2013年5月 Archives

「●働くということ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2270】 中澤 二朗 『働く。なぜ?

定年起業の勧めと心構え。読後感は悪くないが目新しさはないか。内容ズレしたタイトルが気になった。

65歳定年制の罠.jpg65歳定年制の罠 (ベスト新書)』['13年]

 全6章構成で、第1章で、「65歳定年時代」の隠された罠―つまり、65歳定年と言っても再雇用制度が中心で、給料は半分近くに激減し、不安定な身分と理不尽な配属が待っていて、場合によっては「追い出し部屋」に入れられるかもしれない、といった"怖い"話が続き、一方、第2章では、そうは言っても年金だけでやっていくのは難しく、定年延長後も働かなければならない現実があることを、年金制度についての解説を交えながら説明し、第3章では、そうした老後の破綻リスクに備えるために、今の内からマインドセットをして定年後に備えておくことが必要であるとするとともに、米国では50代で独立して会社をスタートさせる人が多く、日本にもアクティブなシニア経営者がいることを紹介しています。

 それを受けるような形で、後半部分の第4章では、「個人のキャリアをフルに活かす」「借金は最大のリスクであると知る」といった、定年起業を成功に導くための10か条について説き、第5章では、起業家たちの事例から失敗から立ち上がる者が成功することを示し、第6章では、定年を機に起業した先輩たちについてのより突っ込んだ取材に基づく事例を紹介するとともに、趣味を活かした起業の注意点をこれも具体的な取材例を掲げて述べ、最終第7章では、ボランティアやNPOという道もあることを示しています。
 
 タイトルから"怖い"ことばかりが書かれた本だと思われがちですが、後半部はシニア起業、定年起業に関する指南書的な内容で、取材事例には励まされるものが多く、読後感は意外と爽やかなものでした。

 著者自身は、日本興業銀行か勤務時代にMBAを取得し、その後、J・P・モルガン、メリルリンチ、リーマン・ブラザーズの投資銀行各社のマネージング・ディレクターを経て経営コンサルタン会社を立ち上げた人で、そうなると、一般の人はちょっと引いてしまいそうな印象もありますが、著者の同新書の前著が『自分の年金をつくる』であることからも窺えるように、金融アドバイザリーからシニア・ライフ・コンサルティングへ主業が移りつつある模様。本書も、通して読めば、「定年起業」に関する本だったのだなあと(本題ではなく、その前提状況がタイトルになっていたのだという感じで、タイトルの方が内容からズレ気味?)。

 第3章の終わりに、50代以降に独立して会社をスタートさせた米国人の事例として、レイモンド・クロック、スコット・マクネリー、バートン・ビックスの3人が出てきますが、スコット・マクネリーは56歳で起業したといっても、それ以前に27歳でサン・マイクロシステムズを創業した実績があり、バートン・ビックスは70歳でモルガンを辞めて新たなヘッジファンドを立ち上げたと言っても、それまでにストラテジストとしての確固たる名声と巨万の富を築いていて、殆どゼロから起業と言えるのは、レイモンド・クロックだけではないかなあ。

 レイモンド・クロックは、1954年、ミルクシェイク用のミキサーを売り歩いていた当時52歳のある日、カリフォルニア州のあるレストランから8台ものミキサーの注文を一度に受け、素朴な疑問からその店を訪ね、その効率的なサービスの提供システムに感嘆、ここほど将来性のある店はないと考え、その店の経営者だったマクドナルド兄弟に自分と組んでチェーン展開することを提案したことが、巨大外食チェーン「マクドナルド」の始まりだった―但し、これは、知ってる人は知ってるという、かなり有名な話です。

 まあ、定年起業を勧める本というか、心構え的なガイドブックとしてはオーソドックスですが、どちらかというと実務書と言うより啓蒙書。年金に関する解説も、ざっくりではありますが、それに絞った前著もあるだけに、間違ったことは言っていません。

 但し、読後感は悪くないのですが、トータルでみてさほどの目新しさは感じられず、前に述べたように、内容ズレしているとも言えるタイトルばかりが気になりました(おそらく版元の編集者が考えたものだと思うが)。

レイ・クロック - .JPG資料:
俵山 祥子 氏

「●人事マネジメント全般」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1888】 今野 浩一郎 『正社員消滅時代の人事改革』 

管理職研修のテキストを読んでいるような印象だが、テキストとしてはよく纏まっている。

変革するマネジメント 日沖.jpg

 
 
  
                     日沖 健.jpg 日沖 健 氏
変革するマネジメント - 戦略的人的資源管理』 (2012/10 千倉書房)

 本書は、企業内における人材マネジメントの主役はマネジャーであるとの考えのもとに、企業内の組織や職場のマネジャー、およびその役割・ポジションを目指す中堅・若手社員を対象に、人材マネジメントの基本理論と実践技法を解説したものです。

 人材マネジメントを学ぶ教材については、学者が人事部門担当者向けに書いた理論書・専門書や、コンサルタントや人事部門OBなど実務家が体験談と経験則を紹介したものが主で、理論と実務をバランス良く融合したテキストが少ないというのが、本書執筆の動機であるとのことです。

 著者自身の経歴は、企業内で実務を経験した後にコンサルタントに転じ、産業能率大学などで講師も務めてきたと人であるとのことですが、戦略的人的資源管理(SHRM)について、組織論から人事制度の設計と運用、マネジャーの職場集団や部下への働きかけの技法まで、ひととおり広く網羅され、分かりやすく解説されているように思いました。

 「組織管理の5原則」から始まって、官僚制組織や機能別組織などの組織構造の類型など組織の構造とそのプロセス、組織文化の形成と変革などについて解説し、人材ポートフォリオを念頭に置いた人材育成やキャリア支援、定年再雇用制度と高齢者雇用、早期退職制度とリテンション施策、人事評価と目標管理などの基本ポイント、賃金制度とその動向などについて述べ、さらに、リーダーシップ理論やコミュニケーション理論、モチベーション理論などの主だったものを紹介しています。

 文中に多くの経営書から引いて、先人たちが提唱した様々な理論が紹介されています。そうすると何だか「理論」解説ばかりのようにも思えますが、各章の冒頭に企業組織内あるいはマネジャー個人について発生した課題をケーススタディ的に取り上げており(この辺りは企業出身者ならでは?)、以降に述べる理論が実務と深く結びついていることを示唆しています。

 個人名で刊行されたハードカバー本で、タイトルからして何か奇抜な提案でもあるのかと思いましたが、思いのほかに堅いというか、オーソドックス且つリジッドな内容であり、管理職研修のテキストを読んでいるような印象も受けました。

 ただし、テキストとしてはよく纏まっているのではないでしょうか。クルト・レヴィンの「良い理論ほど実践的なものはない」という言葉が紹介されていますが、まさにその言葉に沿って書かれている本である思います。

