【1844】 ○ 円谷 一 『円谷英二 日本映画界に残した遺産 (1973/01 小学館) 《[復刻版] (2001/06 小学館)》 ★★★★

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写真も楽しいけれど、エピソードも楽しい一冊。円谷英二の人柄が伝わってくる。

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円谷英二 日本映画界に残した遺産』[復刻版](2001/06)
(27.4 x 19.8 x 2.2 cm)

『円谷英二 日本映画界に残した遺産』(1973/01 小学館)

円谷英二 日本映画界に残した遺産09.JPG 1973年に円谷プロの設立10周年を記念して刊行された本で、円谷英二(1901-1970/享年68)の足跡、生い立ちから始まって生涯とその仕事を、豊富な写真と主に本人が折々に書いた文章や談話で辿ったもの。

 幼少の頃、撮影助手としての掛け出しの頃の写真家から始まって、ミニチュア模型に囲まれていたり怪獣たちに"演技指導"していたりする制作現場の写真などが数多く含まれていて、写真を見ているだけでも興味深いですが、円谷英二自身の文章・談話のほかに、多くの関係者がエッセイを寄せていて、元本が、1970年1月に円谷英二が亡くなってちょうど3年経った時に刊行されたものであることを考えあわせても、「追悼本」の色合いが濃いかと思います。

円谷英二 日本映画界に残した遺産10.JPG 撮影に取り組む姿勢は厳しかったものの、人間味があり、現場の雰囲気づくり、現場をまとめ上げることが非常に上手だった人のようで、そうでなければ、あのような多くの人手と才能を要する特撮作品を幾つも作ることは出来なかっただろうし、そのことからすれば、そうした人柄は想像に難くないにしても、ともかくエピソードに事欠かない人物だなあと。 

 "ゴジラ"制作の頃のエピソードが特に面白く、監督の本多猪四郎によれば、初代"ゴジラ"は生ゴム加工で大変な重量であり、完成していざ歩こうとしたゴジラは5㎝角の木材に足を引っ掛けてその場にドウと倒れたまま、自力で寝返りも打てなかったとのこと、後にゴジラが身軽に動けるようになったのは次々開発された合成樹脂のお蔭だそうですが、トンボを切ったりすることまで出来るようになった分、ゴジラのイメージ自体も軽くなっていた印象があります。

円谷英二 日本映画界に残した遺産11.JPG 円谷英二本人の述懐では、怪獣もののロケハンの際に、銀座のMデパートの屋上に上がり、「新橋のあのあたりに火をつけて銀座の方へ燃え移らせよう」とか打ち合わせしていたところ、一階の出口でストップをかけられ不審尋問を受けた(昭和37年4月、毎日新聞)というのは可笑しいです。

 怪獣好きな東北の少年が交通事故で死んだ時、涙を流して小さな怪獣を作って仏壇に置く歌というスクリプターの証言は泣けるなあ。

 国際線の機中で、乗客簿を見て、ゴジラを作った有名なミスター・ツブラヤが乗っていると知った機長が挨拶に来て、ゴジラファンである子供のためにとせがまれスチールにサインしたら、男の子二人で喧嘩すると困るからもう一枚サインして貰えないかとねだられたとか―写真も楽しいけれど、エピソードも楽しい一冊です。

 因みに、本書は長らくの間、古本市場でもそれほど数が出回らないためプレミア価格になっていましたが、2001年に円谷英二生誕100年を記念して復刻されています。

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