章三/原聖四郎/水野浩/津島慶一郎/上田寛/岬弦太郎/葉山富之輔/大川原左雁次/若松文男/三浦志郎/坂本清之助/堀北幸夫/福井隆次 /長谷川茂/森野鍜治哉/月丘夢路/香住佐代子/江原良子/小松みどり/高木峯子/二葉かほる●劇場公開:1946/03●配給:大映京都●最初に観た場所:京橋フィルムセンター(00-06-03)(評価:★★★)

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This page contains a single entry by wada published on 2013年7月 5日 23:33.

【1917】 ○ 丸根 賛太郎 (原作:谷口善太郎) 「狐の呉れた赤ん坊」 (1945/11 大映京都) ★★★★ was the previous entry in this blog.

【1919】 ○ 稲垣 浩 (原作:田村一二) 「忘れられた子等」 (1949/10 新東宝) ★★★☆ is the next entry in this blog.

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