 全体としてはやはり理論中心という印象は否めませんが、場当たり的に自己啓発書や実務書などを読むよりは、先に理論や体系を押さえてしまった方が、何かと効率がいいように個人的にも思います。リーダーシップ理論などはその典型ではないかと。

 トップマネジャーにより求められるのはコンセプチュアルスキルである、という概念図が本書にも出てきますが、結局コンセプチュアルスキルとは、単に概念を概念として理解する能力を指すのではなく、事象を抽象化して理論に結び付け、また、理論を敷衍化して事象に結びつける、そうした理論と事象の間を行き来できる能力のことなのだろうなあと、こうした本を読んで改めて思った次第。

 人事部の人にとっては、管理職研修などにおける押さえるべきポイントをオーソドックスに網羅した本であるとともに、自身の「おさらい」本でもあるということになるのではないでしょうか。

【2017年第2版】

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マッキンゼーが求めるのは「将来リーダーとなる人」。リーダーシップに関する若年層向け啓発書か。

1採用基準―.png採用基準 伊賀泰代.jpg   伊賀 泰代.jpg 伊賀 泰代 氏(マッキンゼー)    
採用基準』(2012/11 ダイヤモンド社)

 コンサルティング会社のマッキンゼーで採用マネジャーを12年務めたという著者による本ですが、就職超難関企業と言われるマッキンゼーの「採用基準」は、世間一般には、地頭のよさや論理的思考力が問われると思われているようだがそれは大きな誤解であるして、冒頭からそのような定説をきっぱりと否定しています。

 マッキンゼーが求めているのは分析が得意な人でもなければ優等生でもなく、「将来のリーダーとなる人」であるとのことです。なぜならば、問題解決に不可欠なのはリーダーシップであり、また、リーダーシップは全員に必要であると考えているからとのことです(でも、別のところでは、1リーダーシップ、に加えて、2地頭、3英語力、の3つが求められているとも書いてはいるが)。

 最終的に正式のリーダー職に就くのは一人だとしても、組織の構成員全員が多彩なリーダー体験を持っていることが重要であり、人はリーダー体験を積むことによって、「高い成果を出せるチームのメンバー」になれるというのが、マッキンゼーにおける採用に際しての考え方であり、マッキンゼーに限らず外資系企業の多くが、すべての社員に高いリーダーシップを求めているとのことです。

 転じて日本の企業に目をやれば、リーダーシップについて問われる機会はごく限定的で、三十歳前後になってもそれまでリーダーシップについて問われた経験が無いといった社員がいたり(確かに、人事考課における要素などにおいて、若年層にはリーダーシップを問わない企業も多いかも)、あるいは、管理職研修にリーダーシップに関する研修が織り込まれていなかったりもするとのこと(この点は、最近はそうでもないのではとも思うけれど)。

 外資系企業におけるリーダーには、その組織が成果を生み出すことを求められるが、日本の場合は組織の「和」が優先されると―。以下、日本企業と外資系企業におけるリーダーシップの捉え方の違いを、時に文化論的なレベルまで敷衍させて、対比的に、分かり易く説明しています。

 例えば、事故で電車が止まって駅のタクシー乗り場に長い行列ができている状況において、海外ではこういう場合、必ず誰かが相乗りを誘い始めるとのことで、これがリーダーシップの発揮なのであると。日本人の場合は、黙々と列に並び、一人ずつタクシーに乗っていき、そういう役割を自ら担おうという気が全く無い―これがこの国の人の特徴なのだと指摘しています。

 文化論に落とし込まれると確かに分かり易い。それをそのまま企業内における組織行動論にもってきているため、全体を通してややパターン化された外資系企業と日本企業の対比のさせ方になっている印象も受けましたが、マッキンゼーに入社するためのノウハウ本になっていない点は好感が持てました。
 但し、採用担当者が期待するような、採用時に応募者のリーダーシップを探るための方法論についてはそれほど突っ込んで書かれているわけではなく、本書自体、「採用基準」の本と言うより、4:6ぐらいの比率でむしろ「リーダーシップ」について書かれた本であると言ってもいいかもしれません。

マッキンゼー流最強チームのつくり方.jpg マッキンゼーでは、「全員がリーダーシップを発揮して問題解決を進める」前提で仕事が進み、「全員がリーダーシップをもっているチームでは、議論の段階では全メンバーが『自分がリーダーの立場であったら』という前提で、『私ならばこういう決断をする』というスタンスで意見を述べ」るとのことであり、だからこそ、高いパフォーマンスをもった組織が生まれるのだと言っています(結果としてリーダーとフォロアーの違いは殆ど無くなる。この辺りは著者のDIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文にも書かれているようだ[2013年4月Kindle版で刊行] )。「職場でしばしば目にする、リーダーに対する建設的でない批判の大半は、『成果にコミットしていない人たち』によって」なされるとも著者は述べています。
マッキンゼー流最強チームのつくり方 (DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文(2012年9月))」(201304 Kindle版)

 リーダーとは具体的にどのようなアクションをとる人なのかについて、著者は「目標を掲げる」「先頭を走る」「決める」「伝える」という4点を挙げ、リーダーシップは生まれつきの資質ではなく、学んで向上させることができるものだとしています。今の日本に求められるのはリーダーシップを持つ人間であるというのが本書の根源的なメッセージであり、今の日本の問題は「カリスマリーダーの不在ではなく、リーダーシップを発揮できる人数の少なさにある」というのは当たっているかも。

 その上で、マッキンゼー流のリーダーシップの学び方(学ばせ方)についても述べていますが、それによれば、マッキンゼーにおけるリーダーの「基本動作」のもとになる考え方は、①バリューを出す、②ポジションをとる(自分の意見を明確にする)、③自分の仕事のリーダーは自分であると認識する、④ホワイトボードの前に立つ(議論のリーダーシップをとる)―といったことのようです。

 中盤あたりから最終章の「リーダーシップで人生のコントロールを握る」まで "啓蒙書"的なトーンが続くのは、「キャリア形成コンサルタント」という著者の今の仕事とも関係しているのでしょう。読者ターゲットを、キャリアの入り口にある若年層に絞っている本とみてもいいかもしれません。

 全体を通して書かれている内容自体は特に奇抜なことを述べているわけではなく、すんなり腑に落ちるもので、マッキンゼー礼賛ぶりがやや気にはなりましたが、その点も、外資系企業出身者が書いた同じような本に比べると、まだバランス感覚は感じられる方だと思います。むしろ、コンサルティングファームという業態はそれなりに意識して読んだ方がいいかもしれないし、また、読んでいて意識せざるを得ないかと思われます。

『採用基準―地頭より論理的思考力より大切なもの』2.jpg 巷にある採用本によくありがちな、あれも必要、これも必要とチェック項目ばかり矢鱈に多く並べて、結局は使いきれないし、何も印象に残らないといったパターンと比べると、求められるのはリーダーシップであるとはっきり言い切っている分、明快です(この点において評価★★★★☆)。日本の企業も、採用選考において、応募者のリーダーとしての資質にもっと着眼するようにした方がいいのかもと思わせるものがありました。実際、それを見極めるとなるとなかなか難しいことかと思われますが、そこまで具体的には踏み込んでおらず、人事パーソンの目線で見るとやや物足りなさも残ります(この点においては評価★★★☆)。

