【1278】 ○ 金田一 秀穂 『新しい日本語の予習法 (2003/04 角川oneテーマ21) ★★★★

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エッセイ風にさらっと読めるが、著者のエッセンスが詰まっていた本。

新しい日本語の予習法.jpg新しい日本語の予習法2.jpg  金田一 秀穂.jpg 金田一秀穂 氏
新しい日本語の予習法 (角川oneテーマ21)』['03年]

 「日本」を「外国人」に教えるという日本語教師という仕事を通して、日本人であることを捨ててはならないが、「日本人的なものの見方」だけでなく、海外と日本の中間の視点も持たざるを得なくなった著者が、そうした観点から、「日本人の日本語の使い方」を書いたもの。

 しばらくぶりの再読ですが、面白いことが結構書かれていたなあと。著者の初めての"単著"だったとのことですが、その後に著者が書いた日本語に関する本(クイズ本的なものも含め)のエッセンスが本書に詰まっていたのだと再認識しました(エッセイ風にさらっと読めてしまう分、忘れていることも多かった)。

 第1部「正しい日本語?」第1章の「いろいろな日本語」に、最近の若者の言葉の乱れを書いていますが、基本的には寛容というか、著者自身が面白がっているようなところもあるものの、「アケオメ、コトヨロ」(明けましておめでとう。今年もよろしく)みたいな携帯メール言葉に出くわすと、さすがに「面白がってばかりいられなくて、少しは苦言を呈したくなってくる」と。

 第2章の「気持ちのいい日本語」で、「伸ばしあうアメリカ人・補いあう日本人」というのがあり、グループが協力的な態勢を作るに際して、アメリカ人は「お互いのいい点を発揮しあおう」、日本人は「お互いの足らない点を補いあっていきたい」と言うことが多いそうで、認め合うのが長所なのか短所なのかという日米対比が興味深いです。

 第2部「人見知りの文化」は、会話(おしゃべり)のスタイルについて書かれていますが、さらに比較文化論的な要素が強くなり、「道をきかない日本人」とかは確かにそうだなあと(著者が常に自分自身を振り返って「自分もそうだが」と言っているため、なんとなく親近感がある)。

 「ひとつの話題で盛り上がれるのは、参加者が五人までだという」のも、ナルホドそうだなあという感じで、「レストランでの注文の仕方」の日本人とアメリカ人の違いの話も、確かにそうだなあと納得、著者がアメリカでサンドイッチを注文しようとして、どういうパンを使って何を入れるか店の人にいろいろ聞かれ難渋した話も面白かったです(レストランの入り口にある料理見本は、日本独自のものらしい)。

 "単著デビュー"が「角川oneテーマ21」であるのは、親父さん(金田一春彦)の著作がこの新書に収められているヨシミなのかも知れませんが、自分で自分がこう本を出すのも、親の七光り、十四光り(祖父まで含め)によるものと思われると言っている、この腰の低さが、テレビ番組などでの好感度にも繋がっているのではないかと。

 若い頃は、高校に馴染めず、修学旅行や卒業式は欠席し、大学でもあまり勉強せず、海外放浪に出て、それが今の日本語教師の仕事に繋がっているようですが、研究論文は書いていないそうで、アカデミズムの本流と違うところにいるのは、やはり"七光り、十四光り"の重圧の反作用かな?
 
 でも、日本語の面白さをテレビ等を使って広く伝えるというやり方は、ある意味では、論文など書いているよりも影響力があるかも。
 結局は、親父さんと同じように、日本語から日本文化論・日本人論へといくのだろうなあ、この人は。

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