【1624】 ◎ 吉田 寿 『賃金制度の教科書―働くすべての人たちを活かすために』 (2010/06 労務行政) ★★★★☆

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まさに「教科書」だが、実務にも供する。時代遅れにならず、廻り道せず、偏らないために。

賃金制度の教科書2908.JPG賃金制度の教科書.jpg 『賃金制度の教科書』(2010/06 労務行政)

 '08年に労務行政から刊行された『人事評価の教科書』に続く「教科書」シリーズの第2弾で、本書『賃金制度の教科書』の後に『等級制度の教科書』『人材育成の教科書』と続きますが、いずれも実務者を読者層として念頭に置き、かつ、「教科書」と銘打っているだけに、分かりやすく書かれているのが特徴。また、この『賃金制度の教科書』は、シリーズの中でもややページ数は多い目です(336頁)。

 企業人事に携わる人事部門のマネジャーや賃金実務を担う担当者に向けて書かれた入門書であり、賃金の基本知識や、人事制度における賃金制度の位置づけ、制度の内容、これまでの賃金制度の変遷から、これからの賃金制度のあり方までを網羅しています。

 各論においては、基本給、諸手当、賞与、退職金について各1章を割いて、戦略的人材マネジメントという観点から、その政策的あり方や近年の動向、制度設計の実際までを解説しており、入門書でありながら、そのも密度はかなり濃いものです。

 年俸制についても1章を割いて解説していますが、年俸制は、これからの時代に大いに活用価値のある賃金の決め方であると思われ、個人的には、たいへん参考になりました。

 最後に、「多様な働き方の戦略」をキーワードとして、高齢者雇用制度の設計方法から入って、ダイバーシティに対応した「トータル人材マネジメント体系」の再編を提唱して締めくくっています。

 本書の位置づけは、「初めて賃金の実務を担当する人や労使の賃金担当者が、賃金決定の理論と実務の体系を学ぶことができる入門書」とのことですが、人事の最新トレンドを捉えながらも、先走りし過ぎること無くオーソドックスであり、かつ項目上も、理念と実務の関係上も、バランス良くまとまっていると思います。

 こうした入門書を初学者が読む場合、読む本によっては書かれていることが時代遅れで、かえって廻り道になったりすることもありますが、本書に関してはその心配はなく、アップトゥデートで偏りのない、"安心感"のあるテキストです(と思ったら、帯に、「もう旧い賃金テキストは捨てましょう!」とあった。確かに)。

 人事部門のマネジャーが新任の人事担当者などに薦めやすい本だと思いますが、その前に、まず自分自身が、制度づくりの理念的な面などを、本書を通して再チェックしてみるのもいいでしょう。

 また本書では、賃金制度の設計・運用等については、実務にストレートに供するような方法論や重点ポイント、具体的な事例などが、図説等を用いてかなり突っ込んで解説されています。
 
 かなり詳しく圧縮して書かれているため、全体を教科書的に一度通読しておいて、人事部に共有の参考書として部門に置いておき、課題が生じた際に参照するなり、勉強会のテキストとして用いるなりするといった利用法も考えられるかも知れません。

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This page contains a single entry by wada published on 2011年11月26日 21:17.

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