「●地震・津波災害」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1739】 河北新報社 『河北新報のいちばん長い日』
「●写真集」の インデックッスへ
朝日版は「写真集」、産経版は「記録」として、それぞれ"保存版"に値する内容。
朝日新聞社『報道写真全記録2011.3.11-4.11 東日本大震災』 産経新聞社『闘う日本 東日本大震災1カ月の全記録』
'11年3月11日発生の東日本大震災の翌月4月下旬頃には、新聞社各社が報道写真集を出し、また震災報道にフィーチャーした縮刷版や関連のグラフ誌なども前後して刊行されましたが、個人的には、朝日新聞社と産経新聞社からそれぞれ刊行のこの2冊が目につきました。
朝日版は「写真集」と銘打っているだけあって、大判誌面全体を使った写真が、自然災害の脅威とその被害の甚大さを生々しく伝えており、被災した人々のうちひしがれた様子も痛々しく(廃墟と化した街を背に路上に座り込む女性の写真は海外にも配信されたが、その他にも、「愛娘たちの遺体が見つかった現場近くでお菓子やジュースをまく母親ら」などの写真は涙をそそる)、その中で何とか復興への光明を見出そうと懸命な人々の姿に、思わず感動を誘われました。
大津波で壊滅的な被害を受けた宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区で、女性 が道路に座り込んで涙を流していた=3月13日午前10時57分 / 朝日新聞 恒成利幸撮影
新聞本紙で報道された記事・データ部分は中ほどに纏める形になっていて、そこには、震災後1ヵ月間の新聞報道の時系列に沿った形での記事や被害マップがありますが、時間と共に把握された被害状況がどんどん拡がっていく様が手にとるようにわかり、一度新聞で見たことがあるとは言え、振り返ってみると更に生々しく感じられました。
産経版は「写真集」ではなく「記録」と銘打っていますが、こちらも写真の点数は多く、但し、殆どが記事との組み合わせになっている構成。1つ1つの写真のキャプションも丁寧で、福島第一原発事故の事故後1ヵ月の推移だけでも詳しく纏められており、その他、原発事故現場で復旧にあたった人々の様子や(「保安院の人たちは逃げた」とある)、チェルノブイリの現況なども記されています。
更に、「子供たちが、消えた」として、石巻市立大川小学校にフォーカスした写真群があり、その惨状には思わず目を覆いたくなりますが、やはり、正視し、記憶しておくべきことなのでしょう。
「闘う日本」と題しているように、産経版の方が、被災した人、復旧に当たる人、外国から救援に駆け付けた人など「人」をよく撮っているし、首都圏のパニック状況や、過去の震災の記録など、写真や記事のテーマの切り口も多角的で、本書のための新たな編纂努力が窺えるように思いました。
但し、朝日版の大判写真の迫力は、やはりストレートに訴えるものがあり、朝日版は「写真集」、産経版は「記録」として、それぞれ"保存版"に値する内容だと思います。