「●労働法・就業規則」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1600】 藤原 久嗣 『ベーシック就業管理 [全訂版] ―労働時間・休日・休暇』
影響を受ける給与計算、社会保険実務まで含めて解説し、分かり易い。
『Q&Aで疑問解決!労使協定書や規定例など書式も満載!人事労務担当者の疑問に応える 平成22年施行 改正労働基準法 (フロントラインシリーズ)』(2009/12 第一法規株式会社)
平成22年施行の改正労働基準法とは、その概略だけ言えば、①月60時間超の時間外勤務の特別割増率を50%とすること、②その割増賃金の支払いに代えた「代替休暇」の付与が認められたこと、並びに、③有給休暇の時間帯付与が条件付きで認められたことで、他にも、④月45時間超60時間未満の超過勤務に対して25%+αで、労使で合意した割増率を定めなければならないというのもありますが...(これ、25%のままにしておく場合にも労使協定を結ぶ必要があることを、意外と忘れがち)。
本書は、法改正の内容や実務上の対応、労使協定の結び方や就業規則等の整備の仕方について、テーマごとにQ&A方式で解説したもので、コンパクトに、よく纏まっているように思いました(労使協定や就業規則については、事例を掲げて、更にQ&A方式で解説しているため、たいへん分かり易い)。
編著者の岩出誠弁護士が改正法の概要を解説したあと、実務上の対応や取り扱いに関しては、岩出氏が代表を務める法律事務所(ロア・ユナイテッド法律事務所)に所属する弁護士4名と社会保険労務士2名が分担して解説していて、タイトルに「人事労務担当者」とあるように、規程の整備の仕方だけでなく、給与計算・社会保険事務等の対応についても書かれているのも、本書の特徴でしょう。
例えば、「代替休暇を取得しなかった場合の割増賃金清算分が、本来は定時改定の算定対象期間に当たる場合」に、算定に算入させなくてもよいかどうかといった疑問には、社会保険労務士が回答しています(答えは「算入させなくてもよい」)。
今回の改正労基法に対する各社の対応は、事前には注目されるものでしたが、各社の対応が一段落した平成22年度末頃の時点で、「代替休暇」や「時間単位年休」を導入した企業はごく少数であったことが判明しています(適用規模の企業の5%ぐらい)。
代替休暇取得管理の労務コストからすれば予想通りの結果とも言え、穿った見方をすれば、行政の意図は「面倒なことをしなくて済むように残業を減らせ」というものだったのが、大部分の企業は、結局は「金銭的解決」の方へ流れ、行政の意図は空振りに終わったということではないでしょうか(更に言えば、どれだけ残業させても、金を払えばそれで良いという風潮を助長したとも)。
法改正時、産労総合研究所の人事専門誌「人事実務」の解説記事中に、申請により代替休暇を与えるのではなく、付与することをデフォルトとするような再改正が望まれるといった"意見"がありましたが(社会保険労務士・藤原伸吾氏)、その通りだと思います。