【1857】 ○ 鈴木 雅則 『リーダーは弱みを見せろ―GE、グーグル 最強のリーダーシップ』 (2012/03 光文社新書) ★★★☆

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「自分を知る」「絵を描く」「人を巻き込む」-リーダーシップ実践の3ステップ。セミナー本のような印象も。

リーダーは弱みを見せろ2.JPGリーダーは弱みを見せろ.jpgリーダーは弱みを見せろ GE、グーグル 最強のリーダーシップ (光文社新書)』['12年]

 米国のコーネル大学大学院で人材マネジメント・組織行動学の理論を学び、GEとグーグルでリーダーシップを教えた経歴を持つという著者(1972年生まれ)が、この激変する社会で求められるリーダーシップとは何かを書いた本です。

 リーダーシップ実践には「自分を知る」「絵を描く」「人を巻き込む」の3つのステップがあり、この「自己・他者認識力」「ビジョン構築力」「コミュニケーション力」について、リーダーシップには「型」があるとの考え方のもと、これまでリーダーシップについて書かれた名著とされる本からリーダーシップ論を引きながら説いています。

 GE・グーグルといった先進企業での自らの経験に置き換えたり、日本の企業経営者の言動に当て嵌めたりしながら解説を進めているので、あるべきリーダー像というものを比較的身近に感じながら読み進むことができます。

 但し、やはり引いているものは海外のものが多く、これはまあ、リーダーシップ研究の歴史の長さが違いますから、リーダーシップの「型」を紹介していくとこうならざるを得ないのかなあと。

 ドラッカー、ウォレン・ベニスといった大御所から、「EQリーダーシップ」のダニエル・コールマンや「フロー体験」のチクセントミハイ、マーカス・バッキンガムなど比較的新しい論客、更には、マルコム・グラッドウェルや『7つの習慣』のスティ―ヴン・R・コヴィーといった自己啓発本に近いものまで紹介されています。

 基本的には、場当たり的なリーダー論に依拠するよりは、こうした「型」を一通り網羅して、大まかに体系を掴んだうえで、その中から自分に合った考え方を抽出し、管理者やリーダーとしての日々の活動に落とし込んでいく―というのが、やはり一番近道のように、個人的にも思います。

 本書に関しては、リーダーシップ論の体系づけにはさほどこだわっておらず、むしろ後半に行くほど、啓蒙書的なスタイルになっているように思えました。
 リーダーシップ研修の講義をそのまま本にしたような内容とも言えます(理論だけだと、聞く方は寝ちゃうから)。

 そうした意味では、よく纏まっているというか、上手く纏められていますが、紹介されているリーダーシップの「型」というものが、ややMBA型の「強いリーダーシップ論」に偏っているかなあ。ジャック・ウェルチとかもそうだし、GE出身だから当然そうなるのだろうけれども、「状況対応型リーダーシップ」とか「サーバント・リーダーシップ」などは出てこないね。

 タイトルの「リーダーは弱みをみせろ」ということについては、「自己・他者認識力」の部分で、ビル・ジョージの『リーダーへの旅路』を引きつつ、「自分の奥底に蓋をして必死に隠してきた自分の弱さを明らかにし、それらを受け入れることを通じて、自身の発言や行動が確信に満ちてきて、その結果、人がついていきたいと思う本物のリーダーに成長できる」としています(その後にジョンとハリーの「ジョハリの窓」の解説がつづく)。

ザ・ゼナラルマネジャー2.JPG 個人的には、むしろ「リーダーは弱みをみせろ」という言葉から想起したのは、リーダーシップ論の大家ジョン・コッターでした。
 コッターは、その著書『ザ・ゼネラル・マネジャー』から『リーダーシップ論』にかけて、「インフォーマルな人間関係に依存する」ことを優れたマネジャー(リーダー)の特質の一つとして挙げており、噛み砕いて言えば、困った時に「俺、困ってるんだけど」と言って相談できる仲間がいる、つまり、「人に弱みを見せることができる」のが、実は優れたリーダーであるというのが彼の考えではなかったかと思います。

 コッターのリーダーシップ論も、基本的にはオーソドックスな「変革のリーダーシップ論」であり、リーダーに高いエネルギーレベルを求めるものですが、一方で、こうした対人態度に関する言及があるのが特徴。これだけ先人たちの名前が挙がっているのに、タイトルを見てすぐに想起させられたコッターの名前が、本書の中に無かったのが意外でした。

 本書自体はそれほど悪くないと思われ、リーダーシップ研修のス進め方事例として読めば、よく纏まっているように思いました。特に、リーダーシップ研修を内製化しようとする場合においては、コンテンツ作成のヒントは得られるかもしれません。

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