2009年9月 Archives

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自分が今、この時空に生きていることの不思議さ、有難さに思いを馳せることが出来る本。

人類が生まれるための12の偶然.jpg  『人類が生まれるための12の偶然 (岩波ジュニア新書 626)』 ['09年]

 「人類が生まれるためにはどのぐらいの偶然の要素が重なったのか」というテーマは自分としても関心事でしたが、宇宙誌、生物誌(生命誌・進化誌)に関する本の中で個々にそうしたことは触れられていることは多いものの、それらを通して考察した本はあまり無く、そうした意味では待望の本でした。

 宇宙の誕生から始まり、量子物理学的な話が冒頭に来ますが、「ジュニア新書」ということで、大変解り易く書かれていて、しかも、宇宙誌と生物誌の間に地球誌があり、更に、生命の誕生・進化にとりわけ大きな役割を果たした「水」についても解説されています(水の比熱が小さいこと、固体状態(氷)の方が液体状態(水)より軽いということ、等々が生命の誕生・進化に影響している)。

 本書で抽出されている「12の偶然」の中には、「太陽から地球までの距離が適切なものだったこと」など、今まで聞いたことのある話もありましたが、「木星、土星という2つの巨大惑星があったこと」など、知らなかったことの方が多かったです(巨大惑星が1つでも3つでもダメだったとのこと)。

 その他にも、太陽の寿命は90億年で現在46億歳、終末は膨張して地球を呑みこむ(蒸発させる)とうことはよく知られていますが、太陽が外に放出する光度のエネルギーが増え続けるため、あと10億年後には地球は灼熱地獄になり、すべての生物は生きられなくなるというのは、初めて知りました。

 最後に、気候変動の危機を説いていますが、環境問題を考える際によく言われる「地球に優しく」などいう表現に対して、人類が仮に核戦争などで死に絶えたとしても、生き残った生物が進化して新たな生態系が生まれることは、過去の恐竜が隕石衝突により(その可能性が高いとされている)絶滅したお陰で哺乳類が進化発展を遂げた経緯を見てもわかることであり、「私たちや今の生態系が滅びないために」と言うべきであると。

 ナルホド、「宇宙は偶然こうなった」のか、「神が今のような姿にすべて決めた」のか「何らかのメカニズムによって必然的にこうなった」のかは永遠の謎ではあるかも知れませんが、仮に地球が生命を求めているとしても、地球にとって人類の替わりはいくらでもいるわけだなあ。

 監修の松井孝典博士は、日本における惑星科学の先駆者で、幅広い視野と斬新な発想を兼ね備えた、日本では珍しいタイプの研究者であるとのこと(田近英一著(『凍った地球』('09年/新潮選書)によると)。
 最新の研究成果までも織り込まれた本であると同時に(しかし、まだ解っていないことも多い)、自分が今、この時空に生きていることの不思議さ、有難さに思いを馳せることが出来る本です。

《読書MEMO》
偶然1 宇宙を決定する「自然定数」が、現在の値になったこと(自然定数=重力、電磁気力、中性子や陽子の質量)
偶然2 太陽の大きさが大きすぎなかったこと (太陽がもし今の2倍に質量だと寿命は約15億年しかない)
偶然3 太陽から地球までの距離が適切なものだったこと (現在の85%だと海は蒸発、120%だと凍結)
偶然4 木星、土星という2つの巨大惑星があったこと (1つだと地球に落下する隕石は1000倍、3つだと地球は太陽に落下するか太陽系の圏外に放り出される)
偶然5 月という衛星が地球のそばを回っていたこと (月が無ければ地球の自転は早まり、1日は8時間、1年中強風が吹き荒れる)
偶然6 地球が適度な大きさであったこと (火星ほどの大きさだと大気は逃げていた)
偶然7 二酸化炭素を必要に応じて減らす仕組みがあったこと (プレート移動や大陸の誕生、海などがCO2を削減)
偶然8 地磁気が存在したこと (磁場が宇宙線や太陽風などの放射線を防ぐ働きをしている)
偶然9 オゾン層が存在していたこと (紫外線から生物を守っている)
偶然10 地球に豊富な液体の水が存在したこと (水が液体でいられる0〜100℃という狭い温度範囲に地球環境があったこと)
偶然11 生物の大絶滅が起きたこと (恐竜の繁栄もその後の哺乳類の繁栄も、その前にいた生物の大絶滅のお陰)
偶然12 定住と農業を始める時期に、温暖で安定した気候となったこと (65万年前から寒冷期が続いたのは、約1万年前に突然、今のように温暖安定化)

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 「素直」に「深く」読む。ジュニアに限らず大人が読んでも再発見のある本。

心と響き合う読書案内.jpg Panasonic Melodious Library.jpg
心と響き合う読書案内 (PHP新書)』['09年]

Panasonic Melodious Libraryド.jpg '07年7月にTOKYO FMでスタートした未来に残したい文学遺産を紹介するラジオ番組『Panasonic Melodious Library』で、「この番組は文学的な喜びの共有の場になってくれるのではないだろうか」と考えパーソナリティを務めた著者が、その内容を本にしたものですが、文章がよく練れていて、最近巷に見られるブログをそのまま本にしたような類の使い回し感、焼き直し感はありません。

 著者については、芥川賞受賞作がイマイチ自分の肌に合わず、他の作品を読まずにいたのが、たまたま『博士の愛した数式』を読み、ああ旨いなあと感服、その後も面白い作品を書き続けていると思っていましたが、本書に関して言えば、とり上げている作品は「著者らしい」というか、「いまさら」みたいな作品も結構あるような気がしました。

 しかし実際読んでみると、優れた書き手は優れた読み手でもあることを実証するような内容で、評価の定まった作品が多いので、何か独自の解釈でも連ねるのかなと思ったら、むしろ素直に自らも感動しながら読み、また楽しんで読んでいるという感じがし、その感動や面白さを読者に易しい言葉で伝えようとしているのがわかります。

 むしろ「解釈」を人に伝えるより、「感動」や「面白さ」を人に伝える方が難しいかも。その点、著者は、作品の要(かなめ)となる部分を限られた紙数の中でピンポイントで抽出し、そこに作品全体を読み解く鍵があることを、著者なりに明かしてみせてくれています(作家だから当然かも知れないが、文章がホントに上手!)。

 作品の読み方が評論家っぽくなく「素直」で、それでいて、味わい方の奥が「深い」とでも言うか、冒頭の金子みすゞの『わたしと小鳥とすずと』(これ、教育テレビの子ども向け番組「日本語で遊ぼう」でよく紹介されているものだが)の読み解きからしてそのような印象を抱き、「心に響く」ではなく、「心と響きあう」読書案内であるというのはわかる気がします。

 こんな人が国語の先生だったら、かなりの生徒が読書好きになるのではないかと思いましたが、ジュニアに限らず大人が読んでも再発見のある本ではないかと。

《読書MEMO》
●第一章 春の読書案内 ... 『わたしと小鳥とすずと』/『ながい旅』(大岡昇平)/『蛇を踏む』/「檸檬」/『ラマン』/『秘密の花園』/「片腕」(川端康成)/『窓ぎわのトットちゃん』/『木を植えた男』(ジャン・ジオノ)/『銀の匙』/『流れる星は生きている』/「羅生門」/「山月記

蛇を踏む.jpg 檸檬.jpg 片腕.jpg 銀の匙.jpg 羅生門・鼻 新潮文庫.jpg 李陵・山月記.jpg

●第二章 夏の読書案内 ... 『変身』/『父の帽子』(森茉莉)/『モモ』/『風の歌を聴け』/『家守綺譚』(梨木香歩)/『こころ』/『銀河鉄道の夜』/「バナナフィッシュにうってつけの日」/『はつ恋』/『阿房列車』/『昆虫記』(ファーブル)/『アンネの日記』/『悲しみよ こんにちは

変身.jpg 銀河鉄道の夜 童話集 他十四編.jpg 悲しみよこんにちは 新潮文庫.jpg

●第三章 秋の読書案内 ... 「ジョゼと虎と魚たち」(田辺聖子)/『星の王子さま』/『日の名残り』/『ダーシェンカ』/『うたかたの日々』/「走れメロス」/「おくのほそ道」/『錦繍』/「園遊会」(マンスフィールド)/『朗読者』/『死の棘』/「たけくらべ」/『思い出トランプ

日の名残り (中公文庫) _.jpg 錦繍 bunnko .jpg 朗読者 新潮文庫.jpg 思い出トランプ.jpg 

●第四章 冬の読書案内 ... 『グレート・ギャツビー』/『冬の犬』(アリステア・マクラウド)/「賢者の贈りもの」(O・ヘンリ)/『あるクリスマス』/『万葉集』/『和宮様御留』(有吉佐和子)/「十九歳の地図」/『車輪の下』/『夜と霧』/『枕草子』/『チョコレート工場の秘密』/『富士日記』/『100万回生きたねこ』

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー).jpg 十九歳の地図.jpg チョコレート工場の秘密 yanase.jpg 富士日記 上巻.jpg
以上

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文系出身の社会人が通勤電車内で楽しく(苦なく?)読み切れる内容。

アインシュタイン丸かじり.jpg 『アインシュタイン丸かじり―新書で入門 (新潮新書)』['07年] 志村史夫.jpg 志村 史夫 氏 (略歴下記)

