【1466】 ○ 三島 由紀夫 『潮騒』 (1954/06 新潮社) ★★★☆ (△ 森永 健次郎 「潮騒」 (1964/04 日活) ★★☆/△ 西河 克己 「潮騒」 (1975/04 東宝) ★★☆)

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日本的な風土を背景にギリシャ神話的な世界を再現? 5回の映画化。次は―。

潮騒 昭和29 新潮社.jpg潮騒 昭和29 新潮社2.jpg 潮騒 新潮文庫.jpg 潮騒 1964 dvd.jpg 潮騒 1964年 吉永.jpg
潮騒 (1954年)』『潮騒 (新潮文庫)』「潮騒(新潮文庫連動DVD)」「潮騒」1964年/日活(吉永小百合・浜田光夫)

新潮文庫 潮騒.jpg 三島由紀夫が1954(昭和29)年6月に発表した書き下ろし作品で、最初に読んだ時は、三島作品にありがちな翳のようなものが殆ど無い、あまりに純朴な漁師と海女の恋の物語にやや違和感を覚えましたが、後に、三島がこの作品の発表の数年前のヨーロッパ旅行の際にエーゲ海やアドリア海を旅していること、古代ギリシャの散文作品『ダフニスとクロエ』に着想を得ていることなどを知り、ナルホドという感じがしました。

新潮文庫[旧装幀/カバー版(絵:中島清之)]

三重県の神島.jpg 風光明媚な「歌島」の華麗な描写もさることながら(三重県の神島がモデル、三島は当作品発表の前年に2回―おそらく取材のため―旅している)、日本的な家族の繋がりや民俗的風習、青年団などの地域コミュニティのようなものも描かれていて、日潮騒 新潮文庫3.png潮騒 (1954年) 0_.jpg本的なものとギリシャ的なものの融合を目指したのか、或いは、日本的な風土を背景にしても、三島の力量をもってすれば、そこにギリシャ神話的な世界の再現は可能であることを示してみせたのか。

潮騒 (1954年)

Mishima_Yukio.JPG 「ギリシャ的」と言えば、"女性の健康美とエロス"、"男性の鍛えられた逞しい肉体"などといった付随するイメージがありますが、三島がボディビルを始めたのはこの作品発表の後ぐらいからで、当時はまだ三島自身は"文弱の徒"であり、この健康美礼讃ともとれる作品に評論家もやや戸惑ったのかすぐには反応しなかったものの(ぴんとこなかった?)、巷には好評でたちまちベストセラーとなり(結果的に第1回「新潮社文学賞」受賞作にもなった)、同年に映画化もされ10月に公開されました(素早い!)。

三島30歳(1955年秋、自宅の庭にて)

 それを含め、昭和の時代を通して映画化された回数が5回というのは、三島作品の中で最多であり、川端康成の『伊豆の踊子』の映画化回数6回に迫ります(戦後に限れば5回ずつで同回数)。
 
 因みに、映画された「伊豆の踊子」の制作年・制作会社と監督・主演は、
  1933(昭和8)年 松竹・五所平之助 監督/田中絹代・大日方伝
  1954(昭和29)年 松竹・野村芳太郎 監督/美空ひばり・石浜朗
  1960(昭和35)年 松竹・川頭義郎 監督/鰐淵晴子・津川雅彦
  1963(昭和38)年 日活・西河克己 監督/吉永小百合・高橋英樹
  1967(昭和42)年 東宝・恩地日出夫 監督/内藤洋子・黒沢年男
  1974(昭和49)年 東宝・西河克己 監督/山口百恵・三浦友和
 
潮騒 1964 日活.bmp 一方、映画された「潮騒」の制作年・制作会社と監督・主演は、
  1954(昭和29)年 東宝・谷口千吉 監督/青山京子・久保明
  1964(昭和39)年 日活・森永健次郎 監督/吉永小百合・浜田光夫
  1971(昭和46)年 東宝・森谷司郎 監督/小野里みどり・朝比奈逸人
  1975(昭和50)年 東宝・西河克己 監督/山口百恵・三浦友和
  1985(昭和60)年 東宝・小谷承靖 監督/堀ちえみ・鶴見辰吾 

となっており、戦後だけでみると同じ5回であり、女優では吉永小百合と山口百恵が両方に出ています(2人とも「伊豆の踊子」の翌年に「潮騒」に出ている)。また、「潮騒」は何れの作品も神島でロケが行われており、これは、三島のこの原作における島の描写が極めて精緻かつ正確であることも関係しているのではないかと思います。

