【1355】 ○ 有栖川 有栖 『女王国の城 (2007/09 東京創元社) ★★★☆

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長かった割には物足りない結末。でも、過程において楽しめたからまあいいか。

有栖川 有栖 『女王国の城』.jpg女王国の城.jpg  太陽公園2.JPG 太陽公園(姫路)
女王国の城 (創元クライム・クラブ)』['07年]

 2007 (平成19) 年度「週刊文春ミステリー ベスト10」(国内部門)第1位。2008(平成20)年版「本格ミステリ・ベストテン」第1位。2008(平成20)年・第8回「本格ミステリ大賞」〈小説部門〉受賞作。

 推理小説研究会のメンバー・有栖川有栖(アリス)は、急成長した宗教団体「人類協会」の聖地・神倉へ行ったと思しき部長・江神二郎の様子を知るべく、同級生の有馬麻里亜(マリア)、就職活動中の先輩・望月、織田らと共に同地へ向かい、〈城〉と呼ばれる総本部で江神の安否を確認するものの、思いがけず殺人事件に遭遇、団体に外界との接触を阻まれ、囚われの身となってしまう―。

 『月光ゲーム』『孤島パズル』『双頭の悪魔』に続く15年ぶりの江神二郎シリーズですが、推理小説研究会のメンバーは皆1歳年齢を重ねただけで依然若々しく、単行本2段組500ページ超の大作でありながらも、メンバー達の会話のトーンも、時々挟まれる推理小説談義も変わってないなあと(今回はそれに加えてUFO談義があり、第1の殺人事件が起きるのは全体の3分の1を過ぎてからというのは、ちょっと道草のし過ぎ?)。

 宗教団体とは上手く考えたもので、かなり自由な発想で大掛かりな密室的空間を創り出していて、この宗教団体の幹部らが60年代のSF映画に出てくる異星人のようなパターン化された物言いや行動様式をとるのはご愛嬌として、本格推理としてはそれなりにワクワクさせてくれました。

 但し、立ちはだかる連続殺人事件の不可解な壁を江神二郎がどう崩すかという部分では、独創に満ちたトリックがあるわけでもなく、やや拍子抜けの感じもあり、ついでに過去の未解決の密室殺人事件の謎まで解いてみせるものの、こちらはあまりにも蓋然性を積み重ねた上での謎解きとなっていて、江上さん、あんたには透視能力があるの、と言いたくなってしまいます。

太陽公園.JPG 「本格ミステリ大賞」の受賞と併せて「週刊文春」の「2007ミステリーベスト10」の国内部門第1位にも輝いており、それにこの分厚さだから、それなりの結末を期待したんだけどなあ(後で考えれば御都合主義的なところも目立つ)。
 しかしながら、謎解きの前までは、アクションもあったりし、寄り道も含めて楽しめたし(ということは90%は楽しめたということ?)、個人的評価としては微妙なところですが、まあ、良しとしようか、といったところです。 

 (この小説の「城」に関しては、個人的には、兵庫県姫路市の山中にある「太陽公園」の城を連想した。ここは、社会福祉法人が運営する公園で、園内には、主に美術館的に使われている城のほか、兵馬俑やパリ凱旋門の実物大の模倣建築などがある。観光施設でありながらも、介護福祉施設なども園内にあったりして、ある種コミュニティ的な雰囲気を醸しており、詰まるところ全体の雰囲気は「宗教施設」に極めて近いように思えた。)

「太陽公園」の"城"(上写真下部は城に至るモノレールの軌道の一部)

 【2011年文庫化[創元推理文庫(上・下)]】

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This page contains a single entry by wada published on 2010年7月31日 23:00.

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