 アインシュタインの業績や相対性理論に関する入門書で、「文系出身の社会人が通勤電車内で楽しく(苦なく?)読み切れる」内容とでも言ったらいいのでしょうか、新書(「新潮新書」)の性格を反映した大変読み易いものとなっています(著者は「ブルーバックス」の常連執筆者だったと思うが)。

 内容面の特徴として、アインシュタインの発表した理論のうち、特殊相対性理論と一般相対性理論の解説に各1章を割くのと併せて、光の粒子説を中心とした他の業績にも1章を割いていることが挙げられます。
 それらを挟んで、前段で、アインシュタインの業績がいかに凄いものであったのか、彼の"天才ぶり"、その偉業の"奇跡ぶり"を解り易く説くと共に、「アインシュタイン以前」をおさらいし、後段では「時空の歪み」という解りにくい概念を今一度解説するとと共に、最後にアインシュタインの言葉を紹介し、その発想の原点や思想を伝えています(盛りだくさん!)。

 文系でも読み易いと言いましたが、数式を使わないというわけではなく、一般相対論の理論式など一応は登場し、ローレンツ変換とかも出てきます。
 但し、それらを必ずしも解らなくてもいいとして、読者を追い詰める(?)ことなく、合間に適度にアインシュタインの"人となり"を伝える話やその他の学者やノーベル賞などに纏わる科学史上のエピソードが織り込まれていて、「読み物」的感覚で読み進めることができます。
 この辺りの、ちょっと脇道に行って(ムダ話をしているのではない)「閑話休題」として本筋に戻ってくるタイミングが絶妙。

 著者自身が、相対性理論を理解するうえで、どこで引っ掛かったか、それをどのような発想の転換で乗り越えたかなどが書かれている点も、親近感を覚えると共に、ああ、ここが一般の人と物理学者の思考方法の分岐点だなあと思わせるものがありました。

 紙数の関係上、結果的に、一般相対性理論の解説などがやや浅くなってしまったことは否めませんが、「最初に読む1冊」乃至「久しぶりに復習してみる1冊」としては、その要件を満たした好著だと思います。
_________________________________________________
志村史夫(しむら・ふみお)
1948(昭和23)年東京・駒込生まれ。名古屋工業大学大学院修士課程修了。名古屋大学工学博士(応用物理)。2007年現在、静岡理工科大学教授、ノースカロライナ州立大学併任教授。『こわくない物理学』など著書多数。2002(平成14)年、日本工学教育協会賞・著作賞受賞。

《読書MEMO》
●章立て
第1章 アインシュタインは偉い
 「奇跡の年」から一〇〇年/二〇世紀のコペルニクス/週刊誌のトップ記事にも/日本との因縁/ハイテクの父/世紀の人
第2章 「アインシュタイン以前」をおさらい
 自然の理解/自然哲学の誕生/物質の構造/物体の運動/運動の相対性/空間とは何か/時間とは何か/光とは何か/ニュートンと光/重力とは何か/驚異の年
第3章 「奇跡の年」の奇跡ぶり
 不遇の時代/五篇の論文/光電効果/電気と磁気/マクスウェルの電磁理論/電磁波と光/生活に欠かせない電磁波/プランクの量子仮説/光の謎を解明/ハイテクを支える光量子
第4章 これで「特殊相対性理論」がわかる
 特殊相対性効果/原型は一六歳の空想/不思議な光/光速不変の原理/時間が遅れる/空間が縮む/光速より速いものはない/質量が増大する/同時性の否定/先人の無念
第5章 世界一有名な方程式E=mc2の誕生
 エネルギーはどこへ?/わずか三ページの革命/エネルギーから物質が生まれる/物質に潜む巨大なエネルギー/日常生活への応用
第6章 時空の歪みとは何か
 一般相対性理論/重力の源は「空間の曲がり」/「空間の曲がり」とは?/光が曲がった/ノーベル賞受賞の裏側
第7章 想像力は知識よりも重要である―アインシュタイン名言集
 タゴールとの対話/「才能」と「学問」について/「自然」「宇宙」「神」について/「科学」と「芸術」について/「人生」について

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消え行く映画館を追った写文集。写真があるというのは、それだけで資料的価値はあるかと。

映画館物語―映画館に行こう!.jpg映画館物語―映画館に行こう!』['02年] 想い出の映画館.jpg想い出の映画館』['04年]

 『映画館物語-映画館に行こう』('02年12月刊行)は、全国の映画館を旅歩いてカメラに収めてきた著者が、その中から数百点の写真を厳選し、その映画館に纏わるエピソードを添えた写文集で、札幌から始まって沖縄まで273館を紹介して終わっていますが、今は閉館になったものを重点的に拾っています。

 1枚1枚の写真が大判なのが良く(すべてモノクロ写真)、こうして見ると、東京の今は無き映画館も懐かしいですが、地方の行ったこともない映画館で今は閉館になっているものの写真も、どことなく郷愁をそそります(地方の映画館などは、街の過疎化を象徴しているようでもあり、侘びしさも感じる)。

 消え行くものは美しい―必ずしも、そういうコンセプトのみで作られた本ではないとは思いますが、表紙に'98年オープンの「ラピュタ阿佐ヶ谷」をもってきているのは、全体のトーンからして少しずれているような気も。

 『想い出の映画館』('04年9月刊行)も同趣の本で(こちらもすべてモノクロ写真)、概ね関東と関西に分けて紹介していて、東京地区だけで見ても、新宿、渋谷、池袋、浅草、錦糸町、亀有、大井・蒲田、銀座、有楽町、中野、吉祥寺・三鷹、高田馬場、早稲田と街ごとに、閉館となった名画座をより詳しく紹介しているため、自分としては親近感がありました。

三軒茶屋中央劇場.jpg目黒シネマ.jpg それでも結構漏れていると思われるものもあり(『映画館物語』にあった「目黒シネマ」や「三軒茶屋中劇」の写真が『想い出の映画館』にはない)、紙数上、これは仕方がないことか。「三鷹」などは紹介文が3行しかなく「三鷹オスカー」の写真が1枚あるだけ。
 でも、やはり、写真が載っているというのは、それだけで資料的価値はあるかなあと。

パール座.jpg下高井戸東映.jpg 個人的には、古色蒼然とした写真よりもちょっと古め程度の写真、例えば「下高井戸シネマ」のリニューアル前の写真に「下高井戸京王」という看板が見えるのとか(『映画館物語』)、西友の地下にあった高田馬場「パール座」の入口の写真(『想い出の映画館』)などに懐かしさを覚えました。

自由が丘武蔵野館.jpg中野武蔵野ホール.jpg 『映画館物語』の中で、「中野武蔵野ホール」で頑張っている女性スタッフが紹介されていますが、1年半後に刊行の『想い出の映画館』では閉館となったと紹介されており('04年5月閉館)、「シネ・ラ・セット」(旧有楽シネマ)もそう('04年1月閉館)、どちらの本にも出てこないけれども、「自由が丘武蔵野館」もそうなんだよなあ('04年2月閉館)。

早稲田松竹.jpg このように、本書刊行後に閉館となった映画館も多いですが、「早稲田松竹」や「目黒シネマ」みたいに頑張っているところもあり、但し、レンタルビデオによって名画座が衰退し、更にデジタル録画時代に入り、昔ほどの"値ごろ"感がないのは事実。

 著者は、シネコンを味気ないとして嫌っているようですが、渋谷は既にそうだし、新宿も大方がシネコン化していくのでしょう。
 個人的には、シネコンであろうと、昔の名画座のようなその映画館独自の色合いがあればそれでいいのではとも思いますが、実際にはどれもこれも均質化してきているのが何とかならないものかと。

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表層的な薀蓄話、内輪話に終始しているという印象を受けた。

西洋美術史から日本が見える.jpg 『西洋美術史から日本が見える (PHP新書)』 ['09年]

 タイトルに反して西洋美術史のことは殆ど書かれておらず、どちらかと言うと西洋の文化と日本の文化の違いは何かを講釈し、日本人がいかに西洋の文化を理解しないまま、その真似事をしているかを糾弾しているような本ですが、非常に表層的な薀蓄話に終始している印象を受けました。

 例えば、赤い薔薇は「性愛の女神」を表すこともあるので、客人の目に付く所に飾るのは品が無いとか、ボジョレー・ヌーヴォーが解禁になったからと言ってをホテルへドレスアップして飲みにいくのは日本人だけだとか、バレエの正しい見方はどうだとか、オペラの正しい鑑賞法はこうだとか、読者に対してマナー教室の先生にはなるつもりはないので勘違いしないで欲しいと言いながら、実質そうなってしまっているなあ。

 偽セレブ、偽ワイン通、偽オペラ通などを暴くのは、カルチャースクール系の普通のオバさんなどには受けるかも知れないけれど、結局、著者自身も同じ土俵に立ってしまっているような感じで、学問的というよりオタク的な知識をもって人を逆撫でするようなことを言うのも、これも1つの通俗であり、著者が本書で攻撃している「文化オタク」そのものではないかと。

 結局、西洋美術史を学べば西洋文化のことがわかり、そうすれば日本の文化もわかってくるというのが論旨のようですが、今のところその「西洋美術史」乃至「西洋文化」をわかっているのは、「アメリカとイギリスに留学経験を持つ自分」のような限られた人間しかいないという、そういう鼻持ちならない姿勢がミエミエで、また、著者が言う正しい西洋文化の理解というのが、西洋人と同じように考え振舞えと言っているようにも聞こえて、それでいて自分は「愛国者」であるとし、「日本人としての矜持」みたいな話も持ち出すから、結局、何が言いたいのか。

