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分かり易い解説で甦ったハッブル宇宙望遠鏡の宇宙遺産を伝える。新書スペースをフルに使った写真が美しい。
『カラー版 ハッブル望遠鏡の宇宙遺産 (岩波新書)』['04年]
『カラー版ハッブル望遠鏡 宇宙の謎に挑む (講談社現代新書)』['09年]
サイエンスライターの野本氏は、多くの著書でハッブル宇宙望遠鏡の成果を我々に紹介していますが、新たに著者が出されると、写真の美しさをあって、ついついまた買ってしまいます。但し、そこには、ハッブル望遠鏡から送られてきた、前著には無かった新しい写真が掲載されているので、宇宙学についての分かり易い解説を、そうした最新の写真を楽しみながら復習できるというメリットがあり、買って後悔することはまずありません。
本書は、講談社現代新書としては珍しい(?)カラー版で、同氏の『カラー版 ハッブル望遠鏡の宇宙遺産』('04年/岩波新書)と内容的にかぶるのではないかとも思ったのですが、読んでみて、或いは写真を見て、今回も期待を裏切るものではありませんでした。
「星の誕生と死」などについての著者の解説は、いつもながらに分かり易いものですが、そう言えば、'09年1月6日にNASAが、オリオン座のベテルギウス(木星の軌道よりも巨大な赤色超巨星)に超新星爆発へ向かうと見られる兆候が観測されたと発表したばかりです。
ベテルギウスの表面[NASA・パリ天文台提供]と位置(オリオン座の左上の星)[沼沢茂美氏撮影]
さすがにそのことまでは載っていないものの、入門書としての解説と併せて、岩波新書の前著から5年間の間の新たな研究成果がふんだんに織り込まれていて、著者が毎回丹念に書き下ろしているということが窺えます。
老朽化しつつあるハッブル宇宙望遠鏡について、NASAが、国際宇宙ステーションの軌道外にハッブル宇宙望遠鏡があることから、予算難に加えて宇宙飛行士の安全を確保出来ないことを理由に修理見送りの決定を下したため、著者が前著で、"人類遺産"の対語として命名された"宇宙遺産"だが、ハッブル宇宙望遠鏡そのものの"遺産"ということになってしまうのかと嘆いていたのを覚えています。
それが、宇宙に関心を寄せる多くの一般ピープルの要望で、NASAの決定が覆り、'09年5月に新たなサービスミッションによる補修作業が行われ、以前より性能はアップし、また、後継の宇宙望遠鏡である"ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)"の打ち上げ計画('13年予定)も着々と進んでいるいうのは、たいへん喜ばしいし、楽しみなことだと思います。 エリダヌス座エプシロン星の惑星(イラスト)
本書は特に、新書版のスペースをフルに使った写真が美しく、個人的には、銀河同士の衝突の写真(銀河団同士の衝突を捉えたものもある)に特に関心がそそられ、今世紀に入り発見数が著しく伸びている系外惑星の写真や想像イメージ(イラスト)にも、ロマンを掻き立てられました。
衝突する銀河 (本書より)