【1405】 ○ アーサー・コナン・ドイル (日暮雅通:訳) 『バスカヴィル家の犬―新訳シャーロック・ホームズ全集』 (2007/07 光文社文庫) 《 (延原 謙:訳) 『バスカヴィル家の犬 (1954/05 新潮文庫)》 ★★★☆

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ミステリとしてはやや冗長だが、怪異的雰囲気は出ている。ストーリー提供者との共作だった?

1バスカヴィル家の犬.pngバスカヴィル家の犬 新潮文庫旧版.jpg バスカヴィル家の犬 新潮文庫.jpg バスカヴィル家の犬 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 75‐7).jpg バスカヴィル家の犬 光文社文庫.jpg
バスカヴィル家の犬 (新潮文庫)』['54年](旧・新)『バスカヴィル家の犬 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 75‐7))』『バスカヴィル家の犬―新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)』['07年]
『バスカヴィル家の犬』['60年](創元推理文庫旧装版)(カバー:松田正久)

バスカヴィル家の犬 S・バシェット画.jpg デヴォンシャーの名家バスカヴィル家の当主、チャールズ卿が怪死を遂げた。ベーカー街を訪れた医師モーティマーの依頼によって、チャールズ卿の死に関する調査とバスカヴィル家の新たな当主となったヘンリー卿護衛のため、多忙のホームズに代わりワトスンが、依頼人と共にデヴォンシャーへと向かう。彼を待ち受けていたのは独特の雰囲気に包まれた沼沢地帯と、そこに暮らすいずれも一癖ある隣人たち、そして今なおその地の人々の胸に現実の恐怖として生き続ける、バスカヴィルにまつわる魔犬伝説だった―。

 1901年にコナン・ドイルが発表した、ホームズ物語の4つの長編中最長の作品であり、また、1893年の「最後の事件」以降8年ぶりのホームズ復活、但し、時代背景は「最後の事件」以前のこととされています。

シドニー・パジェット画/ホームズとワトスン

ダートムア.jpg 『緋色の研究』、『四つの書名』、そして、本作の後に書かれた『恐怖の谷』の3つの長編は何れも2部構成になっていますが、この『バスカヴィル家の犬』は、前半ワトスンの手紙乃至報告文が中心で、後半がワトスンのリアルタイムでの語りのようになっているものの、明確に2部に分かれてはいません。

 ホームズが1本のステッキから持ち主のプロフィールを推察する導入部分は有名で、ストーリーもそう複雑ではなく、「魔犬」という特異なモチーフでもあるため、ホームズ物語の中でも印象に残るものでした。

 日本シャーロック・ホームズ・クラブという組織が1979年と1992年に実施した、シリーズ60作品を対象としたベストテン投票でも、共に1位になっている作品ですが、ただ、今回再読して、ストーリーがそう複雑でない割には少し長いかなあとも感じました。
 
 一部のミステリ通によれば、ヘンリー卿の靴が無くなった時点で事件の仕掛けが分ってしまい、ロジック上も幾つか穴がある("ご都合主義"が見受けられる)とのことですが、個人的にはそれほど気にならず、後半の早々に犯人が明かされてしまうのも、自分のような、いつも最後の最後まで誰が犯人かが読みとれない読者には、ある意味、丁度いいくらいの感じです。

 まあ、この「長さ」の部分は、この作品の舞台である西イングランド地方のダートムアの叙景に費やされていたりして(ダートムアはその名の通り草原湿地帯で、今は国立公園に指定されているが、夜歩きに適さない土地であることは確か)、それはそれで、作品全体を覆う怪異的雰囲気を醸すのに寄与していると言えるのではないでしょうか。

The hound of the Baskervilles.jpg 光文社文庫版は、初版時のシドニー・パジェットの挿画が30点掲載されていて(新潮文庫版は挿画無し)、当時の時代の雰囲気や登場人物の風貌が分かりやすいです。

 また、作家の島田荘司氏が解説を書いており、ドイルの旧知でありファンでもあったバートラム・ロビンソンの「ダートムア物語」というのが、この作品の背景及びモチーフに大きく寄与しているという話をたいへん興味深く読みました。

 島田氏は、『バスカヴィル家の犬』はコナン・ドイルとバートラム・ロビンソンとの共作のようなものであるとしているようですが、翻訳者の日暮雅通氏によれば、ロビンソンのこの作品への関与の度合いについては諸説あるようです。

シドニー・パジェット画

バスカヴィル家の獣犬01.jpgバスカヴィル家の獣犬 dvd.jpgThe Hound of the Baskervilles (2002).jpg 「シャーロック・ホームズ/バスカヴィル家の獣犬」 (02年/英) ★★★★
  
sherlock バスカヴィルの犬 07.jpgsherlock バスカヴィルの犬 01.jpg 「SHERLOCK(シャーロック)(第5話)/バスカヴィルの犬(ハウンド)」 (11年/英) ★★★

 【1954年文庫化[新潮文庫(延原 謙:訳)]/1960年文庫化[創元推理文庫(阿部知二:訳)]/1980年再文庫化[講談社文庫(鮎川信夫:訳『バスカビル家の犬』)]/1984年再文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(大久保康雄:訳)]/1997年再文庫化[ちくま文庫(小池 滋:訳『四つの署名バスカヴィル家の犬 (河出文庫).jpg・バスカヴィル家の犬―詳注版シャーロック・ホームズ全集〈5〉』)]/2004年再文庫化[講談社文庫(大沢在昌:訳『バスカビル家の犬』)]/2007年再文庫化[光文社文庫(日暮雅通:訳)]/2014年再文庫化[河出文庫(小林 司/東山あかね:訳)『バスカヴィル家の犬―シャーロック・ホームズ全集5』]】 

バスカヴィル家の犬 (河出文庫)』['14年]

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