「●労働法・就業規則」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1693】 水町 勇一郎 『労働法入門』
『労働法コンメンタール』を買わずとも、これで十分か。検索機能が充実している。
『新訂版 労働基準法の教科書 (労政時報選書)』(2011/07 労務行政)
「労務に携わる者、労働法を学ぼうとする者は『労働法コンメンタール』を読め」とはよく言われることですが、確かに、例えば労働基準法に関しては、厚労省労働基準局編の『労働法コンメンタール③ 労働基準法』(労務行政研究所)が最も詳しい解説書ということになるでしょう。
しかし、上下刊で1100ページを超える大著で、「寄宿舎」とか「監督機関」など、一般の民間会社の人事労務担当者には関係の薄いジャンルの記述も含まれており、学者はともかく実務家にどれくらい利用されているのかなあと(冒頭の言葉は、実務家の人に言われたのだが、その人自身、あまり『コンメンタール』を読み込んでいるようには思えなかった)。
本書は、『労働法コンメンタール③ 平成22年版 労働基準法』をベースとしながらも、一般の人事担当者が実務であまり使うことの無い部分の解説を省略し、労基法全119条の内、詳細な逐条解説は"日常よく使う"55条に絞ったもので、それでも700ページあり、実務に使う分にはこれで十分ではないかと思います。
コンメンタール原本は縦書きであるのに対し本書は横書きであり、2色刷りで図解も多くて読み易く、また、条文の中のキーワードの右肩に青字の数字が記されていて、それが条文の後に続く解説の番号と対応しているなどの使い易さにも配慮されています。
その他に、巻末に事項別の索引があり、更に「年次別通ちょう索引」も付されているため、行政通達の周辺事項を知るのに便利。判例索引も、判決の日付・事項番号・事件名が分かっている場合に、労働基準法との関係が分かるようになっているなど、検索機能については至れり尽くせりの充実ぶり。
『コンメンタール』を買って積(つん)読になってしまうよりは、こっちを買って、線を引いたりタグを貼ったりして、ばんばん使った方がいいし、全1巻なので、携帯にもさほど負担にならないかと思います。