【1699】 ○ フィル・レニール/重光 直之 『ミンツバーグ教授のマネジャーの学校 (2011/09 ダイヤモンド社) ★★★★

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「コーチング・アワセルブズ」という「第三世代」のマネジメント教育の方法を物語風に解説。

ミンツバーグ教授のマネジャーの学校.jpg 『ミンツバーグ教授の マネジャーの学校』(2011/09 ダイヤモンド社)

 IT企業のマネジャーであった著者(フィル・レニール Phil LeNir)は、自分のいた会社が買収の憂き目に遭い、リストラや経費削減で職場モラールが低下する中、ミドルマネジャーが元気を取り戻し、活き活きと仕事するにはどうすればよいかを模索していた。そんなある日、母親の再婚相手が経営学者であったことを思い出して、義父のもとへ相談に行く―。

 その(著者の義父にあたる)経営学者というのが、偶然にも『MBAが会社を滅ぼす』で有名なヘンリー・ミンツバーグ教授であったわけですが、本書は、著者がミンツバーグの教えに従い実践した「コーチング・アワセルブズ」というマネジャー育成方法について、自分の職場への導入の実際から、その浸透により得られた効果までが、実体験に基づき物語風に綴られていて、たいへん読みやすいものとなっています。

 「コーチング・アワセルブズ」というプログラムの要となるのは、マネジャーたちが互いに自身のマネジメント経験を語り、それを振り返る「内省(リフレクション)」であり、これを習慣化し、そこから今まで気づかなかった学びを得るとことで、各自がマネジャーとしての大局観を養うとともに、マネジャー同士のコミュニティシップを形成し、組織変革の起点にしていくというのがその狙いです。

 重光直之氏の解説にもあるとおり、ミンツバーグはかねてより、マネジメント教育は「自分の経験を内省する」ことを中心にすべきであると主張しており、こうした自身の唱える「日々の自分の経験から学ぶ」マネジメント教育の方法を、教室において座学で理論を学ぶ「第一世代」のマネジメント教育、アクションラーニングなど実際のプロジェクトを教室に持ち込む「第二世代」のマネジメント教育に対し、「第三世代」のマネジメント教育としています。

 本書からも窺えるように、実際の経緯としては、以前からミンツバーグが提唱していたマネジメント教育の在るべき姿を、著者が実践に落とし込むことにより、「コーチング・アワセルブズ」というスタイルが出来あがったわけであり、著者自身は会社を辞め、この手法を広めるための会社を設立し、解説の重光直之氏の属する会社は、その日本におけるパートナーとなっています(日本では「リフレクション・ラウンドテーブル」という名称で展開)。

 そうなると、この本は"宣伝本"ではないかと見るむきもあるかもしれませんが、著者の実体験を書くことで、そのノウハウがほぼ開示されているため、内製的に実施することが可能であるように思われ、また、これからの企業内研修の在り方にユニークな示唆を提供しているように思えました。実際に日本でも、一部の大手企業では導入済みであるとのこと、社内研修の担当者などは、本書から、マネジメント研修の実施方法についての新たなヒントが得られるかもしれません。一読して損はないかと思います。

 「コーチング・アワセルブズ」、次回の管理職研修で採り入れてみようかなあ。

マネジャーの実像.jpg 因みに、ミンツバーグ自身の近著『マネジャーの実像』(日経BP社 2011年1月刊)の中でも、この「コーチング・アワセルブズ」は紹介されていましたが、本書自体は、彼の膨大な経営思想を網羅的に要約したものではなく、あくまでも「コーチング・アワセルブズ」とういうマネジャー育成プログラムにフォーカスして、それを、ごく分かりやすく紹介したものであると言えます。

 ただし、巻末にはミンツバーグの主著が紹介されており、また、自然をこよなく愛するという彼の人柄などにも触れられており、経営思想の泰斗をこれまでより身近に感じることで、本書が彼の著作への手引きとなるかもしれません。

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