【1572】 △ 松本 順市 『「即戦力」に頼る会社は必ずダメになる (2009/09 幻冬舎新書) ★★★

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内容は尤もだが、タイトルずれしている。総花的、且つ啓蒙的な、コンサル誘引のための本。

『「即戦力」に頼る会社は必ずダメになる』.jpg「即戦力」に頼る会社は必ずダメになる.bmp   上司はなぜ部下が辞めるまで気づかないのか?.jpg
「即戦力」に頼る会社は必ずダメになる (幻冬舎新書)』['09年]/『上司はなぜ部下が辞めるまで気づかないのか?』['08年]

 タイトルから、採用のあり方に関する本かと思いましたが、その部分について触れられているのは僅かで、むしろ社員の処遇のあり方、人材育成のあり方について主に書かれており、企業の組織風土改革にまで話は及んでいます。

 第1章で、巨人軍など野球選手の年俸の決定の仕組みを、大企業のサラリーマンの賃金決定のそれになぞらえ、給料と売上げの"カラクリ"を解説していますが、もともと労働者性の希薄なプロ野球選手の話を持ち出すこと自体にやや無理があるように感じました。

 第2章では、歩合給の会社がダメな理由を説いていますが、ここでも損益計算書などを持ち出してやや回りくどく、第3章では「ノルマ」「競争」「残業」の害悪を説いていて、ああ、「成果主義」批判が論旨なのだなあとようやく判ってきたのですが、その間に転職回数の多い人は生涯賃金が必ずしも高くないとか、一般サラリーマン向けの話も挿入されていて、この部分が「即戦力」に関する話なのかと思われましたが、読者ターゲットが見えにくい面も。

 後半、第4章は、企業内で「教えあう」風土を作ることの大切さを説き、最後の第5章は、組織内で「稼ぐ力」をつけるにはどうすればいいかという、一般サラリーマンに向けた啓蒙的な話になっています。

 非常に分かり易く書かれているし、書かれていることはどれも尤もなのですが、啓蒙レベルに止まっている感じで、テクニカルな面での新味はあまり感じられませんでした。

 著者の前著『上司はなぜ部下が辞めるまで気づかないのか?』('08年/ナナ・コーポレート・コミュニケーション)も、リテンション(人材引き止め)について書かれたものと言うより、部下のモチベーションをどうやって維持するかという話であり、こう"タイトルずれ"が続くと、編集者ばかりでなく、著者の側にも責任があるように思えてきます。

 Eメールがもたらしたコミュニケーションの弊害など、部分的には共感できる箇所もありましたが、全体として、管理職や人事部のヒトが読むには物足りない内容ではないかと思います。

 総花的、且つ(具体性に欠けるという意味で)啓蒙的で、細かい施策については「弊社にご相談を」みたいな、コンサル誘引のための著者の講演会を聴いているような、そんな本でした。

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