 必ずしも内容の全てを否定はしないけれど、あまりに自分の留学先での内輪ネタが多く、自分1人で盛り上がっている感じもし、インテリアの助言を請われると、「アンティークの本を何冊か飾ることと、小ぶりでエレガントな灰皿を置くことを強くお勧めしている」そうで、これは新手の「知的生活の方法」かと思ってしまった・・・。「セレブ」評論家か何かになって、ワイドショーにでも出たらいいのでは。

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 本を選んだのは新潮社。さらっと読める分物足りなさもありるが、個人的には楽しめた。

新潮文庫 20世紀の100冊.jpg 『新潮文庫20世紀の100冊 (新潮新書)』 ['09年]

 新潮社が2000年に、20世紀を代表する作品を各年1冊ずつ合計100冊選んだキャンペーンで、著者がそれに「解説」をしたものとのことですが、著者の前書きによれば、「100冊の選択におおむね異論はなかった。しかし素直にはうなずきにくいものもないではなかったし、読むにあたって苦労した作品もあった」とのこと。

 1冊1冊の著者による解説は実質10行足らずであるため、さらっと読める分物足りなさを感じる面もありますが、全体としてはよく吟味された文章と言えるのではないかと思われ、十分に(そこそこに?)楽しめました。

 個人的には、三島由紀夫の『春の雪』(1970年)の「人生のすべてをパンクチュアルに生きた人が、最後に破った約束」などは、内容に呼応した見出しのつけ方が旨いなあと。

 但し、前半・中盤・後半に分けるならば、とりわけ、前半部分の20世紀初頭の近代文学作品の解説が、作品の書かれた背景や他の同時代の作家との相関において、その作品の歴史的位置付けを象徴するような要素をピンポイントで拾っていて、文学史の潮流を俯瞰でき、作家の個人史に纏わる薀蓄などもあって、より楽しめました(著者の得意な時代ジャンルということもあるのか)。

 また、著者自身、これら100冊を「鑑賞」しようとはせず、むしろ「歴史」を読み取ろうとしたと述べているように、こうして様々な作風の作家の作品を暦年で並べて時代背景と照らしながら見ていくことには、それなりの意義があるように思えました(時折、海外の作品が入るのも悪くない)。

関川 夏央 『新潮文庫 20世紀の100冊』.jpg でも最後の方(特に最後の10年ぐらい)になると、例えば「1993年は『とかげ』(吉本ばなな)の年、そういうことにしよう」とあるように、ちょっと評し切れないと言うか(選んだのは著者ではなく新潮社、2000年1月から毎月10冊ずつこの100冊を刊行する上での商業的思惑もあった?)、「歴史」に"定位"するスタイルでは論じ切れなくなっている感じもし、著者のこの作業が2000年に行われたことを考えれば、その点は無理もないことかも。

 「100冊」と言うより「100人」とみて読んだ方がすんなり受け容れられる面もあるかと思われますが、亡くなって年月を経た作家は、彼(彼女)の生き方はこうだった、みたいに言い切れるけれど、生きている作家については、そうした言い切りがしくいというのもあるしなあ。

《読書MEMO》
●取り上げている本
1901年 みだれ髪 与謝野晶子
1902年 クオーレ エドモンド・デ・アミーチス
ヴェ二スに死す 文庫新潮.jpg1903年 トニオ・クレーゲル トーマス・マン
1904年 桜の園 アントン・チェーホフ
1905年 吾輩は猫である 夏目漱石
1906年 車輪の下 ヘルマン・ヘッセ
1907年 婦系図 泉鏡花
1908年 あめりか物語 永井荷風
1909年 ヰタ・セクスアリス 森鴎外
1910年 刺青 谷崎潤一郎

1911年 お目出たき人 武者小路実篤
1912年 悲しき玩具 石川啄木
1913年 赤光 斎藤茂吉
1914年 道程 高村光太郎
1915年 あらくれ 徳田秋声
1916年 精神分析入門 ジークムント・フロイト
和解.bmp1917年 和解 志賀直哉
1918年 田園の憂鬱 佐藤春夫
1919年 月と六ペンス サマセット・モーム
1920年 惜みなく愛は奪う 有島武郎

小川未明童話集.jpg1921年 赤いろうそくと人魚 小川未明
1922年 荒地 T・S・エリオット
1923年 山椒魚 井伏鱒二
1924年 注文の多い料理店 宮沢賢治
檸檬.jpg1925年 檸檬 梶井基次郎
日はまた昇る (新潮文庫).bmp1926年 日はまた昇る アーネスト・ヘミングウェイ
河童・或阿呆の一生.jpg1927年 河童 芥川龍之介
1928年 放浪記 林芙美子
1929年 夜明け前 島崎藤村
1930年 測量船 三好達治

夜間飛行 文庫 新.jpg1931年 夜間飛行 サン=テグジュペリ
八月の光.jpg1932年 八月の光 ウィリアム・フォークナー
1933年 人生劇場 尾崎士郎
1934年 詩集 山羊の歌 中原中也
1935年 雪国 川端康成
風と共に去りぬ パンフⅠ2.JPG1936年 風と共に去りぬ マーガレット・ミッチェル
1937年 若い人 石坂洋次郎
1938年 麦と兵隊 火野葦平
怒りの葡萄 ポスター.jpg1939年 怒りの葡萄 ジョン・スタインベック
1940年 夫婦善哉 織田作之助

1941年 人生論ノート 三木清
1942年 無常という事 小林秀雄
李陵・山月記.jpg1943年 李陵 中島敦
1944年 津軽 太宰治
1945年 夏の花 原民喜
<坂口 安吾 『堕落論』2.jpg1946年 堕落論 坂口安吾
1947年 ビルマの竪琴 竹山道雄
俘虜記.jpg1948年 俘虜記 大岡昇平
1949年 てんやわんや 獅子文六
1950年 チャタレイ夫人の恋人 D・H・ローレンス

異邦人 1984.jpg1951年 異邦人 アルベール・カミュ
二十四の瞳 dvd.jpg1952年 二十四の瞳 壺井栄
1953年 幽霊 北杜夫
1954年 樅ノ木は残った 山本周五郎
太陽の季節 (新潮文庫) (2).jpg1955年 太陽の季節 石原慎太郎
楢山節考 洋2.jpg1956年 楢山節考 深沢七郎
1957年 死者の奢り 大江健三郎
松本 清張 『点と線』 新潮文庫.jpg1958年 点と線 松本清張
1959年 海辺の光景 安岡章太郎
1960年 忍ぶ川 三浦哲郎

1961年 フラニーとゾーイー サリンジャー
砂の女(新潮文庫)2.jpg1962年 砂の女 安部公房
飢餓海峡(下) (新潮文庫).jpg飢餓海峡(上) (新潮文庫).jpg1963年 飢餓海峡 水上勉
1964年 沈黙の春 レイチェル・カーソン
1965年 国盗り物語 司馬遼太郎
沈黙 遠藤周作 新潮文庫.jpg1966年 沈黙 遠藤周作
アメリカひじき・火垂るの墓1.jpg1967年 火垂るの墓 野坂昭如
1968年 輝ける闇 開高健
1969年 孤高の人 新田次郎
奔馬.jpg春の雪.jpg1970年 豊饒の海 三島由紀夫

1971年 未来いそっぷ 星新一
1972年 恍惚の人 有吉佐和子
辻斬り.jpg1973年 剣客商売 池波正太郎
1974年 おれに関する噂 筒井康隆
1975年 火宅の人 檀一雄
1976年 戒厳令の夜 五木寛之
蛍川・泥の河 (新潮文庫) 0.jpg1977年 泥の河 宮本輝
1978年 ガープの世界 ジョン・アーヴィング
1979年 さらば国分寺書店のオババ 椎名誠
1980年 二つの祖国 山崎豊子

1981年 吉里吉里人 井上ひさし
1982年 スタンド・バイ・ミー スティーヴン・キング
破獄  吉村昭.jpg1983年 破獄 吉村昭
1984年 愛のごとく 渡辺淳一
1985年 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 村上春樹
1986年 深夜特急 沢木耕太郎
1987年 本所しぐれ町物語 藤沢周平
1988年 ひざまずいて足をお舐め 山田詠美
1989年 孔子 井上靖
1990年 黄金を抱いて翔べ 高村薫

1991年 きらきらひかる 江國香織
火車.jpg1992年 火車 宮部みゆき
1993年 とかげ よしもとばなな
1994年 晏子 宮城谷昌光
1995年 黄落 佐江衆一
1996年 複雑系 M・ミッチェル・ワールドロップ
1997年 海峡の光 辻仁成
1998年 宿命 高沢皓司
1999年 ハンニバル トマス・ハリス
朗読者 新潮文庫.jpg2000年 朗読者 ベルンハント・シュリンク

 
 
 

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資料的なものを期待した分、期待外れになってしまった。

東京名画座グラフィティ.jpg  文芸坐.jpg 文芸坐 三鷹オスカー予定表.jpg 五反田TOEIシネマ 2.jpg
東京名画座グラフィティ (平凡社新書)』['06年]

東京名画座グラフィティ4.jpg 1953年生まれの著者が青春時代に巡った都内及びその近郊の映画館の思い出を綴ったもので、名画座の衰退、シネマ・コンプレックスの台頭著しい今日、貴重な1冊となるのかと思って読み始めましたが、どちらかと言うと著者の思い入れが先行していて、渋谷、池袋、新宿、銀座・日比谷...と街ごとには章分けされてはいるものの、資料的なグラフィティと言うよりエッセイに近い感じ。

