【1239】 × 田沢 竜次 『東京名画座グラフィティ (2006/09 平凡社新書) ★★

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資料的なものを期待した分、期待外れになってしまった。

東京名画座グラフィティ.jpg  文芸坐.jpg 文芸坐 三鷹オスカー予定表.jpg 五反田TOEIシネマ 2.jpg
東京名画座グラフィティ (平凡社新書)』['06年]

東京名画座グラフィティ4.jpg 1953年生まれの著者が青春時代に巡った都内及びその近郊の映画館の思い出を綴ったもので、名画座の衰退、シネマ・コンプレックスの台頭著しい今日、貴重な1冊となるのかと思って読み始めましたが、どちらかと言うと著者の思い入れが先行していて、渋谷、池袋、新宿、銀座・日比谷...と街ごとには章分けされてはいるものの、資料的なグラフィティと言うよりエッセイに近い感じ。

 懐かしい映画館が次々に登場し、ああ、池袋の旧「文芸坐」や銀座の「並木座」、飯田橋の「佳作座」や高田馬場の「パール座」...etc みんな無くなってしまったなあと感慨をそそる面はありますが、主にそこでアレを観たコレを観たと言うことを中心に書かれていて、映画館1つ1つの歴史については記述が乏しく、同時期に都内の名画座を巡った団塊の世代には懐かしいかも知れませんが、後から来た世代には、いつごろまでその映画館があっていつ無くなったかということがよくわかりません。

由が丘武蔵野館5.jpg 著者がB級グルメライターでもあるためか、近所にどういう食べ物屋があったとかそういうことは書かれていますが、個人的にはそうしたことに割く紙数をむしろ各映画館の歴史の方に割いて欲しかった気がします(そういうことを書きたくなる気持ちがわからなくもないが)。

 「自由が丘武蔵野館」はかつて「自由が丘武蔵野推理」という名称だったことは書いてありますが、それを言うなら「中野武蔵野ホール」は「中野武蔵野館」だったし、「三鷹オスカー」は「三鷹東映」、「三軒茶屋中央劇場」はもともとあった「三軒茶屋映画劇場」の分館で「三軒茶屋映劇」の方が本家、著者の地元である渋谷の「東急ジャーナル」は「渋谷東急3」になる前は「東急レックス」だった...。その時代に本当にそこに通いつめていれば、絶対に忘れることのない名前だと思うのですが。

 個人の記憶と記録にのみ頼って書いている感じで、抜け落ちも結構あるような印象を持ちながら読んでいたら、あとがきで「漏れていました」みたいな感じで、「五反田東映シネマ」とか出てくる...(これも「五反田東映」という封切館に併設されていた3本立名画座(洋画館)「五反田TOEIシネマ」というのが正しい表記ではないだろうか)。

 最初からエッセイとして読めば良かったのかも知れませんが、資料的なものを期待した分、期待外れになってしまいました。

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