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無味乾燥ではない分、世界史への興味が増すことは請け合い。世界史嫌いを直す効果は大?。
『年号記憶術―世界史を俳句で覚える本 (1968年) (カッパ・ブックス)』['68年]カバーデザイン:田中一光/カバーイラスト:松本秀美/本文カット:しとうきねお
世界史に関する一般向けの著書を多く著した三浦一郎(1914‐2006)の本で、このヒト、後に上智大学の名誉教授になりますが、本書を刊行した時点では、茨城大学教授でした。
世界史の年号を「俳句で覚える」本ということなのですが、その俳句というのが結構"アダルト"向けの語呂合わせが多いです。
例えば「女房の 裸も見れない ストイック」(B.C.307年 ゼノン、ストア学派を開く)、「恐妻家 夜這いもできぬ クロービス」(481年 フランク王クロービス即位)とか、「回教で 老夫婦まで 回春し」(622年 マホメットのヘジラ)、「玄焋は セックス肉断ち 天竺へ」(629年 玄焋、インド旅行へ出発)とか、「避妊用意 蒙古が来たぞ 女ども」(1241年 ワールシュタットの戦い、蒙古軍の襲来)とか、「ビロードの ような手触り『金瓶梅』」(1610年 『金瓶梅』成る)...etc.
「色婆々と名誉革命 血が出ない」(1688年 イギリス名誉革命)なんてスゴイのもあるけれど、「年号」そのものとしては、半分以上は試験には出ないんじゃないかなあ(『金瓶梅』が成った年とか、タバコがサー・ウォルター・ローリーによってエリザベス女王に献じられた年なんてねえ)。
でも、読み物のように読めて、世界史への興味が増すことは請け合いです。1ページ1事件で、解説部分はしっかりしていて(或いは、更に"雑学"の世界に入り込んでいて)、世界史の勉強を無味乾燥な記憶作業として嫌っている学生には、世界史嫌いを直す効果は大きいかも?
'55年に著した『世界史こぼれ話』が'73年から角川文庫にシリーズで収められて人気を博した著者ですが、本書はその角川文庫化より5年くらい前の刊行で、これはこれで結構読まれたのではないでしょうか。
エッセイストでもあり、洒脱な文章を得意とした著者ですが、学者がこうした本を出すというのは、まだその頃の方が、全てにおいて鷹揚な時代でもあったのかも。