 懐かしい映画館が次々に登場し、ああ、池袋の旧「文芸坐」や銀座の「並木座」、飯田橋の「佳作座」や高田馬場の「パール座」...etc みんな無くなってしまったなあと感慨をそそる面はありますが、主にそこでアレを観たコレを観たと言うことを中心に書かれていて、映画館1つ1つの歴史については記述が乏しく、同時期に都内の名画座を巡った団塊の世代には懐かしいかも知れませんが、後から来た世代には、いつごろまでその映画館があっていつ無くなったかということがよくわかりません。

由が丘武蔵野館5.jpg 著者がB級グルメライターでもあるためか、近所にどういう食べ物屋があったとかそういうことは書かれていますが、個人的にはそうしたことに割く紙数をむしろ各映画館の歴史の方に割いて欲しかった気がします(そういうことを書きたくなる気持ちがわからなくもないが)。

 「自由が丘武蔵野館」はかつて「自由が丘武蔵野推理」という名称だったことは書いてありますが、それを言うなら「中野武蔵野ホール」は「中野武蔵野館」だったし、「三鷹オスカー」は「三鷹東映」、「三軒茶屋中央劇場」はもともとあった「三軒茶屋映画劇場」の分館で「三軒茶屋映劇」の方が本家、著者の地元である渋谷の「東急ジャーナル」は「渋谷東急3」になる前は「東急レックス」だった...。その時代に本当にそこに通いつめていれば、絶対に忘れることのない名前だと思うのですが。

 個人の記憶と記録にのみ頼って書いている感じで、抜け落ちも結構あるような印象を持ちながら読んでいたら、あとがきで「漏れていました」みたいな感じで、「五反田東映シネマ」とか出てくる...(これも「五反田東映」という封切館に併設されていた3本立名画座(洋画館)「五反田TOEIシネマ」というのが正しい表記ではないだろうか)。

 最初からエッセイとして読めば良かったのかも知れませんが、資料的なものを期待した分、期待外れになってしまいました。

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"ヴォーグ"のトップ・モデルで、映画「詩人の血」にも主演した、才色兼備の写真家。

リー・ミラー写真集.jpg  Lee Miller.bmp Lee Miller (1907-1977)photo by Man Ray/Self-Portrait(下右)
(27.4 x 22.8 x 2.4 cm)『リー・ミラー写真集 -いのちのポートレイト-』 ['03年]

Lee Miller2.jpg モデルや女優から写真家になった人は多く、かのレニ・リーフェンシュタール(1902-2003)も元は女優であり、キャンディス・バーゲンも一時は写真家の方が本業だったし、日本でも元ミス・ユニバース日本代表の織作峰子や元モデルの桐島ローランド、男性まで含めると加納典明(俳優と兼業だった)もいて、最近では福山雅治、松田美由紀まで"参入"しているけれど、この辺りになると実力のほどはよく分からない...。

Man Ray and Lee Miller.jpg そうした中(と言っても、この中で比べて差し支えないにはレニぐらいだろうが)、このリー・ミラー(Lee Miller)は、モデルとしても写真家としても一流だったと言えるでしょう。

Man Ray and Lee Miller

 雑誌"ヴォーグ"のトップ・モデルだった22歳の時に写真家に転身、マン・レイに師事するとともに、マン・レイの以前の恋人だった"モンパルナスのキキ"から彼を奪って彼の愛人になってしまうのですが、初期の頃はファッション写真やポートレートを撮っていたのが、第二次世界大戦の戦場に赴いて戦場ジャーナリストになりました。

Lee Miller3.jpgLee Miller 1.jpg 戦場に向かう女性将校や戦場に斃れた兵士などを撮り、自決したナチの将校や頭髪を剃られたナチ協力者の女性、殴られて顔が変形したナチ収容所の元警備兵などの生々しい写真もありますが、ファッション写真を撮っていた頃に既にシューレアリストから強い影響を受けており(彼女はジャン・コクトー監督の「詩人の血」('30年/仏)に"生きた彫像"役で出ている。面白いけれど評価不能に近いシュールな映画だった)、そうした勇壮な、或いは悲惨な写真においても、その光と影の使い方にシュールな感覚が見られ、その覚めた意匠が、却って報道写真としての説得効果を増しているように思います。

Lee Miller in Hitler's bath.jpgLee Miller.jpg 戦後はポートレートに復帰し、長年親交のあった画家ピカソの日常の"素"の姿を写し撮っていて、そのくつろいだ様が興味深いですが、その他にも多くの芸術家や映画俳優の写真を残しています。
 しかし、一番美しく撮れているのが彼女自身のポートレートであり、この写真集の中でそれに匹敵する美人と言えば、彼女が撮ったマレーネ・デートリッヒぐらいでしょうか。
 この写真集を見ていると、ついミラー自身のセルフポートレートや撮影の合間に自分がモデルになって撮られた写真に目が行っていまいます。

Lee Miller in Hitler's bath (ヒトラーの浴室のミラー 1945.5.1)

 まさに才色兼備、生き方も奔放だったようで、彼女について書かれた伝記もあり彼女自身も文筆家でしたが、'60年代以降の活動がやや地味だったこともあり(自分の仕事をやり尽くしてしまった感じがした?)、20世紀の「伝説の写真家」と言っていい女性です。

詩人の血.jpg「詩人の血」(1930年).jpg詩人の血1.jpg 「詩人の血」●原題:LE SANG D'UN POETE●制作年:1930年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン・コクトー●製作:ド・ノアイユ伯爵●撮影:ジョルジュ・ペリナール●音楽:ジョルジュ・オーリック●時間:50分●出演:リー・ミラー/ポリーヌ・カルトン/オデット・タラザック/エンリケ・リベロ/ジャン・デボルド●パリ公開:1930/01(プレミア上映)●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-03-02)(評価:★★★?)●併映:「忘れられた人々」(ルイス・ブニュエル)/「アンダルシアの犬」(ルイス・ブニュエル/サルバトーレ・ダリ)

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会話形式の例文に職場や飲み屋での会話のような親しみ易さ、昔のTVドラマ風のレトロ感。

故事ことわざ辞典 宮腰.jpg 『故事ことわざ辞典―現代に生きる』 故事ことわざ辞典 旺文社 特装版2.jpg 「特装版」('83年)

 辞典を読む趣味も無いし、実際に読み通した辞典など殆ど無いのですが、本書は、日々、電車の社内で読み継いで、最後まで読み通した数少ない辞典の1つ(自分が持ち歩いて読んだのは同じくコンパクトサイズの「特装版」('83年))。

 故事成語の出典が分り易く明記されている、類似する英語のことわざ・慣用句を英文で併記してある、付録として世界の名言・名句が自己、青春、友情などのテーマごとに纏められているなど幾つかの特長がありますが、何と言っても最大の特長は、会話形式による例文で、これがなかなか面白い、と言うか、まあ凡庸なのだけれど、ついつい読んでしまう...(1つ1つが結構長文であるため、約450ページにして収録されている故事ことわざ・慣用句は3千600項とやや少なめか)。

 例えば、「いかもの喰い」に付された会話文は―、
 「あなたのボーイフレンド、見栄えがしないわね。あんな人とつきあうなんて、あなたも相当ないかもの食いね」
 「あら、なんてこと言うの? 人は見かけじゃないわよ。彼の善さは俗人にはわからないのよ」

 「嬶(かかあ)天下」には―、
 「おまえ、結婚したらつきあいが悪くなったぞ。今晩、一杯ぐらいつきあえよ」
 「勘弁してくれよ。おれが外で飲んで帰ると女房の機嫌が悪くてね。おれのところは嬶天下の家系なのかな。うちのおやじもおふくろに頭が上がらなかったよ」

 「情けは人の為ならず」には―、
 「十年も前の話だが、彼がひどく困っていたんで、就職の世話をしたことがあるんだ。そしたら、わたしが定年退職した今でも、なにかとよくしてくれるよ」
 「情けは人の為ならずと言いますが、必ず自分に返ってくるものですね」

 中国故事成語の方は、原典の読み下しや故事の由来に行数を割いているため、どちらかというと日本のことわざや慣用句にこの手の会話文が多く付されているのですが、職場や飲み屋での会話のようなものが多くて親しみ易く、また、昔のテレビドラマの脚本を読んでいるみたいなレトロ感もあったりします。

 しかし、会話文を考える側の方は大変だったろうなあ(結構、楽しんで"創作"していたのかも知れないが)。

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ヴェネチア・カーニヴァルの妖しげな彩り。映画「ヌードの女」を思い出した。

夢のアロマ VENEZIAード.jpg
夢のアロマVENEZIA.jpg          アリゾナの青い風になって.jpg
夢のアロマVENEZIA』(25.6 x 21 x 2.2 cm)['08年]『アリゾナの青い風になって―Spiritual Journey (Up‐Front Books)』 ['07年]

ヴェネチア カーニバル.bmp夢のアロマ VENEZIA01.jpg ヴェネチアのカーニヴァルは、1年の豊作を祈って農民の間でローマ時代から始まったものが当地の風習となり、18世紀には1年の半分近くがカーニヴァルだったこともあるとかで、今でもシーズンには欧州中から観光客が集まりますが、中でも仮面舞踏会を想わせるような仮装にその特徴があり、「仮面カーニヴァル」とも言われています。

