「●年金・社会保険」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1700】 池内 恵介 『中小企業のための人事労務ハンドブック』
一般読者にも分かり易く書かれている一方、プロの社労士の実務にも供する。
『障害年金の受給ガイド』(2008/12 パレード)
障害年金は、福祉の手当ではなく公的年金であるため、身体障害者手帳の有無や等級とは全く関係のないものですが、その辺りからして一般にはよく理解されていなかったりもします。ところが、いざ自分自身や家族が障害者となった場合、障害者の生活を支えるという意味では福祉関連の手当よりもずっと手厚いものであるため、初めてその受給の可否が重大な焦点になってくるというのが、しばしば見られる状況ではないでしょうか。
ところが、その受給申請(裁定請求)の煩雑さ、年金・手当との選択・調整等は、とても素人の理解の及ぶところではないように思われており(帯には「役所もまちがう煩雑な障害年金」とあるが、実際そうした話はよく耳にする)、また、そうしたことについて実務レベルで書かれた本は少なく、あったとしても殆どが社労士などのプロ向けのものではないでしょうか。
本書は、障害年金について素人であっても読めるようにと、敢えて一般読者の側に立って分かり易く解説するよう配慮されており、障害年金の受給に関する殆ど全ての事柄を網羅しながらも、読者層をプロに絞り込まないように意識して書かれています。
冒頭の「本書の特徴」のところで、「障害年金に関する情報量とわかりやすさの双方を満たすという点においては、現時点で、本書より優れている本はありません」と著者自身が書いていますが、障害年金を扱っているプロの社労士の中にも、本書を、「これ1冊あればOK」ということで、社労士仲間に薦める人もいるようです。
個人的にも著者の自負するところに同感であり、解説の丁寧さもさることながら、大判であるため、申請書類の記載例などが読み易いのが、またいいです(本文の活字が大きめで、全てゴチックなのは、中高年の読者への配慮か)。
最近、所謂"心の病"による精神障害に係る障害年金の裁定請求の煩雑さが取り沙汰されることが多いですが(都道府県によって審査基準にムラがあったりする)、著者が言うように、福祉関係者は年金そのものに詳しくなく、病院の相談員でも、精神病院ならともかく総合病院の相談員は心許無い場合が多いというのは、確かにそうだろうと思われます。
実際の受給申請に際しては、必ずしも全部自分で申請手続きをやる必要も無く、プロの社労士に依頼すればいいかと思いますが、手続きの前提となる基礎知識については、本書の中の関連する部分を通読しておくとよいかと思います。
自費出版レーベルであることに、却って社会的自負と信頼感を感じる本。勿論、社労士が社労士に薦めるぐらいですから、プロの社労士が読んでも、大いに実務の参考になるかと思います。
【2012年・平成24年9月障害認定基準一部改正準拠 (Parade books)版】