【1393】 ◎ アガサ・クリスティ (松本恵子:訳) 『アクロイド殺し』 (1955/10 ハヤカワ・ミステリ) ★★★★☆ (○ アンドリュー・グリーブ 「名探偵ポワロ(第46話)/アクロイド殺人事件」 (00年/英) (2000/12 NHK) ★★★☆)

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"禁じ手"にこだわるかどうかは別として、ポアロ推理の真骨頂を堪能できる作品。

「アクロイド殺し」雄鶏社 1950年刊.jpgアクロイド殺し ハヤカワミステリ.jpg アクロイド殺害事件 創元推理2004.jpg アクロイド殺し クリスティー文庫.jpg アクロイド殺し クリスティー文庫2.jpg アクロイド殺人事件8.jpg
アクロイド殺し (1950年) (おんどりみすてりい)』(松本恵子:訳)雄鶏社『アクロイド殺し (1955年) Hayakawa Pocket Mystery 224』『アクロイド殺害事件 (創元推理文庫)』( 大久保康雄:訳) 『アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)』(羽田詩津子:訳)「名探偵ポワロ[完全版]Vol.28 [DVD]
『アクロイド殺害事件』1974 講談社文庫(原百代:訳)・1975 創元推理文庫(大久保康雄:訳)
1974 『アクロイド殺害事件』.jpg1975 『アクロイド殺害事件』.jpgアクロイド殺しhc.bmp 村の名士ロジャー・アクロイドが短刀で刺殺されるという事件が起きるが、容疑者であるアクロイドの義子ラルフ・ペイトンは姿をくらまし、事件は迷宮入りの様相を呈す。アクロイドの主治医シェパードはこうした状況を手記にまとめ、事件の謎を解決しようとする一方、アクロイドの義妹セシルの娘で、ラルフの婚約者であるフローラは、村に越して来たばかりの変人がポワロであることを知って、犯人の捜査を依頼する―。

The Murder of Roger Ackroyd.jpg 1926年に発表されたアガサ・クリスティの長編推理小説で(原題" The Murder of Roger Ackroyd")、クリスティの6作目の長編で、エルキュール・ポワロ・シリーズでは3作目ですが、シリーズの中でも傑作とされており、クリスティの全作品を通しても、作者自身がマイベスト10に選んでいて、日本の「クリスティー・ファンクラブ」の会員アンケートでもベスト10に入っている作品です。因みに両方でベスト10入りしているのは「そして誰もいなくなった」「オリエント急行の殺人」「予告殺人」「ゼロ時間へ」とこの作品の5つです。個人的にも傑作だと思います。

"The Murder of Roger Ackroyd" 初版カバー復刻版(HarperCollins Publishers、2006)

 この作品の評価で最も議論になるのが、小説の形式そのものにトリックがあることで、これは読者に対しての所謂"禁じ手"ではないかということですが、確かに全く引っ掛かりを覚えないかと言うとそうではないものの、推理小説としての構成が素晴らしいので、やはり高評価に値するように思います。

アクロイド殺し 英国Fontana版 1960.jpgアクロイド殺し 1963.jpgアクロイド殺し1983.bmp 多くの主要登場人物のすべてを容疑者とし、実際にそれぞれに被害者殺害の機会があったことを読者にも示しながら、緻密且つ論理的に検証していくとただ1人の犯人に必然的に行きつくという、ポワロ推理の真骨頂を堪能できる作品ではないでしょうか。シリーズの前作同様に「一人称小説」でありながら、それが「手記」でもあったというところで、そう言えばそれまであまり追及を受けていない者が...とは思ってはしまうものの、自分のような推理音痴にはこれぐらいがちょうどいい? 長編でありながらも無駄のない構成で、それでいて、"ミス・マープルの原型"とされるシェパード医師の妻キャロラインの事件への"首突っ込みたがり屋"ぶりが可笑しかったりもしました。一方、この作品の最後の方のポワロはちょっと怖いかもね。