夢のアロマ VENEZIA6.jpg 本書は、『アリゾナの青い風になって―Spiritual Journey』('07年/アップフロントブックス)でアリゾナ北部にあるバーミリオンクリフ・ウィルダーネスという特別自然管理地域を旅行記風に撮った写真家が、今度はこのヴェネチアのカーニヴァルで様々に仮装する人々を撮った写真集で、こうしてみると「リオのカーニヴァル」の仮装などとは随分と雰囲気が違うなあと。

今宵限りは  シュミット.jpg 白塗りの無表情な仮面などはちょっと恐さを感じさせ(ホラー映画にもよく出てくるなあ、こういうの)、キンキラ系はキンキラ系でこれまた神秘的な妖艶さを醸しています(屋敷の主人たちと召使たちが一晩だけ入れ替わるというダニエル・シュミット監督の映画「今宵かぎりは...」('72年/スイス)で、召使の前で踊る主人乃至旅芸人がつけていた仮面を思い出した)。

 写真は大判で何れも美しく、「街」よりも「人」や「衣装」にフォーカスして、その妖しげな彩りを青い空や水路の水の色と対比させているのがいいと思いましたが、ゴージャスな分、やや点数的には物足りないかなという気も。

 このヴェネチアのカーニヴァルを背景とした映画に、ニーノ・マンフレディ(1921‐2004)監督・主演の「ヌードの女」('81年/伊)という作品があったあったのを思い出しました。夫婦の微妙な関係を描いたミステリ風コメディですですが、映画のテーマと、「仮面カーニヴァル」という背景がよくマッチしていました。

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 半端じゃない読書量。一体いつ自分の作品を書いているのかと...。

桜庭一樹読書日記.jpg 『桜庭一樹読書日記―少年になり、本を買うのだ。』['07年] 少年になり、本を買うのだ.jpg 『少年になり、本を買うのだ 桜庭一樹読書日記 (創元ライブラリ) (創元ライブラリ L さ 1-1)』['09年] 

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない00_.jpg 異色のライトノベルとして評判になった『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』('04年/富士見ミステリー文庫)を読みましたが、皆が言うほどの"傑作"なのかよく分からず、大体ライトノベルというのが自分の肌に合わないのかなと思っていたら、今や直木賞作家だからなあ、この人。ライトノベルといっても終盤で露わになる近親相姦的モチーフはへヴィで、これがまあ"異色"と言われる所以ですが、このモチーフ、『私の男』へと連なっていったわけかあ。

桜庭一樹 物語る少女と野獣.jpg 角川文庫の新聞広告で読書案内人のようなこともやっていて、読書家であることでも知っていましたが、本書はタイトル通り、「書評」と言うより読書生活を綴った「日記」のようなもので、Webでの連載('06年2月〜'07年1月分)を纏めたもの。

 ミステリ中心ですが、近代文学や海外の純文学作品、詩集やノンフィクション、エッセイなども含まれていて、でもやっぱり中心は内外のミステリでしょうか(東京創元社のHP上で連載だったこともあるが)、その読書量の多さに圧倒されます。

桜庭一樹 ~物語る少女と野獣~』 ['08年/角川グループパブリッシング ]

 まず、"ミステリ通"の好みそうな作品をよく拾っているなあと感心させられますが、自然とそういう本の方向に向かうのだろうなあ、こういう読書生活を送っていると。

 自分はそこまでミステリに嵌っているわけではないので、ああ、こんな本もあるんだあみたいな感じでついていくのがやっと、とてもそれらを探して読みまくるというところには至らないですが、それでもこの本自体が1冊の「読み物」乃至はエッセイとして楽しめました。

 あまり大仰ぶらず批評家ぶらず、ストレートに「わあ〜、面白かったあ」みたいな感じで、併せて自分の生活を戯画化しながら書いているので、ついつい親近感を覚えさせるのでしょうが、ミステリ通の人が読めば、また違った読み方ができるのかも。
 何れにせよ半端な読書量では無く、一方で小説を量産しているわけで、一体いつ自分の作品を書いているのかと...。

 各ページの下の方に、文中で取り上げた本が書影付きで載っていて、必要に応じて簡単な解説もされているのが親切に思えました(自分で解説しているものもあれば編集者が書いているのもある。相互の感想のやりとりも楽しい)。

 因みに、2009年の「角川文庫の100冊」(正式タイトル「2009年 発見。角川文庫夏の100冊」)の中の「作家12人が選んだこだわりの角川文庫」というコーナーでこの人が選んだ1冊は、本書でも取り上げられている寺山修司の『書を捨てよ、町へ出よう』でした。

 【2009年文庫化[創元ライブラリ(『少年になり、本を買うのだ-桜庭一樹読書日記』)]】

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文学者の眼から見たサルトル像、小説・戯曲への手引。ボーヴォワールを嫉妬に狂わせたサルトル。
「サルトル」入門 (講談社現代新書)2_.jpg
サルトル入門.JPG「「サルトル」入門5.JPG 『「サルトル」入門 (1966年) (講談社現代新書)』 

 '07年から'08年にかけて松浪信三郎訳の『存在と無』がちくま文庫(全3冊)に収められたかと思ったら、'09年には岩波文庫で『自由への道』の刊行が始まり、こちらは全6冊に及ぶと言うサルトル-まだ読む人がいるのだなあという思いも。

白井浩司.jpg 著者の白井浩司(1917-2004)はサルトル研究の第一人者として知られたフランス文学者で、サルトルの『嘔吐』『汚れた手』などの翻訳も手掛けており、本書は、文学者・実存主義者・反戦運動の指導者など多様な活動をしたサルトルの人間像を捉えたものであるとのことですが、とりわけ、その小説や戯曲を分り易く解説しているように思いました。

 文学者の眼から見たサルトル像、サルトルの小説や戯曲へのサルトルとボーボワール.jpg手引書であると言え(とりわけ『嘔吐』の主人公ロカンタンが感じた〈吐き気〉などについては、詳しく解説されている。片や『存在と無』などの解説が物足りなさを感じるのは、著者がやはり文学者だからか)、その一方で、彼の生い立ちや人となり(これがなかなか興味深い)、ボーヴォワールをはじめ多くの同時代人との交友やカミュなどとの論争についても書かれています。

 彼は20代後半から30代前半にかけての長い修業時代に、まず、セリーヌの『夜の果ての旅』を読み、その文章に衝撃を受けて、その後いろいろな作家の作品を読み漁っていますが、カフカとフォークナーに特に共感したとのこと、また、映画を文学と同等に評価していて、カウボーイや探偵の活躍する娯楽映画も好きだったそうです(サルトルは映画狂だとボーヴォワールは書いている)。
サルトルとボヴォワール(来日時)

 彼の政治的な活動をも追う一方で、私生活についてもその恋愛観を含め書かれており、サルトルとボーヴォワールの2人の愛は有名ですが、サルトルはボーヴォワールと知り合った20代前半にはボーヴォワールに対してよりも年上の美女カミーユに恋をしており、また、ボーヴォワールと既に深い関係にあった30歳の頃には、3歳年下のボーヴォワールを差し置いて、12歳年下のオルガという少女に夢中になり、ボーヴォワールを嫉妬に狂わせたとのこと、そうこうしながら同時に『嘔吐』の原案も練っていたりして、ホント、精力的だなあと。

 60歳の時に「プレイボーイ」誌のインタヴューに答えて、「男性とよりも、女性と一緒にいる方が好き」で、それは「奴隷でもあり共犯者でもある女性の境遇からくる、女性の感受性、優雅さ、敏感さにひかれるからで」あると答えていますが、彼の恋愛観は一般には受け入れられていないと著者は書いています。

聖ジュネ(文庫)下.jpg聖ジュネ(文庫)上.jpg また、戦後も『聖ジュネ』などの文学評論の大作を発表しているものの、小説を書かなくなったのは、彼が政治に深入りしすぎたためであると書いており、この辺りは著者の見方が入っているように思えます。
 確かに、本書の冒頭には、「20億の飢えた人が地球上にいる現在、文学に専念するのは自分を欺くことだ」という'64年の記者会見での談話が紹介されてはいますが(同じ年、ノーベル文学賞を辞退している)。

 本書の初版が刊行された年にサルトルは初来日していて、各地での講演会は立錐の余地もないほどの盛況だったとのこと(そういう時代だったのだなあ)、一方、ホテルについた彼が最初にやったことは、老いた母親に無事着いたことを打電することだったそうで、彼のこうした行為や壮年になっても続いた女性遍歴は、父親を早くに亡くしたこととと関係があるのではないかと、個人的には思った次第です(彼には父親の記憶が無かった)。

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催眠について新書で科学的な観点から取り上げた点は先駆的だったと言える。

暗示と催眠の世界―2.JPG 暗示と催眠の世界s.jpg  日本人の対人恐怖.jpg
暗示と催眠の世界―現代人の臨床社会心理学 (1969年) (講談社現代新書)』『日本人の対人恐怖 (Keiso c books―社会心理学選書)
暗示と催眠の世界22.JPG暗示と催眠の世界5.JPG 『日本人の深層心理』『日本人の対人恐怖』などの著書のある臨床心理学者・木村駿(1930-2002/享年72)の著書。

 「暗示」と「催眠」について分り易く解説した本で、とりわけ催眠については、それまで学術書以外では、実用書のようなもので「催眠術」としてしか扱われてなかったものを、「講談社現代新書」というエスタブリッシュな新書で科学的な観点から取り上げたのは先駆的だったかも。メスメルから始まる催眠の歴史から説き起こし、催眠時における脳波の測定結果などを示して催眠状態とは如何なるものかを解説したうえで、その技法についても、著者の実演写真入りで紹介しています(簡潔ではあるけれども、一応、技法書としても使える)。

