【1868】 ○ 中町 誠/中井 智子 『裁判例にみる 企業のセクハラ・パワハラ対応の手引 (2012/01 新日本法規出版) ★★★★

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セクハラ・パワハラ100事例を分かりやすく解説。読みやすいが、価格がややネック。

IMG_3760.JPG裁判例にみる企業のセクハラ1.jpg裁判例にみる 企業のセクハラ・パワハラ対応の手引

 セクハラ・パワハラに関して、最近の裁判における紛争例を事実関係を含めて取り上げ、実務上留意すべきポイントを抽出し、解説を試みたもので、約480ページの中でセクハラに関する裁判例を73事例、パワハラ、モラルハラスメントに関する判例を27事例、計100事例取り上げ、編者2名を含む10名の弁護士が執筆分担しています。

 セクハラ事案については、会社の調査・認定、会社の措置、会社の責任といった時系列的な順序で判例をグループ化しており、まあオーソドックスな分類方法ではないでしょうか。

 一方、未だ今一つ概念が明確でないパワハラに関する事案については、「原因」(上司の立場を利用した問題行動・問題発言、本人の態度・対応にきかっけがある場合、労働組合・一定の思想を背景とする嫌がらせ)と「行動様態」(いじめの事例、指導かパワハラか、嫌がらせ配転、退職勧奨、内部告発等)の2つの視点から分類しています。

 また、セクハラ、パワハラそれぞれについて、肯定された裁判例だけでなく、否定された裁判例も相当数取り上げられていてバランスがいいように思いましたが、こうした分類や取り上げ方の配慮が出来るようになったのは、それだけ裁判例が急増した(現在もしている)ということなのだろうなあと。
「判例時報」などを読んで、セクハラ事案の数の多さに驚かされるし、パワハラ事案もかつてと違って全然珍しいものではなくなってきました(本書で取り上げられているパワハラ事例の多くは平成19年から22年にかけてのもの)。

 これら判例を読むと、セクハラ・パワハラ事案とも主に人間関係上の問題に端を発していて、当事者の主観が先行して事実認定が難しいケースが多いことを思い知らされますが、類似裁判例を取り上げるなどして、その傾向や判決のポイントが把握できるようになっています。

 解説が簡潔にまとまっているだけでなく、字も大きくて、行間もゆったりとってあって読み易いです(いつでも、どこからでも読める)。
但し、その結果、500ページ弱で5,250円(税込み)という価格になってしまっており、この価格ゆえに刊行後1年で絶版になっているのでは(今後改版されるかもしれないが)。

 個人的には、セクハラ・パワハラ研修の"基礎編"を終えて、次に何をやろうかということで、ヒントになる判定がないかと思って購入。中古品でもあまり安くなく、時々マーケットプレイスを見ると、今でもいい値段みたい。
こうした本って、コンサルタントに限らず企業内実務者にとっても、本が出されたその時にはすぐには必要ないけれど、ある時急に必要になったりするのかなあ。

 個人的評価は価格面も考慮して星4つですが、まだ全部読みこめていない段階での評価。研修準備のためにこれから読み進んでいくと、意外と使える判例があったりして、星5つになるかも。

 でも、その会社でどのようなセクハラ・パワハラが起きるかなんて、なかなか想像できるものではないです。何となくそうしたことが起きそうな職場でも、「ウチはその手のセクハラはありません」とか言われたりするし。大体、そうした研修をやろうというところは、コンプライアンス意識が高くて、セクハラ・パワハラは起きにくいのではないかと思うけれどどうなのだろうか(内部監査の一環としてただ形式的に研修をやっている会社もあるが)。

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