英国・Fontana版 (1960/1963/1983) 

アクロイド殺人事件01.jpg 英国LWT制作デヴィッド・スーシェ主演の「名探偵ポワロ」シリーズで、第46話(本国放映2000年)として映像化されていますが(ロング・バージョン)、叙述トリックの部分をどう描くかという点は工夫されていたように思います(ポワロが片田舎の村で畑仕事に精を出しているという冒頭部分は原作と同じたが、映像化作品では彼は既に第一線を退いたことになっている)。

アクロイド殺人事件02.jpg 結果的に映像化作品の方は、「映像のウソ」を回避するために(叙述トリックの形をとらず)普通の推理小説のスタイルに戻しつつも、手記の存在は、誰がそれを書いたのか終盤まで観る者には分からないという形をとることで生かすという(誰がそれを書いたのか推理することはそう難しくないか?)、原作の"風味"を無くさないための工夫がされており、それは成功しているように思います。但し、原作の最大のポイントが(その是非はともかく)叙述トリックにあるとするならば、若干もの足りないものにならざるを得ないのは仕方がないか。

 ラストの犯人とポアロ並びに警部の追走劇はTV向けの改変であり、それまでにも登場人物の設定に一部改変がありますが、プロット的には概ね原作通りだったのではないでしょうか。

アクロイド殺人事件48.jpg「名探偵ポワロ(第46話)/アクロイド殺人事件」●原題:AGAHTA CHRISTIE'S POIROT SEASON7: THE MURDER OF ROGER ACKROYD●制作年:1999年●制作国:イギリス●本国放映:2000/01/02●監督:アンドリュー・グリーブ●脚本:クライブ・エクストン●時間:103分●出演:デビッド・スーシェ(ポワiアクロイド殺人事件03G.jpgロ) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部)/マルコム・テリス(ロジャー・アクロイド)/オリバー・フォード・デイヴィーズ(ジェームズ・シェパード医師)/セリーナ・カデル(キャロライン・シェパード)/ロジャー・フロスト(パーカー)/マルコム・テリス(ロジャー・アクロイド)/ナイジェル・クーク(ジェフリー・レイモンド)/デイジーバーモント(アーシュラ・ボーン)/フロラ・モンゴメリー(フロラ・アクロイド)●日本放映:2000/12/30●放映局:NHK(評価:★★★☆)

アクロイド殺人事件 (新潮文庫)』(中村能三:訳)['58年]/『アクロイド殺し (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-45)』(田村隆一:訳)['79年]表紙イラスト:真鍋 博 
アクロイド殺人事件 新潮文庫.jpg『アクロイド殺し』真鍋 博 表紙.jpg 【1955年新書化[ハヤカワ・ポケットミステリ(松本恵子:訳『アクロイド殺し』)]/1957年文庫化[角川文庫(松本恵子:訳『アクロイド殺人事件』)/1958年再文庫化・1987年改版[新潮文庫(中村能三:訳『アクロイド殺人事件』)/1959年再文庫化・1975年・2004年改版[創元推理文庫(大久保康雄:訳『アクロイド殺害事件』)/1974年再文庫化[講談社文庫(原百代:訳『アクロイド殺害事件』)]/1979年再文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(田村隆一:訳『アクロイド殺し』)]/1998年再文庫化[偕成社文庫(茅野美ど里:訳『アクロイド殺人事件』)]/1998年再文庫化[集英社文庫(雨沢泰:訳『アクロイド殺人事件―乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10(6)』)]/2003年再文庫化[ハヤカワ・クリスティー文庫(羽田詩津子:訳『アクロイド殺し』)]/2004年再文庫化[嶋中文庫(河野一郎:訳『アクロイド殺害事件』)]/2005年再文庫化[講談社青い鳥文庫(花上かつみ:訳『アクロイド氏殺害事件』)]】

    
                 [Kindle版] (松本恵子:訳)復刻版



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