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フランス風に味付け。原作の展開を押さえた上で観ると、「改変の妙」が楽しめる。
若い女性が浜辺で殺され、遺体のそばには"ABCバス"の時刻表があった。ラロジエール警視(アントワーヌ・デュレリ)と部下のランピオン刑事(マリウス・ コルッチ)が捜査に乗り出すが、ラロジエール警視のもとには実は犯行声明文が届いていた。そして、更なる殺人の予告状が...。一方、殺人が起きるごとに、その地の付近に絹の靴下のセールスをしている男(ニ・ラヴァン)が現れるが、彼は、かつて戦争で負傷し、頭に鉄片が入ったままであるため、強い頭痛に悩まされていた―。
アガサ・クリスティの『ABC殺人事件』のフランスのTV版で(2009年にFrance2で放映)、他にも何本かクリスティ作品のフランス版が作られていますが(同時期に4本制作、好評につきもう4本の追加制作が決定)、何れも舞台はフランスであり、名探偵ポワロとヘイスティングス大尉のコンビに代わって、シリーズを通して、フランス警察のラロジエール警視とランピオン刑事の上司・部下コンビが活躍します。
ラロジエール警視は、ポアロとはキャラクター造型が幾分異なっており、このフランス版「ABC殺人事件」では、ラロジエール警視の前に"やり手"の警部が現れて彼の地位を脅かし、ランピオン刑事さえも事件解決の糸口を見出せないでいる警視を見捨てて"やり手"の側につこうとしたため、プライドを傷つけられたラロジエール警視の方は荒れまくり、酔って管を巻く―といった、ポアロのキャラだったら考えられないような場面があります。
ラロジエールもランピオンも人間臭いと言えば人間臭いのですが、ランピオンが"やり手"刑事に身体まで提供してしまうというのはちょっと...(フランスはイギリスより同性愛者が多いのか)。
映像上の"掟破り"に近いカットがありますが、原作がそもそも若干アンフェアな要素(叙述トリック)を含んでいるため(それでいて傑作)許せるとして、展開そのものが、原作を微妙に改変したものになっています。
では面白くないかと言うと、原作を知っている人には"より面白く"感じられるよう工夫がされており、「ABC鉄道」ではなく「ABCバス」になっているといったトリビアな改変点はさておき、何番目かの殺人の「被害者の弟」が現れて、いよいよ例のドンデン返しかと思いきや、更に予期せぬ展開に―。
ここまで来るとある種"パロディ"ですが(第4の殺人の被害者が意外というか、ややご都合主義的なところも含め)、話のテンポは軽快で、これまで不幸だった男に幸せがもたらされるというハッピーエンドも用意されており、全体を通して振り返っても、随所にライトな味付けされていたように思います(これがフランス風なのか)。
単独で観ても楽しめますが、原作の展開を押さえた上で観ると、「改変の妙」が楽しめる作品となっています。
「クリスティのフレンチ・ミステリー(第1話)/ABC殺人事件」●原題:LES PETITS MEURTRES D'AGATHA CHRISTIE/LES MEURTRES ABC●制作年:2008年●本国放映:2009年1月9日●制作国:フランス●監督:エリック・ウォレット●出演:アントワーヌ・デュレリ/マリウス・ コルッチ/ドニ・ラヴァン/ベランジェール・ボンヴォワザン/ジャン=フランソワ・ガレオ●原作:アガサ・ クリスティ●日本放映:2010/09●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)
「クリスティのフレンチ・ミステリー」 Les Petits Meurtres d'Agatha Christie(仏France2 2009~2012)[全11作]○日本での放映チャネル:AXNミステリー(2010~2012)