 さらに、自動車交通事故の誘因の1つともされるハイウェイ催眠など、日常に見られる催眠現象及びその類似現象について解説し、自律訓練法や脳性麻痺のリハビリテーションなどの催眠法による治療を紹介すると共に、後半は、学生運動における群集心理や政治における大衆操作などの「社会現象」としての催眠(暗示)を扱っています。

暗示と催眠の世界23.JPG暗示と催眠の世界24.JPG 「政治家のイメージも暗示で作られる」としているのは、最近言われる「ポピュリズム政治」をある意味先取りしており、リーダーを「父親型」と「母親型」に分類していて、"最近のわが国の政治家"の例としてそれぞれ、'68年の参議院議員選挙の全国区でトップ当選した石原慎太郎と、'67年に東京都知事選挙で勝利した美濃部亮吉を挙げているのが興味深く、また、時代を感じさせます(宗教界の父親型リーダーに創価学会の池田大作、母親型リーダーとして立正佼成会の庭野日敬を挙げており、集団の性格は、リーダーのタイプによって象徴されるとしている)。

 最後に、広告・宣伝における大衆暗示について述べていて、ビールはイメージ商品であり、キリン、サッポロ、アサヒの3社のビールの味の違いは、ビール会社の技師でも分らないと言っていたとあり、当時ビール市場に参入して間もないサントリーのテレビCMを巧妙と絶賛する一方、ビール市場からの撤退を余儀なくされた「タカラビール」を、味は他社にひけを取らないのに焼酎のイメージから脱却できなかった「悲劇的な例」としています。

 社会心理にまで言及したことで、1冊にやや盛り込み過ぎになったきらいもありますが、入門書としては読み易く、読み直すことでまた新たな興味が湧く部分もありました。

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わかり易くよく纏まっている。入門書として手頃なわりには"上質"。

図説 地図とあらすじでわかる!聖書.jpg  JESUS CHRIST SUPERSTAR.jpg ジーザス・クライスト・スーパースター.jpgジーザス・クライスト・スーパースター2.jpg
図説 地図とあらすじでわかる!聖書 (青春新書INTELLIGENCE)』「ジーザス・クライスト・スーパースター [VHS]

 旧約・新約新書のあらすじや解説を新書1冊に収めるのはもともと無理があるのではないかとも思いましたが、本書を手にしてぱらぱらめくってみると、2色刷りで体系的にわかり易く纏められており、ああ、これは聖書の複雑な構成を理解するにはいいなあと感じ、また、実際に読んでみて、「あらすじ」自体が大変面白ので、すらすら読めました。

 旧約聖書の壮大な「物語性」が抜け落ちてしまうことが危惧されましたが、確かに参考書を読んでいるような感じがしなくもない面もあったものの、全体としては物語性を排除しないよう、解説とあらすじのバランスに気配りがされているような印象を受けました。

 図説もよく整理されていて、また、情報の密度も濃いと思われ、諸説ある部分については、本文とは別に表などに纏めて再整理してあり、近年の研究成果や解釈なども入れ(キリストが両親に対して親子の情が薄かったことや、磔刑の際に十字架に腰掛けがあったことなどは新たな知識だった)、全体として偏りがなく、入門書として手頃なわりには"上質"であると言えるのではないでしょうか。

 地図による図説が多用されているのも、個人的には知識ニーズに適っていたように思え、また、物語の背景にある歴史的・政治的背景にも言及されていることで、簡潔な解説の中にもシズル感がありました。


 ハリウッドにはユダヤ系の才能も資本も集まってきたため、旧約聖書に材を得た映画が盛んに作られたようで、「サムソンとデリラ」('49年/米)、「十戒」('57年/米)、「ソドムとゴモラ」('62年/伊・米)、「天地創造」('66年/米・伊)など多くがありますが、新約聖書に材を得た映画では、リチャード・バートン主演の「聖衣」('53年/米)やロックオペラの映画化作品「ジーザス・クライスト・スーパースター」('73年/米)があり、後者は、背景に現在と過去が交錯して(キリストがロックミュージックのスターみたいに描かれている)ヴィジュアル的にも時代背景をぼかした感じでしたが、ストーリー自体は聖書をきちんとなぞっていたのではないかと。

 BSの再放映('09年6月)で久しぶりに観ましたが、ローマ総督のピラトが最初はイエスに刑を科すことを躊躇するくだりなどは、聖書及び本書の解説にもある通りに描かれていいます(それはそうでしょう、本国には聖書に精通している人が一般国民の中にも多くいるわけだし)。

 監督のノーマン・ジュイソンはユダヤ人で、「屋根の上のバイオリン弾き」('71年/米)なども撮っていますが、どちらかと言うと、万人受けするような映画を作るタイプ?(音楽はブロードウェイ・ミュージカル「キャッツ」や「オペラ座の怪人」を手掛けたアンドリュー・ロイド・ウェバー)
 この作品は舞台ほど過激でないにしても(ブロードウェイの舞台では、イエスがユダと口と口でキスする場面があり物議を醸したそうだが、この映画では普通に頬にキスするだけ)、彼の作品の中では異色の方かも知れません。

ジーザス・クライスト.jpg ジーザス・クライスト1.jpg ジーザス・クライスト2.jpg ジーザス・クライスト3.jpg ジーザス・クライスト4.jpg ジーザス・クライスト5.jpg ジーザス・クライスト6.jpg ジーザス・クライスト7.jpg 

「ジーザス・クライスト・スーパースター」●原題:JESUS CHRIST SUPERSTAR●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:ノーマン・ジュイソン●製作:ノーマン・ジュイソン/ロバート・スティグウッド●脚本:ノーマン・ジュイソン/メルヴィン・ブラッグ●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:アンドリュー・ロイド・ウェバー/アンドレ・プレヴィン/ハーバート・スペンサー●原作:ティム・ライス●時間:106分●出演:テッド・ニーリー/カール・アンダーソン/イボンヌ・エリマン/バリー・デネン/ボブ・ビンガムド●日本公開:1973/12●配給:CIC●最初に観た場所:中野武蔵野館(77-10-29)(評価:★★★☆)●併映:「ブラザー・サン シスター・ムーン」(フランコ・ゼッフィレッリ)

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人類進化に関する知識をリフレッシュするのに手頃。諸説をバランスよくまとめ入門書。

人類進化99の謎.jpg 『人類進化99の謎 (文春新書)』 ['09年]

Sahelanthropus tchadensis.gif 本書によれば、人類進化学というのは、大体10年ごとに人類化石の大きな発見があり、その度に進化図ががらりと書き換えられているそうですが、21世紀に入って起源的人類の発見が相次ぎ、2001年にアフリカ中部のチャド共和国で見つかった化石(サヘラントロプス・チャデンシス (Sahelanthropus tchadensis))により、人類のルーツは700万年前に遡ったそうで、もっと古い人類種が未発見で眠っているとも推定されるとのことです。

The red dot marks the site at which a skull of Sahelanthropus tchadensis was found.

 以前に、ネアンデルタール人の研究をしている奈良貴史氏が養老孟司氏との対談『養老孟司 ガクモンの壁』('03年/日経ビジネス人文庫)(『養老孟司・学問の挌闘―「人間」をめぐる14人の俊英との論戦』('99年/日本経済新聞社)改題 )で、ネアンデルタール人がホモ・サピエンス(現生人類)とある期間共存していたと言っていたのが興味深かったですが、ネアンデルタール人というのはホモ・サピエンスの"先祖"ではなく、学術名がそれぞれ Homo neanderthalensis、Homo sapiens sapiens となっているように、両者はホモ属の中で"従兄弟"関係にあることを本書で再認識しました(ホモ属全体で見ると200数十年前からいて、ネアンデルタール人が滅んだのは2万数千年前とのこと)。

Sahelanthropus tchadensis.bmp かつて学校でアウストラロピテクス((Australopithecus)が一番古い猿人だと習いましたが、アウストラロピテクスというのは属名で、その中にもいろいろあり、それでも一番古いもので400数十万年前だったように思いますが(このあたりまでは習ったような記憶がある)、サヘラントロプス・チャデンシスの「700万年前」というと、それより200数十万年も古いことになります。

Sahelanthropus tchadensis

 1テーマ見開き2ページですが、ある程度テーマが繋がっていて、あまりぶつ切り感がなく読めるのが本書の特長かと思います。
 それでも巻末の「人類進化の系統図」を参照しながらでないと、ホモ属にしろアウストラロピテクスにしろ、それより古い猿人にしろ、今どの年代の辺りにいた人類の話をしているかわからなくなる―それはとりもなおさず、本書が新書でありながら、細分化された各種の最新の情報を丁寧に読者に提供しようとしていることの証なのかも知れません。

 「ヒトはいつ、どこで誕生したのか」「ヒトははたして強い狩猟者だったのか」「いつから火を使い出したのか」「ヒトはなぜ、いつ、アフリカを出たのか(ヒトは永らくアフリカにいた)」「ヒトはいつから言葉をしゃべれるようになったのか」「ヒトの暴力性は古くからあったのか」「ヒトの性による役割の違いは、いつからは始まったのか」といった素朴な問いの設定からもそのことが窺え、多くは推論でしかないと言えばそうなるのかも知れませんが、諸説をバランス感覚を以って取り纏めているような印象を受けました。

