【1500】 ○ レオ・ペン 「刑事コロンボ(第19話)/別れのワイン」 (73年/米) (1974/06 NHK) ★★★★ (○ ジェームズ・フローリー 「刑事コロンボ(第41話)/死者のメッセージ」 (77年/米) (1978/04 NHK) ★★★★)

「●TV-M (刑事コロンボ)」の インデックッスへ Prev|NEXT⇒ 【1925】「刑事コロンボ/意識の下の映像 
「●TV-M (名探偵モンク)」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●海外のTVドラマシリーズ」の インデックッスへ(「名探偵モンク」)

「刑事というのは因果な商売で」。

刑事コロンボ   別れのワイン.jpg別れのワイン vhs.jpg 別れのワイン dvd.jpg 刑事コロンボ/死者のメッセージ 第41話.jpg
特選「刑事コロンボ」完全版~別れのワイン~【日本語吹替版】 [VHS]」「刑事コロンボ 完全版 Vol.10 [DVD]」「刑事コロンボ 完全版 Vol.21 [DVD]

刑事コロンボ/別れのワイン 1.bmpANY OLD PORT IN A STORM 1.jpg ワイナリー経営者エイドリアン・カッシーニ(ドナルド・プレザンス)のもとへ、腹違いの弟でワイナリーのオーナー(父親からの相続人)であるリック(ゲイリー・コンウェイ)がやって来て、金が要るのでワイナリーを売却すると言う。ワイナリーに人生を捧げてきたエイドリアンは、そんなことはさせないとリックと口論になり彼の後頭部を一撃、床に倒れ意識を失ったリックをワイン貯蔵庫に運び、ロープで手足を縛って、空調装置のスイッチをオフにした。やがてリックは窒息死するはずである―。

ANY OLD PORT IN A STORM.bmp 「刑事コロンボ」シリーズ第19話で、シリーズの中でも傑作との呼び声が高い作品ですが、犯行が衝動的なものであるため、犯行後の犯人のアリバイ工作が咄嗟にしてはそれなりに冷静に練られたものではあるものの、コロンボの手に掛かれば穴が多いものにならざるを得なかったような...。では、なぜこの作品の評価が高いかというと、ワイン通である犯人が、常人では判別できないワインの劣化を言い当てることで、自らが犯人であることの疑いを強めてしまうといったストーリーの旨さもさることながら、やはり多くのファンが指摘するように、捜査の進展とともに犯人とコロンボの関係がワインを通して深まっていくところにあるのでしょう。

ANY OLD PORT IN A STORM.jpg別れのワイン ラスト.jpg ラストも、第1シーズンによく見られた意外なネタ明かしと突然のエンディングという終わり方ではなく、コロンボが観念した犯人を乗せた愛車プジョーを犯人のワイナリーの前に止めて、自分が選んでおいたワインを取り出し(この頃にはコロンボも勉強の甲斐あってすっかりワイン通になっている)、車中で犯人と杯を交えるという余韻を残したものとなっています。
 
エデンの東ポスター.jpgジュリー・ハリス4.jpg別れのワイン2.jpg 映画「大脱走」('63年/米)の名脇役ドナルド・プレザンス(1919‐1995/享年75)(「007は二度死ぬ」('67年/英)での犯罪組織スペクターの首領役などもあった)が演じた犯人は、ワインのプロであると同時に、ある意味"ワイン・オタク"であり、必ずしも人好きがするタイプではありませんが、犯行には過失致死的要素もあり、何となく同情を引きます。コロンボの検証は状況証拠によるもので、犯人側からすれば反駁の余地もありそうなものですが、自分のワイナリーのワインがダメになってしまったショックや、「エデンの東」のジュリー・ハリス(1925‐2013/享年87)演じる女性秘書に秘密を握られ、関係を迫られていたりしたこともあって、むしろ解放されたような気分で自首を受け容れます。

 「刑事というのは因果な商売で」というのはコロンボが容疑者に対して細かい質問をする際の常套句ですが、こうした状況においても犯人を挙げなければならないというのが、本当のところ一番の「因果」な点かもしれません。

