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会話形式の例文に職場や飲み屋での会話のような親しみ易さ、昔のTVドラマ風のレトロ感。
『故事ことわざ辞典―現代に生きる』 「特装版」('83年)
辞典を読む趣味も無いし、実際に読み通した辞典など殆ど無いのですが、本書は、日々、電車の社内で読み継いで、最後まで読み通した数少ない辞典の1つ(自分が持ち歩いて読んだのは同じくコンパクトサイズの「特装版」('83年))。
故事成語の出典が分り易く明記されている、類似する英語のことわざ・慣用句を英文で併記してある、付録として世界の名言・名句が自己、青春、友情などのテーマごとに纏められているなど幾つかの特長がありますが、何と言っても最大の特長は、会話形式による例文で、これがなかなか面白い、と言うか、まあ凡庸なのだけれど、ついつい読んでしまう...(1つ1つが結構長文であるため、約450ページにして収録されている故事ことわざ・慣用句は3千600項とやや少なめか)。
例えば、「いかもの喰い」に付された会話文は―、
「あなたのボーイフレンド、見栄えがしないわね。あんな人とつきあうなんて、あなたも相当ないかもの食いね」
「あら、なんてこと言うの? 人は見かけじゃないわよ。彼の善さは俗人にはわからないのよ」
「嬶(かかあ)天下」には―、
「おまえ、結婚したらつきあいが悪くなったぞ。今晩、一杯ぐらいつきあえよ」
「勘弁してくれよ。おれが外で飲んで帰ると女房の機嫌が悪くてね。おれのところは嬶天下の家系なのかな。うちのおやじもおふくろに頭が上がらなかったよ」
「情けは人の為ならず」には―、
「十年も前の話だが、彼がひどく困っていたんで、就職の世話をしたことがあるんだ。そしたら、わたしが定年退職した今でも、なにかとよくしてくれるよ」
「情けは人の為ならずと言いますが、必ず自分に返ってくるものですね」
中国故事成語の方は、原典の読み下しや故事の由来に行数を割いているため、どちらかというと日本のことわざや慣用句にこの手の会話文が多く付されているのですが、職場や飲み屋での会話のようなものが多くて親しみ易く、また、昔のテレビドラマの脚本を読んでいるみたいなレトロ感もあったりします。
しかし、会話文を考える側の方は大変だったろうなあ(結構、楽しんで"創作"していたのかも知れないが)。