人類進化の本38.400万年の人類史.jpg 著者は学者ではなく元朝日新聞社の科学ジャーナリストですが、この分野を長らく深耕している人で、著者の本を個人的に最初に読んだのは、『400万年の人類史―ヒトはいかにして地球の主になったか』('83年/カッパ・サイエンス)であり、分かり易い人類学の入門書であるとともに、当時のアメリカにおける最新の人類学や考古学の状況が取材に基づいて報告されていました。

 著者のより最近の著書『ネアンデルタールと現代人―ヒトの500万年史』('99年/文春新書)でも、サブタイトルの通り、最古の人類は「500万年」前とされているし、そう、意外と最近まで、最古の人類は「400万年前」乃至「500万年前」とされていたのだなあ。今世紀に入って一気に200万年も遡ったというのは、サヘラントロプス・チャデンシスの発見の衝撃がいかに大きかったかを思わせます。

400万年の人類史―ヒトはいかにして地球の主になったか (カッパ・サイエンス)

 どの年代においても複数種の人類がいたのに、今はホモ・サピエンスしかいないというのは確かに不思議で(著者はこのことについても一応の推論をしているが)、この先、人類は更に進化するのかなあ。人口は増えているけれど、ホモ属としては先細りしているような気もしないでもないです。

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はっと息を呑むような作品が目白押し。ナショジオ『ザ・フォトグラフス』の普及版であると同時に復刻版。

地球の瞬間.jpg  ザ・フォトグラフス―ナショナルジオグラフィック.gif
ナショナル ジオグラフィック 傑作写真集 地球の瞬間 (ナショナルジオグラフィック傑作写真集)』['09年]   『ザ・フォトグラフス―ナショナルジオグラフィック』(30 x 27.2 x 2.8 cm)['95年]

 サブタイトル通り、「ナショナルジオグラフィック(National Geographic)」の傑作写真約200点をまとめた写真集で、'95年刊行の大判写真集『ザ・フォトグラフス-ナショナルジオグラフィック』(日経BP出版センター)のミニ版(普及版)です。

 「ナショナルジオグラフィック」に掲載された、世界中のカメラマンが1世紀以上に渡って撮った写真が収められており、但し、『ザ・フォトグラフス』の実質的な再版であるため'95年以降の写真はなく(裏表紙にある表紙のアフガン難民の少女の17年後の写真を除いて)、70年代から90年代初頭にかけて撮影されたカラー写真が大部分を占めます。

 とは言え、膨大な点数の写真の中から傑作を選りすぐったというだけあって、自然を撮ったもの、人物を撮ったものの何れも、はっと息を呑むような作品が目白押しです。

 世界各地に生きる様々な国籍や人種の人々、戦争や飢餓などに苦しめられる人々を撮ったものから、海中に沈むタイタニック号や飛行機が墜落した決定的瞬間を捉えた写真まで様々ですが、やはり、自然と生き物を撮った写真が圧巻で、個人的には、干上がった塩湖を行くラクダの隊列を真上から撮った写真が気に入りましたが、極地に住む動物たちを写したものも傑作が多いように思いました。

 「ナショジオ」は現在も、日々、膨大な写真・映像データベースを蓄積中であり、ウェブでその最新のものを観ることができますが、本書が約15年前の原本の刊行であることから、本書に出てくる写真は、何れも傑作でありながら、ウェブの検索順位ではかなり下位の方になるのではないでしょうか。

 そうした意味では、『ザ・フォトグラフス-ナショナルジオグラフィック』から14年を経ての本書の刊行は、「復刻版」的意味合いもあるように思い、多くの優れたカメラマンの工夫や努力が、現在のナショジオの写真集成の礎としてあることに想いを馳せる契機となる写真集でもあるように思いました。

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文章はやや物足りないが写真はピカイチ。曇天の写真がもっとあってもいいのでは。

エーゲ海 青と白が誘う52島.jpg 『エーゲ海 青と白が誘う52島』 カラー版 ギリシャを巡る.jpg 『カラー版 ギリシャを巡る (中公新書)

遠い太鼓1.jpg 写真家の萩野矢慶記氏がエーゲ海の島々を獲った写文集で、以前に村上春樹氏が『遠い太鼓』('90年/講談社)にギリシャとイタリアの島々に滞在していた時のことを書いたものを読んでエーゲ海の島々に関心を持ち、この著者の『カラー版ギリシャを巡る』('04年/中公新書)を読んだのですが、ギリシャ本土とエーゲ海、イオニア海の島々を網羅していて、その分、取り上げている島の数は多いが、1つ1つの島の写真や解説はほぼ1ページに収められてしまったため、コンパクトではあるが視覚的にも内容的にも物足りなかった...。
 文章も紀行文というより解説文に近い感じで、何だか観光ガイドか観光データベースみたいな感じがしました(そうした目的で使用するならそれでもいいが、そうならば新書に入れる必要があるかと)。

 今回の写文集はエーゲ海に焦点を絞っていて、本の体裁が大判ではないものの新書サイズよりはゆったりしていて写真が大きめであるため、風光明媚なエーゲ海の島々の様子を堪能でき、そこで暮らす人々の様子なども多く取り上げられているため、1つ1つの島の個性のようなものが浮かび上がってきます。
 但し、紀行文や写真に添えられたコメントは相変わらず観光ガイド調で(JTB系の出版社ということもあるのか)、やはりこの人は、「文章」よりも「写真」の人なのでしょうか。

 エーゲ海に限ったと言ってもやはり相当数の島々があるわけで(52島)、村上春樹氏が滞在したスベツェス島なども結局は僅か1ページの写真と解説になってしまっていて、これはもう仕方の無いことなのか...、こんなに島だらけなら。
 村上氏はシーズンオフにこの島を訪れ、他の島やギリシャ本土も含め、地中海性気候の冬の降雨期や春先の微妙な気候の変化を経験していますが、こうした写真集に出てくるギリシャ及びその島々というのは、いつも抜けるような青空の下にある、つまり一般にイメージされているそれであって、この辺りも、もう少しいろいろな天候を織り込んでも良かったのではないかと(取材の都合でそうなってしまったのかも知れないが)。

萩野矢慶記.jpg とは言え、写真の腕はピカイチ。萩野矢慶記氏は1938年生まれで、車両機器メーカーの営業一筋で16年間勤務した後、'83年に写真家に転進したという人。結果として、70歳を迎えて今も「現役」、と言うか「第一線」にいます。
 別の所で、定年後の時間の使い方に悩む人に「趣味でも何でも、とにかく徹底的に挑戦したら新たな人生が開けるのではないでしょうか」とアドバイスをしていますが、自分自身は44歳で独立しているんですよね。
 個人的には、第2の人生をスタートさせるなら、やはり40代ぐらいがいいのかなあと思った次第。

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イラストによるビジュアル教材だが、解説は大人の好奇心をも満たすレベル。

スペース 宇宙.jpg 『スペース 宇宙 (insidersビジュアル博物館)』 (2008/01 昭文社)
(26.8 x 24.6 x 1.2 cm)

 米国 Weldon Owen社による国際的出版プロジェクト"insiders"シリーズの日本語版で、このシリーズ、テーマは歴史、考古学、自然、生物・生命、技術に渡り、世界各国で出版されているそうですが、日本でよく見かけるのは生物や恐竜関係ではないでしょうか。そうした中、本書のテーマは「宇宙」。

 全64ページ、オールカラーの見開きイラストで、「宇宙」と言っても幅広いですが、ビッグバンから始まって太陽系の星々を地質学的な観点から解説し、「宇宙の雪だるま」現象や恒星、星雲、銀河について、さらに宇宙探査についての解説までが前半で、後半に太陽系や恒星と銀河の一般的な解説をもう一度もってきているという変わった構成です。

 最近は日本の図鑑などでも、教科書的な順番でなく、こうしたテーマ主義的な構成のものがありますが、まずテーマと大迫力のイラストで惹きつけて、更に関心がある学習者のために、その知的好奇心を満たすだけの詳細な解説がされているというところでしょうか。
 基本的には青少年向け教材らしいのですが、解説部分には結構"大人の好奇心"を満たす専門的なことが書いてあるように感じました。

 全ページに渡る見開きイラストは確かに迫力はありますが、NASAの専属イラストレーターなどが描いたCGと比較すると、やや"絵"的と言うか、"解説"に比重を置いたものになっている気がし、星雲や惑星のイラストはクラシカルな感じさえするものもあります。
 但し、宇宙探査に関する部分(宇宙探査機、月面基地、国際宇宙ステーションなど)はよく描かれていて、解説も詳細です。

 その他に写真も多く使用されていますが、それらはあくまでも解説の一環としてで、サイズも小さく、やはりメインはイラストによるビジュアル―中でも最も"豪華版"なのは、宇宙飛行士を描いた表紙かな(表紙がレリーフになっている!)。

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『大図鑑』と言うより「蛇柄」観賞用イラスト集。図書館で借りて"観る"本。『写真図鑑』の方がお奨め。

ヘビ大図鑑.bmp   千石先生の動物ウォッチング.jpg                爬虫類と両生類の写真図鑑.jpg
(28.2 x 22.6 x 1.8 cm)『ヘビ大図鑑―驚くべきヘビの世界』['00年/ 緑書房] 『千石先生の動物ウォッチング―ガラパゴスとマダガスカル カラー版 (岩波ジュニア新書)』 『爬虫類と両生類の写真図鑑 (地球自然ハンドブック)』['01年/日本ヴォーグ社]