名探偵モンク 悲恋.jpg それで思い出したのが、「刑事コロンボ」と同じく「ホームズ型」のドラマで、潔癖症の元刑事エイドリアン・モンクが活躍する「名探偵モンク」の第7シーズン(日本放映では第6部)第6話「悲恋」(通算・第99話)でした。
 
 タクシー運転手が殺された事件で、遺留品のブレスレットから故国の難民支援で働く女性レイラ(ジョアンナ・パクラ)が容疑者として浮かび上がりますが、モンク(トニー・シャルーブ)は亡妻トゥルーディに似たその女性に一目惚れし、根拠なく彼女は犯人ではないと主張、彼女とモンクの間にはいったんは恋愛感情を帯びた信頼関係が構築されますが、それまで犯行を否認していた彼女が、突然、自分が犯人だと言い出します。

 実は、殺されたタクシー運転手は、彼女の故国で多くの民を殺害したかつての独裁者で、彼を殺したのは、たまたまその男が運転するタクシーに乗り合わせてそのことに気付いた彼女の母親、彼女は母親を守るために偽証したわけですが、そのことに気付いたモンクによって母親は逮捕され事件は解決。但し、母親を検挙した男と共に居ることは考えられず、彼女はモンクのもとを去っていくという、コメディタッチのシリーズには珍しく「やや重」の結末となっています。

 前のシーズンで一旦打ち切りが決まった後で再開されたシーズンということで、ややこれまでと違った毛色の作品もあったりするのか。どんなに同情すべき背後事情があろうと、「犯人を挙げる」のが仕事であるという刑事(乃至探偵)という仕事の「因果な」性質において、「別れのワイン」に通じるものがありました。

 因みに、ピーター・フォークは「刑事コロンボ」でエミー賞ドラマ部門の主演男優賞を3回受賞していますが、トニー・シャルーブも「名探偵モンク」でコメディ部門の主演男優賞を3回受賞しています(2003年、2005年、2006年)。

刑事コロンボ(第41話)/死者のメッセージ7.jpg刑事コロンボ/死者のメッセージ .jpg なお、刑事コロンボのシリーズ作中、この第19話「別れのワイン」と同じく、犯人が被害者を密室に閉じ込めて窒息死させるという殺害方法の刑事コロンボ(第41話)/死者のメッセージes.jpgものに、第41話「死者のメッセージ」があります。70歳を超えた今も第一線で活躍するアビゲイル・ミッチェルという人気女流ミステリ作家が、「ヨット事故で亡くなった姪」の夫エドモンドを殺害したもので、ミステリ作家としての鋭い勘で姪がエドモンドが姪を殺害したと推理したアビゲイル・ミッチェルが、その復讐を果たすというもの(アビゲイル・ミッチェル役のルース・ゴードンはシリーズ最高齢の犯人役を演じたことになり、自身、本作制作時には80歳を超えていた)。こちらで被害者が閉じ込められるのは、ワインセラーではなく金庫室です。

刑事コロンボ(第41話)/死者のメッセージ 8.jpg このエピソードの中で、コロンボがアビゲイル・ミッチェルの講演会に顔を出したところいきなり振られてスピーチをすることになり、その中で「時には殺人犯を尊敬し、好意を抱くこともある」と述べていますが、これはまさにアビゲイル・ミッチェルを指しているともとれます。アビゲイル・ミッチェルもそのことを察してか、コロンボに自らの犯行を突き詰められた際に、自分は年寄りだから見逃してくれないかと懇願しますが、コロンボは、「あなたもプロなら私もプロなのでそれは出来ない」と言います。この辺りも、「別れのワイン」や名探偵モンクの「悲恋」に通じるものがあるように思いました。作品の雰囲気はいいのですが、被害者のダイイング・メッセージが見つからない可能性が高いよう思われ(或いは逆にコロンボより先に犯人が見つけてしまう可能性もあるため)、個人的評価はその分やや引いて星3つ半としました。

The Best Columbo Episodes (Original Series: 1968-1978) Music: Johnny Cash - "Sunday Mornin' Comin' Down" (from the episode: Swan Song)

