【1302】 ○ 谷口 義明 『カラー版 宇宙を読む (2006/07 中公新書) ★★★☆

「●宇宙学」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1309】 吉田 伸夫 『宇宙に果てはあるか
「●中公新書」の インデックッスへ

電磁波についての解説が詳しい。「天文学」も宇宙論の話に行き着くのかなあと。

宇宙を読む.jpg 『カラー版 宇宙を読む (中公新書)』 ['06年]

 著者が天文学者であるため、まえがきで「天文」の語源の説明("空の文様")から入り、著者なりに、それを「天からの文(ふみ)」と解しているのはロマンチックですが、カラー版と言っても内容的には、文章をしっかり読ませる中公新書らしい"かっちり"したもので、中級者向けの入門書と言えるのではないでしょうか

 肉眼で見える星について、太陽、月、惑星、星(恒星)、星団、星座、星雲、銀河、流星、彗星、新星(超新星)の順に概説した上で、星が放つ光は、赤外線や紫外線など、全ての波長帯の電磁波に及ぶため、可視光線だけではなく、それらをも読み解くことが、宇宙の謎に迫ることに繋がるとしています(電磁波についての解説と併せて、「エックス線宇宙天文台」や「赤外線宇宙天文台」といったものも写真で紹介されている)。

 その上で改めて、太陽から始まって惑星、星(恒星)、星雲、銀河等について、天体物理学的な視点も織り交ぜながら解説し、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた様々な天体写真も併せて掲載しています。

 最終章で、宇宙の歴史について、星や惑星がどのように誕生したかというところから始めて、最後にビッグバンについての解説や、ダークマター、ダークエネルギーの話が出てくるといった流れで、一般的な「宇宙学」の入門書と解説の順番が少し異なる(近くから遠くへ、近い過去から遠い過去へ)のが興味深いですが、結局は「天文学」も宇宙論の話に行き着くのかなあと。

 宇宙や天体から送られてくる放射線のスペクトル分析など電磁波についての解説が詳しく、この部分が"中級者向け"と言えばそういうことになるのかも。
 天文学者って今はこうした研究(目に見えない電磁波の分析)を主にしているのかと認識を新たにさせられ、また「宇宙を読む」という本書のタイトルの意味を改めて理解しましたが、本書については「宇宙学」の一般的な入門書の内容も一通り網羅しているように思いました。

 カラー写真の点数は多いのですが、基本的には文章の解説を補足するものとなっています。
 それぞれがやや小さく、結果として情報量としては"詰まった"内容となっているのですが、ビジュアルを楽しみたいと思った読者には、やや物足りないかも。

About this Entry

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1