「●上司学・リーダーシップ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1856】 三谷 宏幸 『世界で通用するリーダーシップ』
自己啓発書だが、管理職(リーダーシップ)研修のヒントも。
『「課長」として身につけたい50のルール』(2011/12 メトロポリタンプレス)
"Bootstrap Leadership: 50 Ways to Break Out, Take Charge, and Move Up"
書店に行けば必ずいつも置いてあるのがリーダーシップに関する自己啓発書ですが、自分自身もどれを読めばいいのかしばしば迷って、結局何も読まなかったりもします。但し、管理職研修をやるとかいうことになると、理論ばかりやっていてもイメージが湧きにくいから、啓蒙的な要素も入れた方がいいかなということで、今回この本を手にしました。
米国のリーダーシップ・カウンセラー、コーチである著者が、優れたリーダーになるための50のポイントをまとめた本で(原題"Bootstrap Leadership: 50 Ways to Break Out, Take Charge, and Move Up Steve Arneson"(2010))、翻訳者によれば、タイトルに「課長」とあるのは、日本企業におけるプレイング・マネジャーである「課長」に着目し、翻訳編集した内容になっているためであるとのことです。
企業内でさまざまな現場監督を務めながら、一人の管理者として企業全体や業界全体にまでも視野を広げ、さらには創造的に仕事をこなすクリエイティブなスキルを身につけるにはどうすればよいかについて書かれた本です。
原著者も、本書は「将来をイメージする」「アイデアを実行に移す」「部下の適性を判断し、長所を伸ばしてやる」「後継者を育てる」「自分自身に投資する」という5つのポイントに着目しているとしており、内容がマネジャーとしての資質とリーダーとしての資質の両方に及んでいるともとれるとから、「課長」という表題は適切であるように思いました。
「理想の上司を目指そう!」「新しいゲームを加える」「まわりの世界に目を向ける」「心地よい環境から抜け出す」「上司や指導者としての役目」と題された5つ基本スキルに基づくセッションごとに、「課長としてのリーダー力」を身につけるためのルールが1セッション10ずつ掲げられ、解説されています。
あらかじめ冒頭に、本文で語られる50のルールが、それぞれの内容と関連した質問形式に置き換えられ、自己診断用のチェックリストとして列挙されていて、これが、中間管理職としての内省を促し、自身のリーダー力のポジショニングを探るうえで、いいのではないかと思いました自己評価の"甘辛"の影響を受けるには違いないが)。
例えば、最初のチェック項目は、「課長のリーダー力を、いつ、どこで、どのように学んだかを覚えている」かとあり、本文では"ルール1"として、「自分の経歴書を書いてみよう」となっていて、なぜそのことが必要なのか、経歴書を書き上げたらそれをどう活用するかといったことが解説されています。
"ルール49"には「よい聞き手になる」とあり、リーダーたるもの、よい聞き手になることが大切であるとして、相手の話をただ「聞く」ことと「意識して聞く」ことの違いを述べていますが、「意識して聞く」ことができることをリーダーの重要なスキルとしている点に、著者のカウンセラー、コーチとしての特色がみられるように思いました。
基本的には理論書ではなく啓蒙書であり、人によって「合う、合わない」があるかもしれません。ただし、本書と同時期に刊行されたジョン・C・マクスウェル著『伸びる会社には理想のリーダーがいる』(2011年12月 辰巳出版)などが、「有名な○○である○○はこう言っている」的な従来型の啓蒙書スタイルをとっているのに比べると、本書の方がよりプラグマティカルであるように思いました。
企業の教育研修担当者にとっては、管理職(リーダーシップ)研修を内製化する際などには、、これもまた「合う、合わない」があるかもしれませんが、まだこちらの方が、コンテンツ作成のヒントが得られるかもしれません(個人的には、コンサルの立場から、その面での評価として○、50のルールの内、少なくとも10以上は確実に使える!)。
日本でも多くの著作が翻訳が刊行されているジョン・C・マクスウェルなどとは異なり、原著者のスティーブ・アーネソンの本は、本邦初訳。但し、原著者は、Leadership Excellence誌が選ぶ「全米TOP25のリーダーシップ・コーチ」に3年連続(2008年、2009年、2010年)して選ばれたとのこと、これがどれぐらいスゴイことなのか、ぴんと来ない面もありますが。