【1786】 ○ 眞 淳平 『世界の国 1位と最下位―国際情勢の基礎を知ろう』 (2010/09 (岩波ジュニア新書) ★★★★

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興味深い切り口。国家間の経済力格差などについて結構考えさせられる。

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世界の国 1位と最下位――国際情勢の基礎を知ろう (岩波ジュニア新書)

 同じく岩波ジュニア新書にある著者の前著で、宇宙史、地球史、生命進化史、人類進化史を全部繋げて1冊に纏めたとでも言うべき本『人類が生まれるための12の偶然』('09年、監修:松井孝典)が個人的にはスゴく面白かったので、本書にも同様に期待しましたが、そこそこに楽しめた―と言うより、国家間の貧富の格差などについて結構考えさせられたという印象でしょうか。

 面積、人口、GDP、税金、軍事力、石油・天然ガスの生産、輸出、貧困率、食糧自給率、進学率の各項目について、世界で最高の国、最低の国を挙げ、その背景や問題点を説明するとともに、それぞれの項目における日本の位置なども解説していますが、やはりこの著者の持ち味は、こうしたユニークな切り口でしょうか。

 読んでみて大方の予測がつくものもあったけれど、知らなかったこと(特に「最小」の方)、意外だったことも結構あったなあと思った次第で、その幾つかを挙げると―、

ツバル、ナウル.jpg 国土面積がバチカン(0.44平方キロ)、モナコ(2平方キロ)に次いで小さい国は、ニューギニア東方中部太平洋の島国ツバル(21平方キロ)、その次はツバルの傍のナウル(26平方キロ)。人口がバチカン(800人)に次いで少ないのも(モナコは除かれ)ツバル(9700人)、ナウル(1万1000人)。更に経済規模(国民総所得=GNI)が一番小さいのも(バチカンも除かれ)ツバル、ナウルの順。

ツバル.jpg ツバルは、地球温暖化で水没してしまうのではないかと危惧されていると本書にもありますが、その兆候は今のところないという話も(しかし、国内の最高標高が5mだからなあ)。

ナウル 重量挙げ.jpg 一方ナウルは、ロンドン五輪に出場したその国の重量挙げのイテ・デテナモ選手のことが新聞に出ていたなあ。最重量級で14位に入っていたのは立派(2012年8月9日付朝日新聞)。地下資源の涸渇で経済的に困窮していて、その選手も現在失業中。新聞にはトンガに次ぐ肥満大国ともありました。

イテ・デテナモ(重量挙げ、ナウル)[朝日新聞デジタル:ロンドンオリンピック2012]

 税と社会保障の国民負担率が最も大きな国はアフリカ南部のレソト(51.5%)。続いてフランス(44.5%)、ハンガリー(43.6%)...。GDPに対する国家財政の累積債務比率が最も高いのはジンバブエ(220%)。但し、先進国で断トツ「は日本(170%)。

 世界一の産油国はロシア。但し、埋蔵量ではサウジアラビア、カナダ、イラン、イラクなど7カ国がロシアを上回る。

 一人当たりのGDPが最も少ない最貧国は、アフリカのブルンジ(1万4000円)。因みに最大はルクセンブルグ(930万円)。

 高等教育への進学率が最も高いのはキューバで109%(!!)。高等教育への進学年齢(日本で言えば18歳)を分母とした場合、社会人になってからの進学者が分子に入ってくると、理論上100%を超え、キューバは実際にそうなっている。

 まあ、こうやって国名や数字を見ていくだけでも興味深いですが(数字には年代と共に変化していくものも多くあるが)、本書ではそれぞれの解説において更に突っ込んで、こうした数字の背景にある諸問題を浮き彫りにしてもいます。

 数値データだけなら、『朝日ジュニア学習年鑑』(前身は『少年朝日年鑑』)の「統計編」のようにもう少しグラフを使ったりした方が分かりやすいかもしれませんが、本書はあくまで「調べること、見せること」より、」 1位と最下位」をキーワードとして「読ませること」を主眼としたものと言えるでしょう。

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