【1665】 ○ 労務行政研究所 『人事担当者のための震災対応の実務 (労政時報選書)』 (2011/06 労務行政) ★★★☆

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「緊急時の実務Q&A」からルポルタージュ、アンケート調査まで、よく網羅されている。

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人事担当者のための震災対応の実務 (労政時報選書)』(2011/06 労務行政)/野川忍『Q&A 震災と雇用問題』(2011/06 商事法務)

 '11年3月11日発生の東日本大震災を受けての刊行で、第1部の「緊急時の実務Q&A」で、震災下における陳賃金・労働時間等に関するとるべき対応や、やむなく退職・解雇せざるを得ない場合の手続き、労働保険や社会保険の特例等について、50のQ&Aで実務的な解決策を示しています。

 第2部にあたる「実務解説」では、「大震災 その時、人事部はどう動いたか」というジャーナリストの溝上憲文氏によるルポルタージュや、「危機管理における職場のメンタルヘルス」という医師の亀田高志氏による解説など、4本の寄稿があり、第3部にあたる「オリジナル調査」では、休職時の賃金等の支払いから、見舞金、住宅融資などの扱いについて、震災後に企業に対して行った緊急アンケートの結果を掲載しているほか、ビジネスパーソン412人に聞いた、震災当日の行動から会社の備え、震災後の状況までを集計し、分析結果とともに載せています。

 多岐にわたる内容で、しかも、震災後のアンケート結果を掲載したうえでの刊行ということで、この素早さの背景には、刊行元がネット上に有する数多くの人事パーソン、ビジネスパーソンとのネットワークがあるかと思います。

 「50のQ&A」を見ても、賃金、賞与、退職金、労働時間、退職・解雇から介護、社会保険、安衛法、労災保険法、給付金まで幅広く扱っており、この部分がやはり実務上の核ではないかと思いました。

 オリジナルアンケートは、計画停電への各社の対応動向を把握するなどには重宝し、法律の解釈とは別に、やむえない休業であっても大体の企業がほぼ満額の賃金保障をしていることが分かります(一方で、派遣社員などは多くが契約を切られているという事実はあるのだろうが)。結局、当初危惧された、夏場の計画停電はありませんでしたが。

 溝上憲文氏によるルポルタージュや、ビジネスパーソンへのアンケートにはシズル感があり、記録としての意味もあるかも。一方で、常見陽平氏の「大震災は就活を変えたのか」などのリポートは、必ずしも無くてもよかったような気もします。

 震災と労災等を含む労働法との関連については、ほぼ同時期に刊行された野川忍氏の『Q&A震災と雇用問題』(商事法務)の方が、ほぼ同じ価格ながら、丸々1冊それに充てているため、そちらの方がQ&Aの数も多いし(100項目)、一つひとつの解説も詳しいように思います。

 こちらは、広く浅くという感じでしょうか。緊急出版にしては、色々とよく網羅されているという点では評価したいと思います(「専門誌における「特集」的な感覚の編集か)。

【読書MEMO】
「月刊 人事マネジメント」2019年2月号
「月刊 人事マネジメント」2019年2月号.JPG

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This page contains a single entry by wada published on 2012年1月 3日 02:13.

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