刑事コロンボ 別れのワイン.jpg刑事コロンボ/別れのワイン 2.bmp「刑事コロンボ(第19話)/別れのワイン」●原題:ANY OLD PORT IN A STORM●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:レオ・ペン●製作:ロバート・F・オニール●脚本:スタンリー・ラルフ・ロス●ストーリー監修:ジャクソン・ギリス●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:95分●出演:ピーター・フォーク/ドナルド・プレザンス/ジュリー・ハリス/ジョイス・ジルソン/ゲイリANY OLD PORT IN A STORM2.jpgANY OLD PORT IN A STORM1.jpgー・コンウェイ/ダナ・エルカー/ロバート・エレンスティーン/リジス・コーディック/ヴィト・スコッティ/モンテ・ランディス/リード・スミス/ロバート・ウォーデン/モンテ・ランディス/マイケル・ラリー●日本公開:1974/06●放送:NHK(評価:★★★★)

ドナルド・プレザンス/ヴィト・スコッティ/ジュリー・ハリス
   
刑事コロンボ 完全版2.jpg刑事コロンボ完全版 DVD-SET 2 【ユニバーサルTVシリーズ スペシャル・プライス】
Disc6 (11) 悪の温室:約74分 (12) アリバイのダイヤル:約74分
Disc7 (13) ロンドンの傘:約97分 (14) 偶像のレクイエム:約74分
Disc8 (15) 溶ける糸:約73分 (16) 断たれた音:約74分
Disc9 (17) 二つの顔:約74分 (18) 毒のある花:約73分
Disc10 (19) 別れのワイン:約95分 (20) 野望の果て:約98分
Disc11 (21) 意識の下の映像:約73分 (22) 第三の終章:約74分
     

名探偵MONK シーズン7.jpgMr. Monk FALLS IN LOVE.jpg「名探偵モンク(第99話)/悲恋」(Season 7 | Episode 6)●原題:MR. MONK FALLS IN LOVE●制作年:2008年●制作国:アメリカ●本国放映:2008/08/22●監督:アーリーン・サンフォード●脚本:ジョッシュ・シーガル/ディラン・モーガン●時間:41分●出演:トニー・シャルーブ/トレイラー・ハワード/テッド・レヴィン/ジェイソン・グレイ=スタンフォード/(ゲスト)ジョアンナ・パクラ/ジェイムス・ゴメス/クリスティーナ・アナパウ●日本放映:2009/05/11●放送:NHK-BS2(評価:★★★★)
名探偵MONK シーズン7 DVD-BOX」(2012年リリース)

刑事コロンボ(第41話)/死者のメッセージ2.jpg「刑事コロンボ(第41話)/死者のメッセージ」●原題:TRY AND CATCH ME●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督:ジェームズ・フ死者のメッセージド.jpgローリー●製作:リチャード・アラン・シモンズ●脚本:ジーン・トンプソン/ポール・タッカホー●原案:ジーン・トンプソン●撮影:デッド・ヴォイトランダー●音楽:パトリック・ウィリアムズ●時間:73分●出演:ピーター・フォーク/ルース・ゴードン/マリエット・ハートレイ/G・D・スプラドリン/チャールズ・フランク●日本公開:1978/04●放送:NHK(評価:★★★☆)

ピーター・フォーク/ルース・ゴードン

刑事コロンボ完全版 DVD-SET 4 【ユニバーサルTVシリーズ スペシャル・プライス】
刑事コロンボ4.jpg(35)闘牛士の栄光:約74分
(36)魔術師の幻想:約89分
(37)さらば提督:約96分
(38)ルーサン警部の犯罪:約73分
(39)黄金のバックル:約76分
(40)殺しの序曲:約73分
(41)死者のメッセージ:約73分
(42)美食の報酬:約73分
(43)秒読みの殺人:約98分
(45)策謀の結末:約97分
          
名探偵モンク1.jpg名探偵モンク2.jpg「名探偵モンク」 Monk (USA Network 2002 ~2009/12) (2004/03~2010/07 NHK BS2/ミステリチャンネル)

1 Comment

ジュリー・ハリス 2013年8月24日、マサチューセッツ州にて病のために死去。87歳。日本では偶然にも彼女の死の前日の2013年8月23日にBSジャパンで代表作『エデンの東』が放映されていた。

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1