 但し、リーダーシップというものが外資系企業では若年層のうちから求められるということはよく分かりました(まあ、外資の場合、最初から中枢部にいる人間と、生涯、末端の現場から離れることのないであろう人間とが明確に分かれている傾向があり、ここで指しているのは、まさに中枢部の要員として採用された人間ということになるかとは思うが)。

 一方、マッキンゼーに就職するためのノウハウ本だと勘違いして購入して、アテが外れたという人もいたかもしれませんが、それは、そう思って買った人本人の問題。そうした(実利的な(?))ことは抜きにして、キャリアの入り口にある若年層の人に向けた、リーダーシップに関する啓発書としては悪くないように思いました(啓発書としては評価★★★★)。個人的には、総合評価星4つ(★★★★)です。

【2794】 ○ 日本経済新聞社 (編) 『プロがすすめるベストセラー経営書』 (2018/06 日経文庫)

《読書MEMO》
HRアワード2013.jpg「日本の人事部」主催の「HRアワード2013」の書籍部門で最優秀賞を受賞

受賞についてコメントする著者の伊賀泰代氏(from「日本の人事部・HRアワード2013」)
 
 
  

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リーダーシップについて極めて謙虚に述べているが、体験に基づいているだけに説得力がある。

リーダーを目指す人の心得 2.gifリーダーを目指す人の心得』 リーダーを目指す人の心得 コリン・パウエル 英.jpg "It Worked for Me: In Life and Leadership"

 ジャマイカ移民の子で、ニューヨークのサウス・ブロンクスのストリートキッド、ペプシの工場の清掃夫から、陸軍入りしてから昇進に昇進を重ねて上りつめ、4つの政権でアメリカ軍制服組トップである統合参謀本部議長(1989-1993)などの要職を歴任し、最後はジョージ・W・ブッシュ政権で国務長官(2001-2005)を務めたコリン・パウエル(Colin Luther Powell、1937-)が、多くの逸話や自らの体験をもとにリーダーシップについて語った本です。

 纏めたのは、専ら軍人の回顧録を書いているライターのトニー・コルツ、訳者は『スティーブ・ジョブズ―偶像復活』('05年/東洋経済新報社)、『スティーブ・ジョブズ(上・下)』('11年/講談社)等、ジョブズの伝記なども訳している井口耕二氏。

 第1章に、私の「13ヵ条ルール」というのが紹介されていて、事例に沿った分かりやすいリーダー訓にまず引き込まれます。第2章では、自分を本当に知ることの重要性と、いつも自分らしくある方法を、第3章では、自分の部下を中心に、ほかの人を知ることに焦点をあて、第4章では、近年のデジタル世界における自らの経験を語り、第5章では、偉大な管理者、偉大なリーダーになる方法を説いています。

ドラッカー先生のリーダーシップ論 帯.jpg ピーター・ドラッカーは、「最も多くのリーダーが訓練を受け、育成されているのは軍隊である」と弟子たちに述べていたそうですが(ウィリアム・A・コーン『ドラッカー先生のリーダーシップ論』('10年/武田ランダムハウスジャパン))、米国史上最年少で(しかも黒人で)アメリカの四軍(陸、海、空、海兵隊)のトップである統合参謀本部議長となった彼は、まさにその最たるものと言えるでしょう。

 『リーダーを目指す人の心得』って、どこにでもありそうな凡庸なタイトルになってしまっているけれど、原題の"It Worked for Me"は「私はこれでうまくいった」ということであり、「For Me(私にとっては)」とついているところが実に謙虚です(あまりに謙虚なので、ストレートなタイトルに置き換えた?)。

 「For Me(私にとっては)」と言っているのは、リーダーシップに正解というものはなく、「誰もがこれでうまくいく」とはいうわけではないということを示唆しているわけですが、そうでありながらも、書かれていることの普遍性と説得力には、巷に出回っている「これを読めばあなたも有能なリーダーになれる」的な薄っぺらな自己啓発本を凌駕して大いに余りあるものでした。

Colin Powell.gif『司令~1.JPG 冒頭の「13ヵ条ルール」の内の1つ「まず怒れ。その上で怒りを乗り越えろ」に関して、かつてボブ・ウッドワードが著した『司令官たち―湾岸戦争突入にいたる"決断"のプロセス』('91年/文藝春秋)の中で、「砂漠の嵐」作戦の指揮官だったノーマン・シュワルツコフ(1934-2012)が、部下が悪い話を持ってきただけでその部下に怒鳴り散らすタイプだったのに対し、彼の部下だったパウエルは、自分の部下のどんな話もじっくり聞くタイプだったとあったのを思い出しました。湾岸戦争後、二人の地位の上下は逆転しています。

 さらに湾岸戦争後、パウエルには、"初の黒人大統領"を待望する世論の声が強まりますが、これも「13ヵ条ルール」の1つ、「他人の道を選ぶことはできない。他人に自分の道を選ばせてはいけない」の項で、自らの"直感"に沿って大統領選への不出馬を決断したことが書かれています。

 国務長官を辞した際も、金融関係など多くの企業から超高額処遇での役員オファーがあったものの、同じような考え方からそれらを断り、結果としてその時に彼に役員オファーした金融企業はリーマンショックで破綻したり苦境に立たされており、断ったのは正しかったと。

 『司令官たち』では、ジョージ・H・W・ブッシュ(パパ・ブッシュ)が、慎重派のパウエルよりも、好戦的なスコウクロフトの主戦論になびいて湾岸戦争に突入していく様が描かれていましたが、イラク戦争でもパウエルは、息子ジョージ・W・ブッシュの強硬姿勢にブレーキをかける立場に回っています。

 しかし、米国は戦争に突入し、パウエルは国連で「イラクに大量破壊兵器あり」との確証に基づかない演説をさせられることになりますが、本書ではそのことを自らの経歴上の"汚点"として素直に認め、どうしてそうしたことになったのかを冷静に分析しています。

Colin Powell's endorsement:less a vote for Obama than a vote against Romney.jpg パウエルは政治的には元々共和党穏健派であり、本書からは共和党のレーガン大統領への尊敬の念が窺えますが、前々回(2008年)の大統領選から民主党のオバマ支持に回っているのは、こうしたこともあって共和党のリーダーへの愛想が尽きたのか...?

