【1598】 ◎ 中井 智子 『「労働時間管理」の基本と実務対応 第2版 (2009/12 労務行政) ★★★★☆

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改正労基法の施行に伴って出された省令・通達をフォロー。

「労働時間管理」の基本と実務対応  第2版.jpg 『労働時間管理の基本と実務対応 第2版』(2009/12 労務行政)

 初版(2009年3月刊行)が、平成21年4月1日施行の労働基準法改正(時間外労働の割増賃金率の引き上げ、時間単位の年休制度)について一応は解説されていたものの、平成21年5月29日付の厚労省通達(基発第0529001号)が出される前の刊行であったため、さらっと触れている程度だったのに対し、第2版では、その後に出された省令や上記通達などをフォローしています。

 但し、初版の評でも書いた通り、全体としては、あくまでも「解り易さ」と「実務対応」を主眼とし、あまり個々の解説がマニアックにならないようバランスを配慮しされているため、使い易さは替わりません。
 とにかく図説が分かり易い。初版を買った人も、決して損はしていないと思いますが、今買うならこちらか。 

 しかし、月60時間超の時間外労働に対する5割の割増の内、通常の割増分を除く2割5分の割増について、労使協定に基づき代替休暇を付与できるという仕組みは、結局のところあまり導入されておらず、殆どの企業が5割増の割増賃金を支払うことで対応することにしているようです。

 もし、この仕組みを採り入れようとすると、システマティックな電子申告のシステム乃至、煩雑なヒューマンコンタクトの必要がが生じるため、大手のコンピュータのシステムやソフト関連会社では、自社用に作ったシステムが外部顧客向けの商品にもなるというメリットがあるかも知れませんが、それ以外の企業では、そうしたシステムに買い替えるのにも手間とコストがかかるし、と言って、人事部がいちいち従業員に、休暇取得の予定を確認してなんかいられないということではないでしょうか(予定だけでなく、実際に代替休暇を取得したかどうかも確認しなけらばならず、2ヵ月間の間に取得されていなければ、結局、翌月の給与で2割5分増しの割増賃金を支払わなければならない)。

 結果として、「5割増の割増賃金」を支払えば月60時間超の時間外労働をさせても構わないといった構図を作ってしまっており、今回のこの法改正は、「改悪」に思えてなりません。
 
  それにしても、細かい労基法の改正は、執筆者泣かせかも知れません(それで「商売になる」との見方もできるが)。
 法改正の内容は予め分かっているのだけれども、明文化されているのは概要のみで、実際に実務において判断に迷うような点については、施行後に省令や通達で示されるというパターンが定着したような感じもあります(最近では、従来の「指針」に該当する「Q&A」集みたいなのも多い)。

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