【1403】 ○ アーサー・コナン・ドイル (日暮雅通:訳) 『緋色の研究―新訳シャーロック・ホームズ全集』 (2006/07 光文社文庫) 《 (延原 謙:訳) 『緋色の研究 (1953/05 新潮文庫)》 ★★★☆

「●と コナン・ドイル」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1407】 コナン・ドイル 『四つの署名
「○海外サスペンス・読み物 【発表・刊行順】」の インデックッスへ

シリーズの最初の作品。格調高い新潮文庫版に対し、読みやすい光文社文庫の新訳版。

緋色の研究 新潮文庫.jpg 緋色の研究 創元推理文庫.jpg 緋色の研究 (ハヤカワ・ミステリ文庫 75-5.jpg 緋色の研究 光文社文庫.jpg 緋色の習作 (河出文庫―シャーロック・ホームズ全集).jpg
緋色の研究 (新潮文庫)』『緋色の研究 (創元推理文庫)』『緋色の研究 (ハヤカワ・ミステリ文庫 75-5)』(カバー:真鍋博)『緋色の研究 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)』 『緋色の習作 (河出文庫―シャーロック・ホームズ全集)
緋色の研究 1887年初版.jpgArthur Conan Doyle.jpg アーサー・コナン・ドイル(Arthur Conan Doyle、1859-1930)によるシャーロック・ホームズ・シリーズの最初の作品で、1886年に執筆され、翌1887年に発表されたもの(原題:A Study in Scarlet)。

『緋色の研究』1887年初版 Arthur Conan Doyle

 2部構成で、第1部は、ワトスンがホームズと出会って共同生活を始めるまでの経緯と、そこへ「血痕の飛び散った空き家の一室で死体が発見されたが、外傷が全く見られない」という奇怪な殺人事件が持ち込まれ、ホームズがその事件の犯人をつきとめるまでを、第2部では、事件の背景となった宗教と恋愛が絡んだ過去の出来事の経緯を、犯人自身が告白するという形式です。

 ワトスンがホームズと初めて会って、最初は奇妙な奴だなあと思っていたのが、次第に彼に興味を覚え(握手しただけでワトスンがアフガン帰りだと言い当てた)、その卓越した推理能力に圧倒されるようになるまでがコンパクトに描かれています。

The Mormon trek, recreated on Southport sands.jpg 19世紀のアメリカでのモルモン教の歴史が絡んだ、第2部の犯人の告白は結構「重たい」話であり、彼がどう裁かれるのかと思ったら実は重大な病気を抱えていて―というのは、その後のミステリでもよくあるパターンで、でも、これがホームズ・シリーズの後期に書かれたものだったら、ホームズの対処の仕方も少し違ったものになったかも知れないなあと。

The Mormon trek, recreated on Southport sands

 一方で、事件の背後関係を実はホームズは独自に調査して知っていたとか、"後出しジャンケン"みたいなのはこの頃からあって、光文社文庫の巻末にエッセイを寄せている赤川次郎氏も、「もしコナン・ドイルが現代のミステリの新人賞にでも応募していたら、とても入選できなかっただろう」と書いています。

 シャーロック・ホームズ・シリーズ(全集)は、文庫では、新潮文庫版(延原謙訳)、ハヤカワ文庫版(大久保康雄訳)、創元推理文庫版(阿部知二訳)、ちくま文庫版(訳者多数)があり、今世紀に入ってちくま文庫版が絶版になった代わりに光文社文庫版(日暮雅通訳)が刊行されていて、また文庫以外では、河出書房版(小林司・東山あかね訳)のハードカバー全集があります(『緋色の研究』の創元推理文庫版については、来月(2010年11月)深町眞理子氏の新訳版が刊行予定)。

 シャーロッキアンと呼ばれる人々の間では、典雅な訳調の新潮文庫版が"正典"とされているようですが、短編集の一部が本来とは別編集になっていたり、挿絵が無かったりと、一般読者からすれば不満要素もあります。

緋色の習作.jpg シャーロッキアン2人が訳した河出書房のハードカバー版(小林司氏は日本シャーロック・ホームズ・クラブ主宰。先月(2010年9月27日)81歳にて逝去された)が、最も詳細(マニアック?)に解説されていて(本作のタイトルを『緋色の習作』としているのも"こだわり"の1つか)、挿画も発表当初のものを多く載せていますが、「入手しにくい・高い・重い」といった難点があります。

 こうして見ると、光文社文庫版は、「注釈」が河出書房版ほどではないにしても充実していて、挿画もかなり多く収められています。
 個人訳でもあるし、訳文がこなれていて読み易いという点でもいいのではないかと(ホームズ・シリーズって、こんなにすらすら読めたっけ、という感じ)。

 因みに、『緋色の研究』の挿画は、よく知られているシドニー・パジェットのものではなく、この頃はジョージ・ハッチンスンのものです(ホームズのイメージ、微妙に違うなあ)。

 自分がかつて読んだのは新潮文庫版でしたが、これを機に光文社文庫版で他の作品も読んでみようかという気になりました。

ピンク色の研究 dvd.jpgピンク色の研究 04.jpg「SHERLOCK(シャーロック)(第1話)/ピンク色の研究」 (10年/英) ★★★★ ベネディクト・カンバーバッチ主演

 【1953年文庫化[新潮文庫(延原謙:訳)]/1959年文庫化[角川文庫(阿部知二:訳)]/1960年文庫化・2006年改版版[創元推理文庫(阿部知二:訳)]/1977年再文庫化[講談社文庫(鮎川信夫:訳)]/1983年再文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(大久保康雄:訳)]/1997年再文庫化[ちくま文庫(小池滋:訳『緋色の研究・まだらの紐―詳注版シャーロック・ホームズ全集〈2〉』)]/2006年再文庫化[光文社文庫(日暮雅通:訳)]/2010年再文庫化[創元推理文庫(深町眞理子:訳)]/2012年再文庫化[角川文庫(駒月雅子:訳)]/2014年再文庫化[河出文庫(小林 司/東山あかね:訳)『緋色の習作―シャーロック・ホームズ全集1』)]】 

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1