【1243】 ○ 志村 史夫 『アインシュタイン丸かじり―新書で入門』 (2007/03 新潮新書) ★★★★

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文系出身の社会人が通勤電車内で楽しく(苦なく?)読み切れる内容。

アインシュタイン丸かじり.jpg 『アインシュタイン丸かじり―新書で入門 (新潮新書)』['07年] 志村史夫.jpg 志村 史夫 氏 (略歴下記)

 アインシュタインの業績や相対性理論に関する入門書で、「文系出身の社会人が通勤電車内で楽しく(苦なく?)読み切れる」内容とでも言ったらいいのでしょうか、新書(「新潮新書」)の性格を反映した大変読み易いものとなっています(著者は「ブルーバックス」の常連執筆者だったと思うが)。

 内容面の特徴として、アインシュタインの発表した理論のうち、特殊相対性理論と一般相対性理論の解説に各1章を割くのと併せて、光の粒子説を中心とした他の業績にも1章を割いていることが挙げられます。
 それらを挟んで、前段で、アインシュタインの業績がいかに凄いものであったのか、彼の"天才ぶり"、その偉業の"奇跡ぶり"を解り易く説くと共に、「アインシュタイン以前」をおさらいし、後段では「時空の歪み」という解りにくい概念を今一度解説するとと共に、最後にアインシュタインの言葉を紹介し、その発想の原点や思想を伝えています(盛りだくさん!)。

 文系でも読み易いと言いましたが、数式を使わないというわけではなく、一般相対論の理論式など一応は登場し、ローレンツ変換とかも出てきます。
 但し、それらを必ずしも解らなくてもいいとして、読者を追い詰める(?)ことなく、合間に適度にアインシュタインの"人となり"を伝える話やその他の学者やノーベル賞などに纏わる科学史上のエピソードが織り込まれていて、「読み物」的感覚で読み進めることができます。
 この辺りの、ちょっと脇道に行って(ムダ話をしているのではない)「閑話休題」として本筋に戻ってくるタイミングが絶妙。

 著者自身が、相対性理論を理解するうえで、どこで引っ掛かったか、それをどのような発想の転換で乗り越えたかなどが書かれている点も、親近感を覚えると共に、ああ、ここが一般の人と物理学者の思考方法の分岐点だなあと思わせるものがありました。

 紙数の関係上、結果的に、一般相対性理論の解説などがやや浅くなってしまったことは否めませんが、「最初に読む1冊」乃至「久しぶりに復習してみる1冊」としては、その要件を満たした好著だと思います。
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志村史夫(しむら・ふみお)
1948(昭和23)年東京・駒込生まれ。名古屋工業大学大学院修士課程修了。名古屋大学工学博士(応用物理)。2007年現在、静岡理工科大学教授、ノースカロライナ州立大学併任教授。『こわくない物理学』など著書多数。2002(平成14)年、日本工学教育協会賞・著作賞受賞。

《読書MEMO》
●章立て
第1章 アインシュタインは偉い
 「奇跡の年」から一〇〇年/二〇世紀のコペルニクス/週刊誌のトップ記事にも/日本との因縁/ハイテクの父/世紀の人
第2章 「アインシュタイン以前」をおさらい
 自然の理解/自然哲学の誕生/物質の構造/物体の運動/運動の相対性/空間とは何か/時間とは何か/光とは何か/ニュートンと光/重力とは何か/驚異の年
第3章 「奇跡の年」の奇跡ぶり
 不遇の時代/五篇の論文/光電効果/電気と磁気/マクスウェルの電磁理論/電磁波と光/生活に欠かせない電磁波/プランクの量子仮説/光の謎を解明/ハイテクを支える光量子
第4章 これで「特殊相対性理論」がわかる
 特殊相対性効果/原型は一六歳の空想/不思議な光/光速不変の原理/時間が遅れる/空間が縮む/光速より速いものはない/質量が増大する/同時性の否定/先人の無念
第5章 世界一有名な方程式E=mc2の誕生
 エネルギーはどこへ?/わずか三ページの革命/エネルギーから物質が生まれる/物質に潜む巨大なエネルギー/日常生活への応用
第6章 時空の歪みとは何か
 一般相対性理論/重力の源は「空間の曲がり」/「空間の曲がり」とは?/光が曲がった/ノーベル賞受賞の裏側
第7章 想像力は知識よりも重要である―アインシュタイン名言集
 タゴールとの対話/「才能」と「学問」について/「自然」「宇宙」「神」について/「科学」と「芸術」について/「人生」について

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