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人事評価の参考書であるとともに、職場マネジャーに組織・部下マネジメントに対する意識を促す内容。
『マネジャーのための人事評価実践―"査定"のための評価から"職場マネジメント"としての評価へ (SANNOマネジメントコンセプトシリーズ)』 (2009/09 産業能率大学出版部)
本書はマネジャーや人事・教育担当者向けに書かれた人事評価の参考書ですが、マネジャーには「部下を動機づけ、その能力開発を図り、恒常的に成果を創出できる職場を築いていく」使命があり、人事評価も、単に"査定"のために行うものではなく、「職場マネジメント活動の一環として実施されるべき」である、という考え方が貫かれているのが特徴です。
本書では、マネジャーが行うべき評価を、査定のための「人事評価」、部下の成長を支援する「フィードバック」、職場の成果を向上させるための「マネジメント活動の評価」の3つに大別しています。
全5章から成り、第1、2章で、「人事評価」のしくみと考え方、その運用原則や留意点などについて、基本的事項を押さえた解説がなされており、ここまでは、人事評価についての一般的な参考書と内容的に重なる部分も多いかと思われます。
第3章では、「人事評価」の実際の進め方について、第4章では、「フィードバック」の進め方について書かれていますが、ともに、マネジャー自身が自分の評価能力やフィードバック能力を向上させるにはどうしたらよいかという視点からの解説となっています。
第5章の「マネジメント活動の評価」とは、職場マネジャーが自らに対して行う自己評価をさしています。期首及び期中にそれぞれマネジャーが行うべき「マネジメント活動の評価」について解説されていて、具体的には、「職場ミッションを部下と共有したか」「進捗管理はできていたか」などのチェックポイントが掲げられています。
本書が前提としている、職場マネジメントが機能していない状態で実施される人事評価は、部下にとってもマネジャーにとっても決してよいものにはならず、優れた人事評価は優れたマネジメントなくしてあり得ないという趣旨はまさにその通りであり、それにはまず、マネジャー自身に、自らの職場マネジメントの課題への気づきを促すことが肝要でしょう。
本書は、全体としては人事評価の参考書の体裁をとりながら(評価のためのガイドブックとしての要件を満たしながら)、中盤から後半にいくほど、評価者である職場マネジャー自身の部下指導のあり方や、職場マネジメント全般に対するセルフチェックを促すものとなっているわけですが、確かにそれらは、評価テクニック以上に重要なことなのだろうなあと思わされました。
全体を通して分かり易い言葉で書かれており、評価シーズンを前に、職場マネジャーが査定のための参考書として読めば、本人の評価能力やフィードバック能力の向上に繋がるとともに、マネジャーとしての組織・部下マネジメントに対する意識も高まるという、相乗効果の期待できる本であると思います。