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日本語の曖昧さ、適当さを認識させられるクイズ集。「本」として読むと、やや軽い。
『ふしぎ日本語ゼミナール (生活人新書)』 ['06年]
本の大部分がクイズ形式になっていますが、普通の日本語のクイズ本と異なり、その大部分に"正解"が無いのがミソです。
気軽に読める本ですが、自分の知識を試すつもりで手にした読者が、日本語の曖昧さを考えさせられ、或いは、著者の言う"適当さ"を認識させれるようになっていると言う点では、戦略的と言えば戦略的な本かも知れません。
切符にある「大人・小人」の「小人」をどう読むか、著者は、読めなくていい、意味がわかればいいのだと。「1日おき」と「24時間おき」の違いなんて、「1日=24時間」と考えれば、確かに整合しない感じもしますが、数を「かたまり」で捉えるか「長さ」で捉えるか、無意識的に識別しているわけです。「1日いて帰った」は、人によって、日帰りで帰ったのと泊って帰ったのに印象が分かれるそうですが、人よりむしろ状況によるのではないかと。
著者があとがきで書いていますが、クイズのように選択肢で答えられるものは知識の領域であって、本を調べればすぐわかると。「本当に面白いと思えることは、日常の中で使われていて、誰も困らず、誰も不思議に思っていないような言葉の中に、考えてもわからなくなるような謎を見つけ出すこと」であると。
本書は、「NHK日本語なるほど塾」のテキストや、NHK教育テレビの「日本語なるほど塾」(擬音語・擬態語研究者の山口仲美氏なども出演していた時期があった)の「言葉探偵」のコーナーをもとに再編集したもので、体裁がクイズ本なので、普通に「本」として読むと、やはりやや軽いかも(あっさりし過ぎ)。
元々よくテレビに出演していた著者ですが、最近は、クイズ番組の回答者としての出演することも多いようです。回答に詰まって苦しい表情をみせたりしていますが、根っこの部分では、そんなこと知らなくても恥ずかしいことではないと思っているのかも(そう思ってでもいないと、大学の先生でクイズ番組などには出られないか)。