「潮騒」.bmp 潮騒 1964 vhs.jpg

 映画化作品「潮騒」のうち、映画館できっちり観たのは'64年の吉永小百合版(森永健次郎監督)ですが、日活がアクション映画路線から青春映画路線に舵を切った初期の段階で作られた作品。当時19歳の吉永小百合は明るく娘々していて、三島は彼女に「生活のかがやきにみちた美しさ」を見たとか(個人的には、映画そのものが原作のイメージと随分雰囲気が異なる気がしたのだが、作品ではなく女優を褒めた三島の本心はどうだったのか)。

潮騒 1975年 山口 dvd.jpg 確かにこの作品の吉永小百合は、田舎娘らしい親近感はありますが、これは'75年の山口百恵(映画出演時は16歳)にも言えることですが、ちょっと「海女」には見えないのが難点です。

 原作では、主人公の若い2人が裸で炎を挟んで対峙するところの描写にたいへん力が込められているように思えましたが(かと言って、三島文学にありがちな修飾過剰には陥っていない)、映画でのこの場面では、当然のことながら国民的スター・吉永小百合は絶対脱がないし、その後の映画化作品では、アイドルを使ってそこをどう撮るかが監督の腕の見せどころになってしまっているような感じがしなくもありません。時代感覚の違いもあるのかもしれませんが、この'64年版森永監督作品(吉永小百合版)ではその部分は成功しているようには思えないし、'75年版西河克己作品(山口百恵版)になるともう、アイドル映画であるということが前提になっているという感じ。 

●森谷司郎監督 1971年日活版(小野里みどり・朝比奈逸人主演)
潮騒 小野里みどり・朝比奈逸人.jpg潮騒 1971.jpg 三島自決の翌年に主役2人を一般公募して作られた'71年版森谷司郎監督作品(小野里みどり・朝比奈逸人主演)がこの場面を割と大胆に撮っているようですが未見、'75年の山口百恵版は、あの程度の肌の露出で激怒したファンもいたとのことですから、何だかヌードを撮ってはいけない作品みたいになっているようです(アイドル路線の中でリメイクされるのが要因か)。堀ちえみ・鶴見辰吾版潮騒.jpg'85年の堀ちえみ・鶴見辰吾版以来、四半世紀以上再映画化されていませんが、仮に、今後また映画化されることがあったらどうなるのでしょう。

 
●小谷承靖監督 1985年東宝版 (堀ちえみ・鶴見辰吾主演)
 
●森永健次郎監督 1964年日活版 (吉永小百合・浜田光夫主演)
潮騒 吉永小百合.jpg「潮騒」●制作年:1964年●監督:森永健次郎●製作:日活●脚本:棚田吾郎/須藤勝人●撮影:松橋梅夫●音楽:中林淳誠●原作:三島由紀夫「潮騒」●時潮騒('64).jpg間:82分●出演:浜田光夫/吉永小百合/石山健二郎/清川虹子/清水将夫/原恵子/鴨田喜由/松尾嘉代/平田大三郎/菅井一郎/前野霜一郎/衣笠真寿男/榎木兵衛/高橋とよ/清水将夫●公開:1964/04●配給:日活●最初に観た場所:池袋・文芸地下(85-01-19)(評価:★★☆)●併映:「伊豆の踊子」(西河克己)

●西河克己監督 1975年東宝版 (山口百恵・三浦友和主演)
潮騒 山口百恵 VHS.jpg山口百恵  潮騒.jpg山口百恵 潮騒.jpg潮騒  山口百恵.jpg「潮騒」●制作年:1975年●監督:西河克己●製作:東宝●脚本:須崎勝弥●撮影:萩原憲治●音楽:穂口雄右●原作:三島由紀夫「潮騒」●時間:93分●出演:宮田初江:山口百恵/三浦友和/初井言栄/亀田秀紀/中村竹弥/有島一郎/津島恵子/中川三穂子/花沢徳衛/青木義朗/中島久之/川口厚/丹下キヨ子/高山千草/田中春男/森みどり/石坂浩二(ナレーター)●公開:1975/04●配給:東宝(評価:★★☆)
                                          
【1954年文庫化[新潮文庫]】

      
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