【1651】 ○ 労務行政研究所 『今が分かる!悩みに答える! 最新 人事考課制度―13社の企業事例、最新実態調査、専門家の解説とQ&A (労政時報選書)』 (2011/11 労務行政) ★★★★ (○ 日本経団連出版 『最新 目標管理シート集 (2008/03 日本経団連出版) ★★★☆)

「●目標管理・人事考課」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2289】 江夏 幾多郎 『人事評価の「曖昧」と「納得」

人事考課制度の設計や考課者研修をする際に参考になる。労務行政版は事例解説が丁寧。

最新 人事考課制度.jpg     最新成果主義型人事考課シート集.jpg  最新・目標管理シート集.jpg
今が分かる!悩みに答える!最新 人事考課制度 - 13社の企業事例、最新実態調査、専門家の解説とQ&A (労政時報選書)』['11年]/『最新成果主義型人事考課シート集―本当の強さをつくる評価・育成システム事例』['03年]/『最新・目標管理シート集』['08年]

 企業で実際に使われている人事考課のための帳票や目標管理シートを集めたものでは、日本経団連が日経連時代から何年かおきに刊行しているものがあり、直近では、『最新 成果主義型人事考課シート集―本当の強さをつくる評価・育成システム事例』('03年/日本経団連出版)や『最新 目標管理シート集』('08年/日本経団連出版)があります。

 前者は32社のモデル帳票資料263点を収録し6,020円、後者は30社のオリジナルシートを収録し、274ページで4,200円と、それぞれなかなか"いい値段"で、しかも中古でもあまり安くならないところをみると、やはり継続的に需要があるということなのでしょう。端的に言えばシート集であり、解説を書いているのも各企業の担当者です(ある意味、日本経団連は、ラクな商売してる?)。

人事考課制度集.JPG 「労政時報選書」として刊行された本書の場合は、リクルート、リコー、日本ユニシス、ハウス食品、更にはソフトバンクなどなど13社の事例を載せていて、376ページで税込価格5,200円。まあ価格的にはこんなところになるのかなと('06年版の『最新人事考課制度』は、224ページ(3,900円)だったので、ページ数を増やし、価格もそれに伴って上げたことになる。「別冊」から「選書」になっても、安くならないんだなあ)。

 1社当たりの記事は、「労政時報選書」版の方が、背景となる人事制度の枠組みなどが「取材記事」として丁寧に解説されている点で充実していて、それら事例の紹介に入る前に、最近の人事考課の変化傾向分析などが、調査データを交え80ページに渡ってなされており、これも参考になります。

 また、後半の100ページは、運用のためのQ&Aが31問ほど付されて、かなり突っ込んだ解説がなされていたり、「考課力アップ講座」としてチェックテストが付されていたりし、これらは、考課者研修に使える実践的なものであると思われます(個人的にも実際に使用した。「労政時報」本誌でかつて掲載された内容もあるが、本誌購読会員は改めてネットでダウンロードできる)。

 13社の事例をみても、考課表の内容はバラエティに富んでいて、考課要素で言えば、「業績・能力・情意」といったトラディッショナルなものから、人材育成を単独の考課要素として取り入れたものまで様々です。

 かつてほど「コンピテンシー」ということは言われなくなったと聞きますが、こうしてみると「行動評価」として定着している企業には既に定着していて、全体的に見ても、「業績・能力・行動」が3大考課要素とみていいのではないでしょうか。

 「能力」の部分は、例えば「課題解決能力」など、業務遂行の過程で実際に顕在化した能力を見るようにしている傾向が窺えますが、プロセスという意味合いにおいて、行動評価(行動プロセス評価)と統合しているケースもあります。

 考えてみれば、「コンピテンシー」の本来の意味は(人格に近いところでの)「能力」という意味であり、米国などでは主に採用や昇進・配置のアセスメントとして使われていたのが、日本においては人事考課に用いられるようになり、そのため「そうした行動をとる人格かどうか」ということではなく、「期間中にそうした行動がみられたかどうか」に着眼するようになったと思われます。

 結果として、「コンピテンシー」とう言葉を使わずに「行動評価」という言葉を用い、一方で(本来はコンピテンシーと意味合いがダブる)「能力評価」の領域は残されていて、かつての「業績・能力・情意」のうち「情意」の部分が「行動」に置き変わったものが、今のところ日本的スタンダードになっているような印象を受けました。

最新成果主義型人事考課シート集 .jpg 日本経団連版も労務行政版も価格的には安くはありませんが、きちんと利用すれば元は取れると思われ、個人的には、とにかく多くの企業事例を見たいのであれば日本経団連版がいいのかもしれませんが、労務行政版でも人事考課制度の傾向は掴むことが出来、実際に企業内の実務担当者やコンサルタントが人事考課制度の設計や考課者研修をする際には、労務行政版の方が参考になるのではないかと思います。

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1