 最終章は楽しいエッセイ風の回想録(あるレセプションで、ダイアナ妃を巡って主賓のヘンリー・キッシンジャーをさし置いて王妃と近しく接したことを嬉々として語っている)、及び、子どもたちの未来に希望を託すものとなっており、全体を通しても、リーダーシップの啓蒙書としてばかりでなく、読みものとしても興味深く、楽しく読めるものとなっています。

【2017年文庫化[飛鳥新社]】

《読者MEMO》
●コリン・パウエルの「13ヵ条ルール」
1.何事も思うほどは悪くない。翌朝には状況は改善しているはずだ。
2.まず怒れ。その上で怒りを乗り越えろ。
3.自分の人格と意見を混同してはならない。さもないと、意見が却下されたとき自分も地に落ちてしまう。
4.やればできる。
5.選択には細心の注意を払え。思わぬ結果になることもあるので注意すべし。
6.優れた決断を問題で曇らせてはならない。
7.他人の道を選ぶことはできない。他人に自分の道を選ばせてもいけない。
8.小さいことをチェックすべし。
9.功績は分けあう。
10.冷静であれ。親切であれ。
11.ビジョンを持て。一歩先を要求しろ。
12.恐怖にかられるな。悲観論に耳を傾けるな。
13.楽観的でありつづければ力が倍増する。

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「●上司学・リーダーシップ」の インデックッスへ ○経営思想家トップ50 ランクイン(ジム・コリンズ/モートン・ハンセン)

不確実性の時代に高成長を遂げた企業及びリーダーの特質を、実証的に検証。
1ビジョナリー・カンパニー4.png
ビジョナリー・カンパニー4.png
 ビジョナリー・カンパニー1.jpg ビジョナリー・カンパニー2.jpg ビジョナリー・カンパニー3.jpgビジョナリー・カンパニー 4 自分の意志で偉大になる』['12年]  『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』['95年] 『ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則』['01年]『ビジョナリーカンパニー3 衰退の5段階』['10年]
    
ジム・コリンズ(Jim Collins).jpg ビジョナリー・カンパニーシリーズの第4弾となる本書(原題:"Great by Choice: Uncertainty, Chaos, and Luck--Why Some Thrive Despite Them All"、2011)では、「経営規模が脆弱な状況でスタートし」、「不安定な環境下で目覚ましい成長を遂げ、偉大な企業となった」事例を調査対象として選抜しています。

ジム・コリンズ(Jim Collins)元スタンフォード大学経営大学院教授

モートン・ハンセンMorten_Hansen.jpg そして、それらの企業が業界の株価指数を少なくとも10倍以上も上回る株価パフォーマンスを示していることから、それらを「10X(10倍)型企業」と命名し、一方、同じ環境下で、かつては優位にありながら「偉大になれなかった企業」(衰退した企業)を「比較対象企業」として挙げ、両者を歴史分析することによって、「10X倍型企業」および「10X型リーダー」の特質とは何かを分析してします。

モートン・ハンセン(Morten Hansen)UCBerkeleyおよびINSEAD教授。ボストンコンサルティング出身。

 高成長企業とダメになってしまった企業の比較歴史分析という点では、『ビジョナリー・カンパニー―時代を超える生存の法則』('95年/日経BP社)、『ビジョナリー・カンパニー2-飛躍の法則』('01年/日経BP社)などと同じですが、高成長や卓越さといった視点に加えて、置かれた環境の厳しさを指標に加えて事例を選んでいるのが本書の特徴です(衰退した企業をも調査対象としている点では、『ビジョナリー・カンパニー3-衰退の5段階』('10年/日経BP社)とも同じ)。

 例えば航空業界であれば、サウスウェスト航空(10X倍型企業)とPSA(比較対象企業)を、コンピュータ業界ではマイクロソフト(10X倍型企業)とアップル(比較対象企業)を取り上げ、歴史データをもとにリーダーのとった経営戦略の推移から対比するなどし、そのほかにフトウェア、バイオ、半導体、保険、医療機器の各業界から「10X型企業」と「比較対象企業」をそれぞれ1社ずつ選んで対比させています(アップルは、調査対象期間の関係で「比較対象企業」とされているが、スティーブ・ジョブズの復帰後の彼の行動は、「10X型リーダー」のそれとして解説されている)。

 それらの企業研究から、10X型リーダーの特徴的行動パターンとして、「狂信的規律」「実証的創造力」「建設的パラノイア」の三つを抽出し、それぞれを「二十マイル行進」「銃撃に続いて大砲発射」「死線を避けるリーダーシップ」というキー・フレーズのもとに解説しています。

 「二十マイル行進(狂信的規律)」においてはリスクマネジメントと持続的改善活動の重要性を説き、「銃撃に続いて大砲発射(実証的創造力)」では、具体性のある創造力の重要性、「死線を避けるリーダーシップ(建設的パラノイア)」では、最大限の準備を怠らないことの大切さを説いています。

 そうした中で、例えば「大混乱する世界で成功するリーダーは大胆であり、進んでリスクを取るビジョナリー」であるといった"神話"に対し、現実には、未来を予測できるビジョナリーではなく、「何が有効なのか」「なぜ有効なのか」を確認し、実証的なデータに基づいて前に進んだのであって、比較対象企業のリーダーよりリスク志向でも大胆でもなく、またビジョナリーでも創造的でもない。より規律があり、より実証主義的であり、よりパラノイア(妄想的)なのである―といったように、従来の"神話"を幾つも覆している点も興味部深いです。

 また、「10X倍型企業」には、「具体的で整然とした一貫レシピ」<SMaC(Specific Methodical and Consistent)>があり、「10X型リーダー」は運だけで成功したのではなく、成功する原則を死守したから「偉大」になれたのであって、言い換えれば「自分の意思によって偉大に」なったのであるとしています。

 『ビジョナリー・カンパニー2』で「バスに乗せる人」と「降ろす人」を厳格に決めることが重要であると説いた「まず人選ありき」といった概念をはじめ、これまでのシリーズにあった「ハリネズミの概念」「基本的価値観」「BHAG(不可能なぐらい高い目標)」「カルト的文化」「ストックデールの逆説」「時を告げるのではなく、時計を作る」「衰退の五原則」「弾み車」と言った概念については、前作で十分説明されているとして、本書では意識的に触れていませんが、本書で述べられていることは、それらを具体的な行動レベルに落とし込んだものとも言えます。

 広い意味で「経営書」と言うより「啓蒙書」ですが、著者が師とするドラッカーの著作に倣って、データによる裏付けがきっちりしていて説得力のあるものとなっているうえに、世界で初めて南極点に到達したアムンゼンと、遅れて南極点に到達した後に隊員が全員死亡したスコットの詳細な比較分析例などを用いて、「10X倍型企業」と「比較対象企業」の違いにあてはめながら解説したりするどしているため、読みやすく、また、分かりやすいものとなっています。

 ベンチャー企業の経営者などに人気のあるシリーズですが、この不確実性の時代においては、どういった企業の経営者が読んでも啓発される要素がある本であると思われ、また、「経営者を支える」経営専門家(役員・経営幹部がそれに該当すると思われるが)にも読んでほしい本である―ということは、とりもなおさず、人事パーソンにも読んでほしい本、ということになります。

