【1712】 ○ 広瀬 隆/明石 昇二郎 『原発の闇を暴く (2011/07 集英社新書) ★★★★

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"原子力村、原子力マフィア"と言われる面々を、実名を挙げて"再整理・再告発"。

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広瀬隆 明石昇二郎.jpg  東日本大震災による福島第一原発事故は、「想定外の天災」などではなく「人災」であるとして、30年以上前、チェルノブイリ事故直後に『危険な話』(′87年/八月書館、'89年/新潮文庫)を刊行した作家・広瀬隆氏(67歳)と、10年前に浜岡原発事故のシミュレーションを連載し、『原発崩壊』(′07年/金曜日)を刊行したルポライター・明石昇二郎(49歳)の2人が、「あってはいけないことを起こしてしまった」構造とその責任の所在を、"実名"を挙げて徹底的に曝した対談です。
広瀬隆・明石昇二郎 両氏(本書刊行と同時に東電を刑事告発した際の記者会見('11年7月15日)

 まず 第1章「今ここにある危機」で、メディアに出ない本当に怖い部分の話や子供たちの被曝の問題を取り上げ、「半減期」という言葉などに見られる、報道の欺瞞を指摘しています。

 そして、第2章「原発崩壊の責任者たち」では、原子力マフィアによる政官産学のシンジケート構造を暴いていく中で、根拠の無い安全・安心神話を振り撤き、リスクと利権を天秤にかけて後者を選択した「原子力関係者」たちを列挙していますが、100ページ以上に及ぶこの章が、やはり本書の"肝"でしょうか。

 放射能事故による汚染は「お百姓の泥と同じ」との暴言を吐いた人物、「不安院」と揶揄される保安院の構造的問題、「被曝しても大丈夫」を連呼した学者たち、耐震基準をねじ曲げた"活断層カッター"―何れも「実名」を挙げてその責任を追及しています。

 冒頭には、事故当初、専門家・解説者としてNHKなどのテレビに出続けた原子力推進派の「御用学者」の名が挙がっており、その筆頭格が、関村直人・東大大学院工業系研究科教授と、岡本孝司・東大大学院教授(東大工学部原子力工学科卒)とされています(今は、ウェッブで「原発業界御用学者リスト」なるものを閲覧出来るが、出来れば彼らがテレビに出る前に知っておきたかったところ)。

 こうした人達は4月終り頃にはもう殆どテレビには出なくなってはいましたが、やはり、事故直後の一般の人々が最も原発事故に関心を寄せ、真剣に不安を抱いている時期に、能天気な楽観説を唱え続けた罪は重いように思えます。

 第3章「私たちが考えるべきこと」では、原発がなくても停電はせず、独立系発電事業者だけでも電気は足りるということ、電力自由化で確実に電気料金は安くなり、必要なのは電力であって、原子力ではないということを訴えています。

 広瀬氏は、『FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン』('05年/朝日新書)に続く事故後の著書で、内容的には両者の発言とも、これまでの2人の著作と重なる部分も多々あり、やはり、原子力村、原子力マフィアと言われる面々を、実名を挙げて"再整理""再告発"している点が、本書の最大の特長かと思われます(この方面に関しては、集英社は大手では岩波書店と並んでアグレッシブか)。

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