【1583】 × 吉田 実 『「新・ぶら下がり社員」症候群 (2011/01 東洋経済新報社) ★☆

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著者の会社に研修コンサルティングを誘引するための"宣伝本"。

「新・ぶら下がり社員」症候群.jpg 『「新・ぶら下がり社員」症候群』(2011/01 東洋経済新報社)

 結論から先に言えば、買わなくていい本だと思います。

 帯に「辞めません。でも、頑張りません。」とあります。人材育成コンサルタントである著者は、本書において、会社を辞める気はないが会社のために貢献するつもりもないという、そんな30歳前後の社員が増えているとし、彼らのことを「新・ぶらさがり社員」と呼んでいます。

 「新・ぶらさがり社員」は目的を持たず、目的がないゆえに、会社では時間を潰すことに明け暮れ、常に70%の力で仕事に取り組むとのこと。本書では、彼らのマインド低下を表すデータを紹介するとともに、こうした社員が増えているのは、①バブル崩壊の経験、②就職氷河期の試練、③成果主義の洗礼、④転職機会の喪失、⑤昇進・昇格の減少といった時代の潮流が背景要因としてあるとしていますが、このような分析は、人事パーソンであれば思い当たるフシはあると思われますし、特に目新しい指摘でもないと言えるでしょう。

 本書の後半部分は、こうした「新・ぶらさがり社員」の目の色を変えさせる処方箋は何かということが書かれていますが、ミッション・クエストに基づく著者の会社の人材育成プログラムによって、「新・ぶらさがり社員」がやる気に満ちた社員に変身するとのことです。

 その"劇的"に変化を遂げた社員の事例がいくつも紹介されていますが、ミッション・クエスト自体については、その成功のポイントは「本人の変革を心から信じて応援する」「本気になることの素晴らしさに気づかせる」「自分の中の壁を壊させる」ということだそうです。それ自体がやや抽象的であり、そこから先の育成プロセスが具体的にはほとんど書かれておらず、"変わった"という"効果"だけが強調されているように思います。

 その後にも「ぶれない自分の軸をみつけさせる」とか「型から入るのではなく、関係から入れ」といった"啓蒙的"なフレーズが続くばかりで、読んでいて、あまり内容が深化していかないように思いました。

 また、そうした育成研修は自社でもできるとしながらも、何らかのフォーマットやスケールが示されるわけではなく、最後まで「上司のひと言で部下のやる気は左右される」とか「コミュニケーションとは想像力である」といったトーンで貫かれています。

 非常に目立つ帯で、関心を引くコピーと併せてのアイ・キャッチ効果はありますが、内容的には、要するに著者の会社に研修コンサルティングを誘引するための"宣伝本"ではないか、ととられても仕方がないのではないでしょうか。

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