『ヘビ大図鑑―驚くべきヘビの世界』.jpg 本書『ヘビ大図鑑-驚くべきヘビの世界』に見開きで描かれている蛇のイラストはいずれも大変に美しいのですが、一部、生態も含めたイラストがあるものの、半分ぐらいはとぐろを巻いている同じような"ポース"ばかりのもので、せっかくあの「千石先生」が翻訳しているのに、これではそれぞれの蛇の生態がシズル感を以って伝わってはきません(ある意味、"蛇柄"のカタログ)。

 それと、191ページで7000円という価格は、いくら何でも高過ぎ。「3000種を超える世界のヘビを収録」とありますが、イラストで紹介されているのは100種類にも満たないのではないでしょうか(1種を見開きで使っていたら当然そういことになるが)。図鑑と言うより贅沢なイラスト集、それも純粋に"蛇柄"の違いのみを楽しむマニアックなものという印象を受けました。

 蛇マニア("蛇柄"フェチ?)には魅力的な本かもしれませんが、一般の人にとっては、買う本ではなく、図書館で借りる本でしょう(「日本図書館協会選定図書」とのことでもあるし)。

『爬虫類と両生類の写真図鑑 完璧版』.jpg 図鑑という観点から本書よりもお奨めなのが、『爬虫類と両生類の写真図鑑 完璧版』('01年/日本ヴォーグ社/定価2,500円)。

 版は小ぶりですが、オールカラーで、世界の爬虫類と両生類を400種類紹介していて(写真は600枚)、1つ1つの解説も丁寧。よくこれだけ、写真を集めたなあという感じで、1ページに2種から3種収められていてコンパクトですが、分布、繁殖や類似種から、全長、食性、活動期間帯まで一目でわかるようになっています。

 オリジナルの英国版は両生類4,550種、爬虫類が6,660種が掲載されているそうで(すごい数!)、本書はそのほんの一部の抜粋版であるため、「完璧版」はちょっと言い過ぎのようにも思われますが、それでも蛇だけで160種を超える掲載点数であり、やはりこっちを買うことにしました。


映画「アナコンダ」2.jpg映画「アナコンダ」1.jpg そう言えば、ジェニファー・ロペス、ジョン・ヴォイトが主演した「アナコンダ」('97年/米)という映画がありました。伝説のインディオを探して南米アマゾンに来た映画作家らの撮影隊(ジェニファー・ロペスら)が、遭難していた密猟者(ジョン・ヴォイト)を助けるが、最初は温厚な態度をとっていた彼が、巨大蛇アナコンダが現れるや否や本性を曝け出し、アナコンダを捕獲するという自らの目的遂行のために撮影隊のメンバーを支配してしまう―というもの。

映画「アナコンダ」3.jpg映画「アナコンダ」4.jpg 大蛇アナコンダが出てくる場面はCGとアニマトロニクスで合成していますが、CGのアナコンダはあまり怖くなく、作品としてはどちらかと言うとスペクタクルと言うより人間劇で、アナコンダよりもアクの強い演技がすっかり板についているジョン・ヴォイトの方が怖かった(蛇すら吐き出してしまうジョン・ヴォイド?)。

アナコンダ2.jpgラスト・アナコンダ.jpg 後に「アナコンダ2」('04年/米)という続編も作られ(それにしても、南米にしか生息しないアナコンダをボルネオに登場させるとは)、更には「アナコンダ3」('08年/米・ルーマニア)、「アナコンダ4」('09年/米・ルーマニア)までも。「ラスト・アナコンダ」('06年/タイ)というタイ映画や「「アナコンダ・アイランド」('08年/米)という、蛇の大きさより数で勝負している作品もあるようです。
アナコンダ 2 [DVD]」('04年/米)「ラスト・アナコンダ [DVD]」('06年/タイ)
  
ボア [DVD].jpgボア vs.パイソン.jpgパイソン  dvd.jpg "アナコンダもの"が多いようですが、このほかに、「パイソン」('00年/米)、「パイソン2」(02年/米)、「ボア vs.パイソン」('04年/米(TVM))、「ボア」('06年/タイ)、「ザ・スネーク」('08年/米(TVM))など、蛇を題材にした多くの生物パニック・ホラー映画が作られており、コアな「蛇ファン」がいるのか(CGにし易いというのもあるのかも)。 
パイソン [DVD]」('00年/米)「ボアvs.パイソン [DVD]」('04年/米(TVM))「ボア [DVD]」('06年/タイ)
Boas (left) and pythons (right)
boa_and_python.png "コブラもの"の映画もあるみたいですが(追っかけていくとどんどんマニアックになっていく)、"ニシキヘビもの"は無いのか? 実は「パイソン」はニシキヘビ類全般を指す場合に用いられる呼称であって、「パイソン」の中にアミメニシキヘビなども含まれているわけです。更に、「ボア」も、アメリカ大陸(中南米)に生息するニシキヘビの一種で、ボア・パイソンとも呼ばれます。但し、分類学上は、ボア科が本科であり、ニシキヘビ科をボア科の亜科とする学説が有力なようです。ボア科とニシキヘビ科の違いは胎生か卵生かであり、「ボア」は胎生(卵胎生)で、ボア科の「アナコンダ」も胎生、これに対してニシキヘビは卵生です(但し進化学的には、本科のボアの方が亜科ニシキヘビより原始的)。映画「ボア vs.パイソン」は、「本科 vs.亜科」といったところなのでしょうか。
  
「アナコンダ」●原題:ANACONDA●制作年:1997年●制作ANACONDA 1997.jpg国:アメリカ●監督:ルイス・ロッサ●製作:ヴァーナ・ハラー/レナード・ラビノウィッツ/キャロル・リトル●脚本:ハンス・バウアー/ジム・キャッシュ/ジャック・エップスJr.●撮影ビル・バトラー●音楽:ランディ・エデルマン●時間:89分●出演:ジェニファー・ロペス映画「アナコンダ」dvd.jpg/アイス・キューブ/ジョン・ヴォイト/エリックジェニファー・ロペス in 「アナコンダ」.jpg・ストルツ/ジョナサン・ハイド/オーウェン・ウィルソン/カリ・ウーラー/ヴィンセント・カステラノス/ダニー新宿東急 アナコンダ.jpg・トレホ●日本公開:1997/09●配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント (評価:★★)
アナコンダ [DVD]」/ジェニファー・ロペス in「アナコンダ」


 ガラガラ蛇の生命力の強さを物語る動画があったので、酔狂半分でアップ。"キモい"のが苦手の人は見ないで。

蛇は頭だけになっても襲いかかってくる

 
Python eats Alligator, Time Lapse Speed x6

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"トバッチリ"が空を舞う。「西海岸」らしくていい。皆が憧れた時代があったなあと。

鈴木英人 表紙作品集 FMステーションイラストレイテッド」.jpg   鈴木英人 表紙作品集 FMステーションイラストレイテッド」4.jpg
『鈴木英人 表紙作品集 FMステーションイラストレイテッド』('84年/ダイヤモンド社)

 "わたせせいぞう"らとともに80年代を象徴するイラストレーターだった(山下達郎のジャケットデザインを数多く手がけている)鈴木英人(えいじん)の初期イラスト集で、ダイヤモンド社が発行していたFM情報誌「FM STATION」の'81年の創刊から'84年までの表紙を飾ったものを集めた「FM STATION」初の別冊ムック('84年12月刊行、当然のことながら現在絶版...。最近、この人の作品集、カレンダー以外では見かけないなあと思っていたら、「筆まめ」のソフトにあった。この手の絵は、季節的には冬の方が売れるのだろうか)。

 結局、鈴木英人は'88年まで「FM STATION」の表紙を担当することになりますが、'81年の最初の頃はミュージシャンの顔を描いていたのが、次第にアメリカ西海岸の風景などをモチーフにしたものへと移り、それで急速に人気上昇したという経緯があります。

 わたせせいぞう氏と少し画風が似ているところがあって、どのイラストにも、赤や緑や青や黄色の帯状のもの、本書解説の美術評論家・東野芳明氏に言わせれば「竹とんぼの羽根のような、かもめの翼のような、空飛ぶナメクジのような(これ、東野氏の娘さんが言ったらしい)、光線の束のような(これ、東野氏の奥さんが言ったらしい)"トバッチリ"が空を舞っている」のも似ています。

鈴木英人 表紙作品集 FMステーションイラストレイテッド」3.jpg わたせせいぞうは漫画家でもあるためか、イラストにも人物(日本人)が描かれることが多いのに対し、こちらは殆ど人物は出て来ないため、"西海岸"そのものという感じで、個人的には、和洋折衷型の前者(わたせせいぞう)よりはこっち(鈴木英人)の方が好きでした。

 鈴木英人は西海岸をドライブしながら撮った写真からイラストを描き起こしていたそうですが、ナルホド、そうした雰囲気がよく出ているし、FM・AMのラジオ・ステーションやその広告の看板などは、「FM STATION」の表紙にピッタリ。

 "ハードロック・カフェのマッチ"とか(本書のイラストでは「ロンドン」のロゴがあるのがミソ)、このイラスト集の影響でもないですが、自分もアメリカに行った際にいくつかの都市のを集めたりしましたが、ハードロック・カフェは今や上野にさえも店がある...。

 巻末にカセットケース・レーベルとして使えるイラスト(裏面に曲目が書き込めるようになっている)が付いていますが、何せ"カセット"だから時代を感じさせる...(本書の"保存版"としての価値を考えれば切り離して使わなくて良かった?)。

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