『ビジョナリー・カンパニー』
【2201】 ○ グローバルタスクフォース 『あらすじで読む 世界のビジネス名著』 (2004/07 総合法令)
【2202】 ○ ダイヤモンド社 『世界で最も重要なビジネス書 (世界標準の知識 ザ・ビジネス)』 (2005/03 ダイヤモンド社)
【2790】○ グローバルタスクフォース 『トップMBAの必読文献―ビジネススクールの使用テキスト500冊』 (2009/11 東洋経済新報社)
【2701】 ○ 日本経済新聞社 (編) 『マネジメントの名著を読む』 (2015/01 日経文庫)

《読書MEMO》
●崩れ去った神話(31‐33p)
○【神話】大混乱する世界で成功するリーダーは大胆であり、進んでリスクを取るビジョナリー。
【意外な現実】我々の調査対象になった10X型リーダーは、未来を予測できるビジョナリーではない。「何が有効なのか」「なぜ有効なのか」を確認し、実証的なデータに基づいて前に進む。比較対象リーダーよりリスク志向ではなく、大胆でもなく、ビジョナリーでもなく、創造的でもない。より規律があり、より実証主義的であり、よりパラノイア(妄想的)なのである。
○【神話】:刻々と変化し、不確実で混沌とした世界で10X型リーダーが際立つのはイノベーションのおかげ。
【意外な現実】驚いたことに、イノベーションは成功の鍵ではない。確かに10X型企業も多くのイノベーションを起こす。しかし、我々の調査では「10X型企業が比較対象企業よりもイノベーション志向である」という前提を裏付けるデータは出てこなかった。10X型企業が比較対象企業よりもイノベーションで劣るケースさえあった。我々の予想に反し、イノベーションだけでは切り札にならないのだ。より重要なのは、イノベーションをスケールアップさせる能力、すなわち創造力と規律を融合させる能力である。
○【神話】脅威が押し寄せる世界ではスピードが大事。「速攻、そうでなければ即死」ということ。
【意外な現実】環境が急変する世界では、素早い判断と素早い行動が求められるから、「どんなときでも即時・即決・即行動」という哲学を取り入れる、これは破滅を招く効果的な方法だ。10X型リーダーはいつアクセルを踏み、いつ踏んではならないかを理解している。
○【神話】外部環境が根本的に変化したら自分も根本的に変化すべき。
【意外な現実】外部環境が急変しても、10X型企業は比較対象企業ほど変化しない。劇的変化に見舞われて世界が揺れ動いたからと言って、自分自身が劇的変化を遂げる必要はない。
○【神話】10X型成功を達成した偉大な企業は多くの運に恵まれている
【意外な現実】全体として見ると、10X型企業が比較対象企業よりも強運であるとは限らない。幸運だろうが不運だろうが、10X型企業も比較対象企業も共に同じ程度に多くの運に遭遇している。成功の鍵を握っているのは、運に恵まれているかどうかではなく、遭遇した運とどのように向き合うかである。

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ホールシステム・アプローチの"思想"と"枠組み"を理解するうえでは良かった。

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       ホールシステム・アプローチ.jpg  ワールド・カフェをやろう.jpg
俊敏な組織をつくる10のステップ』['12年]『ホールシステム・アプローチ―1000人以上でもとことん話し合える方法』['09年]『ワールド・カフェをやろう!』['11年]

 本書は同じ著者らの前著『決めない会議―たったこれだけで、創造的な場になる10の法則』('09年/ビジネス社)、『ワールド・カフェをやろう!』('09年/日本経済新聞出版社)、『ホールシステム・アプローチ―1000人以上でもとことん話し合える方法』('11年/日本経済新聞出版社)などに続く、「ホールシステム・アプローチ」の入門書です。

 「ホールシステム・アプローチ」とはアメリカ生まれの会議の手法であり(ベースにはピーター・センゲの「学習する組織」の考え方がある)、検討すべき課題に関係するすべての関係者を集めて、共通の課題や目指したい未来などについて話し合う大規模な会話の手法の総称であるとのことですが、今回の本書では、ホールシステム・アプローチを単なる会議の手法として取り上げるのではなく、組織変革プロセスの視点から加筆されています。

The World Café.jpg ホールシステム・アプローチの代表的な手法には、ワールド・カフェやOST(オープンスペース・テクノロジ―)、AI(アプリシエイティブ・インクワイアリ)、フューチャー・サーチなどがあり、これらの会議の特徴は、無理に結論を出そうとしたり、結果を出すことに最初からこだわらないで、むしろ話し合いの質やプロセスに気を配り、参加者同士の関係の質を向上させることを大切にしているところであり、こうした「決めない会議(決めようとしなくても決まってしまう会議)が今注目されているとのことです。

The World Café(上・イメージイラスト/下・解説図)

ワールドカフェ01.gif 本書によれば、ホールシステム・アプローチによる組織改革においては、組織の階層や部門の違いを超えた密接な社内コミュニケーションを維持し、多様なものの見方や意見を尊重し、自由活発な意見交換がなされ、また、組織が何を実現したいのか。そのために何が必要なのかを全員が共有することを目的とするとのことで、それが、本書のタイトルにある「アジャイル(俊敏)な組織をつくる」ということになります。
 
 本書では、そのためのホールシステム・アプローチによる組織改革プロセス、並びに、ワールド・カフェやOSTといった手法がそのプロセスのどの手法をカバーするかを示すとともに、ホールシステム・アプローチによる変革プロセスを組み立てる際のポイントとなる10の視点を挙げていて、それらについての解説が、実質的な本書の"本編"となっています。

 また、後半は、ホールシステム・アプローチのワークショップを組み入れて組織や地域の変革をプロセスとして展開している企業、自治体、業界、海外の事例が詳しく紹介されており、ワークショップの在り様がイメージしやすくなっています。

 前著から続編的な側面があり、AIやOSTといった用語がいきなり出てきますが、それらについては巻末で解説されているため、この分野が初めての読者は、先にそちらに目を通した方がいいかもしれません。

 ホールシステム・アプローチの"思想"と"枠組み"を理解するうえでは良かたと思います。人事パーソン的な視点からすれば、ファシリテーターとして社内ワークショップを成功させるためのテクニカルなポイントについてもう少しあれば、例えば社内ワークショップの運営を想定した際のイメージが掴みやすかったのではないかという気もしますが、そうなると、一冊の入門書にあまりに多くのことを求め過ぎることになるのかも。

 本書とは別の切り口からホールシステム・アプローチの"思想"を解説するとともに、リーダーシップ研修にホールシステム・アプローチを採り入れた事例なども紹介されている、高間邦男 著『組織を変える「仕掛け」―正解なき時代のリーダーシップとは』(2008年/光文社新書)などを併せて読んでみるのもいいのではないかと思います。

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自分が会社からやらされていることが、実はパワハラであるとの認識が無い人こそが読むべき本。

解雇最前線.png 東京管理職ユニオン 鈴木剛.jpg          2014年早稲田.JPG
解雇最前線 PIP襲来』(2012/11 旬報社)東京管理職ユニオン 鈴木剛・書記長

