【1741】 ○ 石原 豪人(画)/中村 圭子(編) 『新装版 石原豪人―「エロス」と「怪奇」を描いたイラストレーター (らんぷの本)』 (2010/08 河出書房新社) ★★★★

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怪奇画、怪獣画のイメージが強いが、美人画もいい。大正・昭和的なノスタルジー感がある。

石原 豪人『新装版 石原豪人(らんぷの本)』.jpg石原豪人08.jpg 石原豪人82.jpg 石原豪人29歳頃.jpg
新装版 石原豪人---「エロス」と「怪奇」を描いたイラストレーター (らんぷの本)』 /「宇宙巨人ジャイアン」[昭和42年4月9日「少年マガジン」ほか/「日本は沈んでいく!」[昭和48年9月「小学四年生」]/石原豪人(1923-1998/享年75)29歳の頃

石原豪人 らんぷの本.jpg石原豪人10.jpg 昭和40年代頃の少年雑誌には「大図解」というグラビアページがあり、「未来世界」「怪奇現象」「怪人」といったテーマで様々な絵が描かれていましたが、そうした挿絵画の常連画家だったのが石原豪人(ごうじん)でした。

石原豪人 (らんぷの本)』(2004)

石原豪人90-91.jpg 本書は'04年に刊行されたものの新装版で、表紙が「怪奇」に「エロス」が加わって、より豪人らしくなったのかな? いずれにせよ、この価格でこれだけ石原豪人の作品を見られたのはお得だったかも(その後、2017年に再度「新装版」が刊行された)

石原豪人20.jpg 作品を「怪人画」「妖怪画」「怪獣画」「幽霊画」「探偵小説の挿絵」「虚構世界」等ジャンル別に収め、解説を付していますが、スポーツ画や少女雑誌の挿絵などもあって、何でもござれだったんだなあと。

「マンボウ情報局」扉絵[「マンガボーイズ」平成6年9月]

 個人的にはやはり「怪奇画」「怪獣画」のイメージが強いのですが、美人画も良くて、それも、セクシー美女や芸能人の似顔絵に限らず、老若男女を問わず何を描いても色気があり、やはりこの人、振り返ってみればある種"天才"だったのだなあと。

 「林月光」の名でSM雑誌の挿絵も多く描いていて、それらも少ないながらもオミットせずに紹介されていますが(編者は美術館学芸員)、少年雑誌が「まんが誌」化し、「大図解」などの入る余地が無くなったために、こっちの仕事が多くなったという経緯があったのだなあ(彼自身、まんがにも挑戦しているが、1コマ1コマが細密過ぎて体力が持たず、続かなかったとのこと)。

石原豪人75.jpg 高度成長期が終わって、豪人のパワフル過ぎる絵が時代にそぐわなくなってきたという編者の分析もありますが、それが、昭和の終わりから平成にかけて、所謂"おたく"と呼ばれる人たちの間で再注目され、結局、最晩年まで現役で活躍しました。

「松虫」(神谷敬里(=栗本薫)/文)[「ジュネ」昭和54年8月]

 実際に本書にも、平成に入ってからの作品も結構ありますが、常に新境地を開拓しつつも、どの絵を見ても、昭和初期から30年代前半までの街頭紙芝居の絵の雰囲気をどこか保持していて、日本的(大正・昭和的)なノスタルジー感を秘めています。

 こんな絵を描いている人がどんな人柄で、どのようなプライベート生活を送っていたかというと、生真面目な職人気質で、家庭では子煩悩であったようです(自作の怪人衣装でコスプレして、息子の遊び相手をしている写真がある。編集者らと息子を連れて釣りに行った時は、自分はさっぱりだったが、息子のために釣れる場所を一生懸命探していたとか)。

 でも、仕事部屋に電話が2台あって、石原豪人と林月光で使い分けていたというから、ちょっと江戸川乱歩っぽく、また文才もあって、『謎解き坊ちゃん』という著作もあるという―「坊ちゃん」解釈にこだわりを持っていて、「登場人物全員ホモ説」を唱えた―何だか面白い人だなあ。

【2004年初版/2010年新装版/2017年増補新装版】

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This page contains a single entry by wada published on 2012年5月 2日 22:08.

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