【1902】 △ 高杉 良 『人事の嵐―経済小説傑作集』 (2012/03 新潮文庫) ★★☆

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過去の短編集から抜粋し再構成。モチーフ的に古く、テーマも不統一。

高杉 良 『人事の嵐』.jpg人事の嵐: 経済小説傑作集 (新潮文庫)』 (2012/03 新潮文庫)

 入院中の社長の阿部は、後任を江口と定めたが、江口は固辞して一期下の大谷を推した。後任人事決定前に阿部は没した。江口は社長の遺志だと大谷を口説くのだが―(「社長の遺志」)。会社更生法の申請をした商事会社で45歳の取締役が誕生した。人事部長兼務である。しかし、使命は減員計画の推進であった―(「人事部長の進退」)

 『銀行大合併』『社長、解任さる』など過去に文庫された短編集(何れも講談社文庫)の中から、企業人事に関係したものを8編選んで短編集として再構成した新潮文庫版ですが、時代背景が80年代前半と今から30年以上も前のものばかりで、ちょっと古いかなという感じ。

 「人事」に的を絞ったのはいいけれど、「社長の遺志」ほか最初の3編が、企業のトップ人事を巡る新聞の経済記者の情報リーク合戦、夜討ち朝駆けが背景となっていて、あまりに似たような背景のものが並んでしまったなあという印象です(モチーフ的にも古いし、人事と言うより広報の話だったりもする)。当時に読めば、モデルがあったりもして、それなりに面白いのでしょうが。

 「人事部長の進退」に出てくる"小沢商事"は'84年に倒産した大沢商会がモデルで、この話は後に、作中にも出てくる管財人の弁護士を主人公とした長編『会社蘇生』となって結実しますが、やはり長編の方がまだ面白いという印象です。

 後半は、こうした人事部長や現場クラスが主人公のものも出てきますが、結局「トップ人事」に焦点を当てたものか、「人事パーソン」に焦点を当てたものか、全体として焦点(テーマ)の定まらない印象になっており、「人事」という言葉のみを基準にした作品の選抜方法がやや安易だったようにも思います。

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This page contains a single entry by wada published on 2013年7月 1日 00:11.

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