【1895】 △ 那珂 通雅 『世界で勝つグローバル人材の条件 (2013/03 幻冬舎) ★★☆

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先輩が後輩に向けて説教調で自身の成功体験を語るパターンとちょっと似てしまっている。

世界で勝つグローバル人材の条件.jpg世界で勝つグローバル人材の条件』(2013/03 幻冬舎)

 世界最大の金融組織シティ・グループで20年間にわたりグローバル市場を舞台に活躍し、シティのトップ0.1%の経営陣にも選ばれたという著者が、ビジネスパーソンに向けて、弱肉強食のグローバル市場において日本人として活躍するための条件(心得)を説いた本です(著者は現在、国際金融コンサルタント乃至財務アドバイザーとして活躍しているらしい)。

 「持つべき武器は日本人としてのアイデンティティ」とし、「日本人に必要なサムライ魂の鍛え方」とは何かといった具合に、「日本人」の強みを強調している点が類書と比べた際の特徴と言えば特徴。「日本人としてのアイデンティティ」が大事との考え方に異論はないし、中身は読んで元気づけられる要素も多かったけれど、一方で、「自分の頭で考え、自分の言葉で伝え、自分で動く」「賢明であれ」「強靭であれ」「感性豊であれ」といった言葉は、月並みと言えば月並との印象を持ちました。

 自身の経験に裏付けされてのそれらの言葉とみれば、それなりに説得力はないことはないですが、金融市場も、またそこで働く日本人人材の市場も、著者がキャリアの階段を駆け昇っていた頃と今現在では大きく異なっていると思われますし、誰もが著者と同じようなキャリアを歩めるわけでもなく、先輩が後輩に向けて、説教調みたいな感じで自身の成功体験を語るパターンとちょっと似てしまっている印象も受けました(一般論に落とし込む段階で全て精神論になってしまっている)。

世界で通用するリーダーシップ2.jpg戦略人事のビジョン.jpg ビジネス啓蒙書として読む分にはまあまあですが、リーダーシップを学ぶという観点からみれば、こうした個人の成功譚を1つ1つ読むのは、あまり効率が良いことのように思えません(と言いつつ、GEの日本法人社長からノバルディス ファーマの日本法人社長に転じた三谷宏幸氏の 『世界で通用するリーダーシップ』 ('12年/東洋経済新報社) には★★★★☆の評価をつけたのだが、三谷氏は、執筆にあたって「自慢話」にならないよう配慮したとインタビューで語っている。コンサルタントとして独立したわけではないから、余計な自己宣伝は要らないというスタンスで書かれているという意味では、同じくGEからLIXILグループの執行役副社長に転じた八木洋介氏の 『戦略人事のビジョン―制度で縛るな、ストーリーを語れ』 ('12年/光文社新書)についても言える(評価★★★★★))。

 「グローバル人材の条件」というタイトルテーマに沿って本書の内容を振り返ると、逆に「素質」と「環境」で決まるのかなという思いにもさせられなくもなく、キャリア・デザイン支援や人材育成支援も今後の著者の事業ドメインに入っているようなので、その辺りもやや気になりました。

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