 東京管理職ユニオンの書記長による本で、企業が従業員を退職に追い込むために用いるようになった、解雇・リストラの新手法 PIP(業績改善計画=パフォーマンス・インプルーブメント・プラン)について書かれています。
Performance Improvement Plan.jpg PIPは、従来の整理解雇、退職勧奨を伴う普通解雇とは異なり、業務命令として、または「あなたのためだから」と思いやりのあるふりをして、達成不可能なノルマや無意味な課題を与え、自主的な退職に追い込んでいくやり方で、従来型の退職勧奨はせず、「業績改善計画」の未達成を理由に、本人に退職届を書かせる方向へ持っていく、或いは、精神的・肉体的に追い詰め、休職→退職へと持っていくやり方です。

 以前からこうしたことは一部企業で行われていたのではないかと思いますが、アメリカ企業にも「PIP」という同様のプログラムを用いている例が少なからずあり、最近とみに目立つようになった日本国内でのこうしたケースに「PIP」という言葉を当て嵌め、「業績改善計画」と "直訳"したような印象でしょうか。

 実際、外資系企業などでは、"米国生まれ"の「PIP」のプログラムを入れているところもあるかと思いますが、今日本企業で行われているこうしたやり方のすべてが「PIP」に準拠しているとは思われず、サブタイトルの"襲来"という言葉にはやや違和感を覚えました。

 但し、こうした手法の中身自体は日米でそう変わるものではなく、本書ではそのパターンとして、「過大な課題を課す手口」「過小な課題を課す手口」「キャリアコンサルタント会社を使う手口」があることを紹介しています。このやり方はパワハラの一種であると言え、これによってうつ病などの精神疾患に陥る労働者が増えており、更に、復職しようとしても会社側からの拒否に遭うケースも多いとのことです。

 最後に、PIPは今の日本の縮図であり、雇用問題と私生活上の問題が「複雑骨折」状態で絡み合っていて、この問題を解決するには、法律家・医師との連携や労働組合の活用を通して、社会包括的な対応が求められるとしています。

 PIPのような労働現場で行われていることを、労働問題として認識している人は少なからずいると思いますが、問題の一つは、労働者側の当事者として、「業績改善計画」の名のもとに、自分が会社からやらされていることが、実はパワハラであり、法違反の可能性が高いものである(少なくとも適法と言えるものではない)ということ自体が今一つ分かっていない人がいることだろうなあ(そうした人に限って、目標が達成できないのは自分の頑張りが足りないからだと本気で悩んだりする)。

 そうした人こそが最も読むべき本ではないかと思いますが、その割には、分かり易くしたつもりのタイトルが、意外と分かりにくいものであるかも。

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ブラック企業の実態と併せ、その社会的損害を指摘。なくすための政策提示もされている。

ブラック企業―日本を食いつぶす妖怪.jpg        POSSEの今野晴貴.jpg POSSE代表・今野 晴貴 氏
ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』['12年] 

個別労働相談件数.jpg 違法な労働条件で若者を働かせては「使い捨て」にする、いわゆる「ブラック企業」の実態を、一橋大学に学部生として在学中からNPO法人POSSE代表として若者の労働相談に関わってきた、労働政策、労働社会学専攻の大学院生が著した本です。

 著者は、「ブラック企業」という問題を考える際には、若者が個人として被害に遭う側面と、社会問題としての側面があるとし、本書では、個人から社会へと視野を広げることで、告発ジャーナリズムとは一線を画しているようです。

 とはいえ、前半のブラック企業の実態について書かれた部分にある、大量採用した正社員をきわめて劣悪な条件で働かせ、うつ病から離職へ追いこみ、平然と使い捨てにする企業のやり方には、改めてヒドイなあと思わされました(行政窓口への個別労働紛争相談件数で「パワハラ」が「解雇」を上回ったのも、2012年1月に厚生労働省が「パワハラ」の具体例を挙げて、「過大な要求」や「過小な要求」もそれに該当するとしたことに加えて、実際に世間ではこうしたやり口がかなり広く行われていることを示唆しているのではないか)。

ブラック企業1.jpg 過労死・過労自殺が発生したため裁判となったケースなどは、企業の実名を揚げて紹介しており(「ウェザーニューズ」、「ワタミ」、「大庄」(庄や・日本海庄や・やるき茶屋などを経営)、「shop99」)が実名で挙げられている)、中には初任給に80時間分の残業代が含まれていて(正社員として入社した若者たちは、そのことを入社後に知らされたわけだが)、それを除いた基本給部分を時給換算するとぴったり最低賃金になるといった例もあり、こういうのは「名ばかり正社員」といってもいいのではないかと。

 こうしたブラック企業から身を守るためにはどうしたらよいかを若者に向けて説いたうえで、本書の後半部分では、「社会問題」としてのブラック企業問題を考えるとともに、どのように問題を解決するべきかという提案もしています。

 そこでは、ブラック企業の第一の問題は、若くて有益な人材を使い潰していることであり、第二の社会問題は、新卒の「使い捨て」の過程が社会への費用転嫁として行われていることにあるとしており、ナルホド、労働社会学者を目指す人らしい視点だと思いました。

 うつ病に罹患した際の医療費のコスト、若年過労死のコスト、転職のコスト、労使の信頼関係を破壊したことのコスト、少子化のコスト、サービス劣化のコスト――こうしたものを外部に転嫁することのうえにブラック企業の成長が成り立っていると考えると、著者の「国滅びてブラック企業あり」という言葉もジョークでは済まなくなってくるように思いました。

 著者は、こうしたブラック企業は、終身雇用と年功賃金と引き換えに、企業が強い命令権を有するという「日本型雇用」の特徴を悪用し、命令の強さはそのままで、雇用保障などの「メンバーシップ」はない状態で、正社員を使い捨てては大量採用することを繰り返しているのだと。そして、労働市場の現況から見るに、すべての日本企業は「ブラック企業」になり得るとしています。

 実際、日本型雇用が必ずしも完全に成立していない中小企業に限らず、今日では大手新興企業が日本型雇用を放棄している状況であり、これまで日本型雇用を守ってきた従来型大手企業もそれに引きずられていると。

 こうした事態に対する対策として、著者は、国が進めている「キャリア教育」はブラック企業に入ってしまった人に諦めを生むことに繋がっており、むしろ、ブラック企業から身を守るための「ワークルール」(労働法規や労使の権利義務)を教えるべきであるとしています。

 また「トライアル雇用の拡充」も、ブラック企業によくみられる試用期間中の解雇をより促す危険性もあり、本当に必要な政策は、労働時間規制や使用者側の業務命令の規制を確立していくことであるとしています。

