【1767】 ◎ 野村 哲也 『カラー版 パタゴニアを行く―世界でもっとも美しい大地』 (2011/01 中公新書) ★★★★☆

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「世界でもっとも美しい大地」というサブタイトルは誇張ではないと思った。

パタゴニアを行く 地図.bmpパタゴニアを行く―世界でもっとも美しい大地.jpg      PATAGONIA―野村哲也写真集.bmp
カラー版 パタゴニアを行く―世界でもっとも美しい大地 (中公新書)』['11年]『PATAGONIA―野村哲也写真集』['10年]

 パタゴニアというのは、南米大陸のチリとアルゼンチンの両国の南緯40度以南を指すそうです(緯度で区切られていたのか)。

 本書は、パタゴニアに魅せられた新進気鋭の写真家が、'97年にかの地に移住し、その自然の美とそこに暮らす人々を取材したもので、パタゴニアを北西、北東、南西、南東、極南の5つの地域に分けて紹介した写文集です(文中、章ごとに、今どの辺りにいるか緯度で示しているため分かり易い)。

パタゴニアを行く1.jpg 既に著者は'10年に、『PATAGONIA―野村哲也写真集』(風媒社)という大判の写真集を発表しており、こちらの新書の方は、写文集とはいえ写真はそう数はないかと思ったら、相当数の写真が掲載されていて、写真集としても十分堪能出来て、これで千円以下というのは相当お得ではないかと思いました。

 写真はどれも美しく、本書表紙にもなっている、冬にだけ現れる湖に「チリ富士」と呼ばれるその姿を映すオソルノ山、そのオソルノ山をプエルト・パラスの町から眺めた遠景、城塞のようなセロ・カスティーヨ山、海に落ち込むサンラファエル氷河のグレイシャーブルーの輝き、夕陽を背景にテールアップするバルデス半島のクジラ、朝日で深紅に染まるパイネ山のセントラル塔、写真集の表紙にもなっている、湖に鏡のようにその姿を映す尖鋒フィッツロイ―いずれもため息が出そうなものばかりです。

 こうした写真がそう簡単に撮れるものではなく、シャッターチャンスを求めての苦心譚もあれば、地元の人々との交流も描かかれていて(文章も上手だなあ)、更には、地誌、歴史(人類史含む)に関する解説も織り込まれています。

 また、近年、「南米のスイス」と言われ、マチュピチュと並ぶ南米の観光地として注目を浴びていることから、観光ルートなども紹介されていて、氷河のトレッキングツアーなどが組まれているんだなあと(著者もそうしたツアーを利用したりもしている)。

 最後は、グレイト・ジャーニーと呼ばれる人類の旅の最終地点フェゴ島で、先住モンゴロイド系民族の最後の末裔である姉妹と会うところで旅を締め括っていて、地理的にも雄大ですが、時空的にも壮大な旅となているように思いました。

 サブタイトルの「世界でもっとも美しい大地」は著者が心底そう思っていることが窺え、個人的にもこれらの写真を見ていて、けっして大袈裟な表現ではないと思いました。

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This page contains a single entry by wada published on 2012年7月 2日 03:43.

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