 こうした施策を通して、「普通の人が生きていけるモデル」を構築すべきであり、それは賃金を上げるということには限られず、むしろ賃金だけに依存すべきではないと。教育・医療・住居に関する適切な現物給付の福祉施策があれば、低賃金でもナショナルミニマムは確保可能であり、つまり目指すは、「低福祉+低賃金+高命令」というアンバランス状態から脱し、「高福祉+中賃金+低命令」であると。

 こうしたことの実現のために、若者たち自身にも「戦略的思考」を身につけ、たとえブラック企業の被害にあっても自分個人の問題で終わらせず、会社と争う必要があれば仲間をみつけ、ともに闘うことで、社会の問題へと波及させていくべきであるとしています。

 最後のまとめとして、ブラック企業をなくす社会的戦略として、労働組合やNPOの活用と労働法教育の確立・普及を挙げています。

 学生、社会のそれぞれに向けてバランスよく書かれているうえに、企業側の人にも読んでいただき、襟を正すところは正していただくとともに、「ブラック企業」問題が他人事ではないことの認識を持っていただく一助としてほしい本。

 最近、企業の新卒採用面接に立ち会って、シューカツ(就職活動)中の学生で、ほぼ全滅の中、かろうじて内定を得ている企業の名が同じだったりするのが気になりますが(概ね、いわゆる「ブラック企業」っぽい)、彼らも、自らの内定状況に満足していないからこそ、こうして、内定後も採用面接に足を運んでいるのでしょう。

 2013(平成25)年度・第13回「大佛次郎論壇賞」受賞作。

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真摯でバランスのとれたレポート及び考察だが、目新しさはない。

感情労働シンドローム.jpg     管理される心.jpg 感情労働k.jpg
感情労働シンドローム (PHP新書)』['12年]『管理される心―感情が商品になるとき』['00年]

感情労働 t.jpg これまで労働は大きく、肉体労働と頭脳労働に分けられてきましたが、本書でいう「感情労働」とは、仕事をするなかで心の負担にポイントを置いた労働のことであり、この概念は1970年代にアメリカで生まれ、社会学者による客室乗務員の調査研究で知られるようになったとのことです(A.R. ホックシールド (『管理される心―感情が商品になるとき 』('00年/世界思想社))。本書は、その感情労働に注目したレポートです。「感情労働」という言葉は最近週刊誌などでも見られるようになっています(「週刊 東洋経済」2012年 12/1号「感情労働の時代」など)。

 かつては、嫌悪や怒りなどマイナスの感情をコントロールし、笑顔のサービス提供を強いられる労働の典型モデルが客室乗務員や看護・介護職などであったのが、近年は、営業職や教師、さらには普通の若手社員、中高年社員らにも感情コントロールの負荷がのしかかっていると本書は報告しています。

 例えば営業職は、自らは必ずしも推奨したくない商品を売り込む矛盾や訪問先で拒絶される苦しさにあえぎ、それでも、ポジティブで爽やかな振る舞いをしなければならず、あるいは、「これは相手のメリットになる」と本心とは違っても念じなければいけない―その結果、そうした営業の仕事の先に何があるのかとの疑問を持つ若者が多くなっているとのことです。

 さらに顧客を相手にしない職場内においても、若者は若者で、今いる職場や仕事と自らのキャリア観との間のギャップや、現実の上司と理想像との間のギャップを感じてやる気を失い、また、そうした部下を持つ上司は、部下に尊敬されることなく、むしろ360度評価などによって"下からの逆攻撃"を受けてしまう―こうした相互の軋轢から、それぞれに違和感・不安感・緊張感が高まっていて、職場における感情問題は臨界寸前の状態にあると。

 本書では、こうした職場と感情労働の問題を、「新型うつ」「パワハラと逆パワハラ」「成果主義」の三本の柱を軸に考察するとともに、若者における感情労働の問題、ミドルエイジにおける感情労働の問題のそれぞれについても分析を行っています。

 各層へのインタビュー取材がベースになっており、真摯でバランスのとれたレポート及び考察になっていて、ある人にはショッキングなレポートに思えるかもしれませんが、現に職場内にいる人間にとっては、特に目新しいことが書かれているわけでもないようにも思いました。

 こうした状況をただ「仕方がない」と受けとめてしまうのではなく、分析的に捉える視点は必要であるし、経済産業省の打ち出した「社会人基礎力」の内容に疑問を呈している点などにも共感しましたが、著者自身の目から見た、こうした問題に対する処方箋が示されていない点が物足りませんでした(著者自身、解決策を示すのが本書の目的ではないと、あとがきで断ってはいるが)。

ホワイト・カラー―中流階級の生活探究_.jpg アメリカの社会学者ライト・ミルズは、『ホワイトカラー―中流階級の生活探究』(原著刊行1951年、1957年/創元社、1971年/東京創元社)の中で、ホワイトカラーの疲弊度が増す原因を、「賃金労働者とホワイトカラーの際立った違いの一つは、賃金労働者は彼の労働とエネルギーとスキルを売るが、ホワイトカラーは、多数の消費者、顧客、管理者に対して、自己の労働を売るだけでなく自己のパーソナリティを売る」ためであると書いています。

 ホワイトカラーの感情労働による自己疎外は、1950年代初頭に書かれたこのミルズの一文が、すでに核心を突いているのではないかと思います。

ホワイト・カラー―中流階級の生活探究 (現代社会科学叢書)』['71年/東京創元社]

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なるほどと思わされる点も多かった一方、どちらの見方もできるのではないか、という箇所も。

雇用の常識 決着版.jpg                     雇用の常識「本当に見えるウソ」.jpg
雇用の常識 決着版: 「本当に見えるウソ」 (ちくま文庫)』['12年] 『雇用の常識「本当に見えるウソ」』['09年]

 2009年に刊行された『雇用の常識「本当に見えるウソ」』(プレジデント社)の文庫化で、こうした労働問題・労働経済に関する本が文庫化されるということは、それだけ世間での反響が大きかったということではないでしょうか。

 文庫化にあたっては、データを直近のものに刷新するとともに、著者自身のその後の著書『「若者はかわいそう」論のウソ』(2010年/扶桑社新書)、『就職、絶望期』(2011年/扶桑社新書)などを反映させるかたちで、「就職氷河期は、企業に転嫁された」「女性の社会進出は、着実に進んでいる?」「定年延長が若者雇用を圧迫する、か?」など6章が加筆されており、新著に近い内容ともいえます。

 前著もそうでしたが、冒頭から、「終身雇用の崩壊」「転職の一般化」「若者の就職意識の変化」「成果主義の浸透」などといった一般に流布されている言説に対し、現実を反映したデータを駆使して、その「ウソ」を暴いてみせる様は、読んでみて「目からウロコ」の思いをする人も多いのではないでしょうか。前著から割愛されている章もありますが、それらは加筆された章にほぼ取り込まれており、著者の見方には一貫性があるように思いました。

 その見方の根柢にあるものとして、世間で識者と言われる人が語る主義主張には、例えば「小泉改革はよくなかった」とか「若者がかわいそう」といった自分の言いたいことが最初にあり、データの検証がないままそうしたことが喧宣され、「常識」としてまかり通ってしまっていることに対する憤りが感じられました(単に憤るだけでなく、その背景として、雇用問題が過剰に政治イデオロギーがしていて、純粋に労働経済の問題として扱うべきところが、論者のバイアスがかかってしまっている、と冷静に分析している)。

1雇用の常識 決着版.png 個人的にも、世間で言われていることと日々実際に感じていることのギャップ感に符合し、なるほどと思わされる箇所は多かったのですが、「常識」に対して「反証」することが目的化して、データの捉え方が著者自身やや我田引水ではないか、実際にはどちらの見方もできるのではないか、という箇所もありました。

 そのことは。著者自身が書いていることの中にも見られ、例えば終身雇用と転職率の問題についても、非正規雇用の増加の問題についても、どこに焦点を当てるか、どの対象を分母とするかによって数的結果が異なってくるわけで、ある部分、こうした見方もあるというスタンスで読んだ方がいいような箇所もあるように思われました(でも、それだとインパクトが弱くなるから、「反証」というかたちを敢えて取っているんだろうなあ)。

 著者自身が「常識」として世間に流布されているとしているものにも、若干の疑問があり、例えば、国民年金の未納率の「分母」に、厚生年金や共済年金など被用者年金の加入者、或いは専業主婦など第3号被保険者を含めて想定している人ってどれぐらいいるかな。それを含めた数字を基にして「国民年金未納者が四割」というのは「ウソ」だと言われても...。

 いろいろなことを気づかせてくれる本。但し、このように突っ込み所は少なからずある本ではなかったかと思われました。

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労働法から遠い世界にある雇用終了の実情? 判例規範とは別ルールが存する「あっせん」の場の実態を示す。

濱口桂一郎 日本の雇用終了.jpg  121201 講演と渾身の夕べ1 (2).JPG 濱口桂一郎氏 (社会保険労務士稲門会・第12回「講演と渾身の夕べ」 1212年12月1日/ホテル銀座ラフィナート)
日本の雇用終了―労働局あっせん事例から (JILPT第2期プロジェクト研究シリーズ)』[労働政策研究・研修機構]

 労働政策研究・研修機構の編集による本ですが、実質的には同機構統括研員の濱口桂一郎氏の執筆によるものです。労働局の個別労働紛争のあっせん事例の紹介が本書の大半を占めますが、今まであまり触れられることのなかった実証的な記録であるとともに、日本の雇用社会の実態が浮き彫りにされていて興味深く読みました。

 紹介されているあっせん事案の調査対象年度は2008年度で、この年の総合労働相談件数は約107万件、内、あっせんに至ったものは8,475件(1%未満)。その中から1,144件のあっせん事案を抽出して紹介・分析していますが、その多くは、解雇、雇止め、退職勧奨、自己都合退職などの雇用終了事案であり、そのため「日本の雇用終了」というタイトルになっているわけです。

 紹介されている事案の約7割が100人未満の中小企業におけるあっせんであると見込まれ(労働組合の組織率の低さが背景にあると考えられる)、著者はそれらの事案から、裁判に至らないこうしたあっせんの段階では、職場の暗黙のルールとしての法(「フォーク・レイバー・ロー」)が、司法上の「判例規範」とは別に存在しているということを指摘しています。

 その最たるものが「態度」が悪ければ雇用終了となるというルールであり、「能力」不足による解雇とされた事案であっても、「能力」の捉え方の主観・客観の判断区別が曖昧であることも相俟って、実は「態度」が悪いから解雇に至ったというような事案が多くみられます(コミュニケーション不全や職場仲間との協調を乱すことを含む)。

 興味深いのは、判例法理上は「態度」や「能力」だけを解雇理由とするのは認められ難いというのが一般論であるのに対し、あっせんの場では、そうしたことが企業側の主張にとどまらず、ひとつのア・プリオリな規範になっているということです。また、立法府によって2007年に成立した労働契約法において、法案審議過程で討議されることもあったものの最終的には条文に織り込まれなかった「金銭補償による雇用契約の終了」が、行政が主導するあっせんの場においては、少なくとも裁判例の数十倍もの規模でそのことが行われているという見方ができる点でも興味深いです。

 中小企業の実態と労働法や判例法理との乖離は、多くの中小企業が、経営不振という理由だけで極めて簡単に「整理解雇」を行っていて、真に経営上の理由であるかどうか疑わしいケースも中には含まれていると考えられる点についても言えます。

 しかしながら実際のあっせんの場では、そうしたことの正否よりも労働者側と会社側の合意とりつけに重きが置かれていること、日本は整理解雇に対する判例法理上の規制が強いという一般通念とは別の次元で、解決金という名の下に、金銭補償による雇用契約の終了が行われていることが、本書から如実に窺えます(あっせんという制度そのものがそうした性格を帯びているとも言える。弁護士などが行っているADRでも同じようなことはあると思うが、今それを行政が率先して行っている)。

 現行の労働法制の在り方、労働行政との乖離に対する問題提起にもなっており、こうした乖離の実態をどうすればよいかについては様々な論議があるかと思いますが、個人的に気になったのは、1,114件のあっせんの内、被申請人(企業側)の不参加によりあっせんが打ち切られたケースが42.7%と半数近くにのぼることです。

 労働審判と異なり、任意の制度として被申請人の不参加が認められている以上やむを得ないのかもしれませんが、実質的なあっせんの手続きにすら入ろうとしない企業が多いのはいかがなものかと(大企業・中堅企業でも、不参加企業がある)。

 こうした係争に費やす労務コストは少なからずのものがあるかと思いますが、解決金の額は平均水準ではそれほど高額にはなっておらず(10万円以上20万円未満が最も多い)、係争を長引かせ労働審判や裁判に持ち込まれるよりは(或いはユニオンに駈け込まれるよりは)、企業側もあっせんの場を"積極利用"して早期に決着した方が、代理人を立てた場合の費用なども含めトータルでは安く済むのではないでしょうか。

 企業側不参加の事案であっても、企業側が事前に「回答書」を提出するなどしているケースが多いため、必ずしも申請人(労働者側)の主張のみしか分からないというものばかりではありません。それらを併せ読むと、労使「相互被害者意識」のトラブルが多く、中には、申請人が所謂「モンスター社員」ではないかと疑われるケースもあります。こうした社員は、企業規模に関わらずどの会社にも一定割合でいるのではないでしょうか。企業側からすれば、「こんなヤツに解決金を払ったんじゃ他の社員に示しがつかない」ということで、あっせんそのものに乗り気でない(或いはあっせん内容に満足しない)ケースもあるではないかと思いました。そうした事情があったとしても、個人的には、これは企業側も大いに活用すべき制度であると考ます。

 濱口氏の本は、一般向けであっても堅めのものが多いのですが、本書は事例集なのでとっつき易く、また、著者なりの分析も簡潔明瞭で、企業規模を問わずお薦めです。

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