【1224】 ○ 岩田 一男 『英単語記憶術―語源による必須6000語の征服』 (1967/03 カッパ・ブックス)《(2014/12 ちくま文庫)》 ★★★★

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無味乾燥な記憶対象としてではなく、英単語に知的関心を抱かせるという点で親しみ易い本。

英単語記憶術2.jpg英単語記憶術   語源による必須6000語の征服.jpg 英語に強くなる本.jpg 岩田 一男.jpg 岩田 一男(1910-1977)
英単語記憶術―語源による必須6000語の征服 (カッパ・ブックス)』['67年]カバーデザイン : 田中一光 ; 本文挿絵 : 真鍋博 『英語に強くなる本―教室では学べない秘法の公開 (カッパ・ブックス)』['61年]

英単語記憶術89.jpg岩田 一男 『英単語記憶術5.JPG 受験生御用達とでも言うべきロングセラー、森一郎 『試験にでる英単語』('67年/青春新書)は、その章立てが、「派生語」がトップに来ていて、「接頭語・接尾辞」が最後に来ていることからも分るように、単語を例えば接頭語・接尾語でグループ分けして覚えていくやり方が特徴の1つで、このスタイルを受験参考書に採り入れたのが画期的だったということかも。

 但し、受験参考書類に限らなければ、この方式は翻訳家や通訳を目指す人向けの本に既にあったように思われ、一般向け(ビジネスパーソン向け?)の新書では、『試験にでる英単語』の少し前に刊行された本書『英単語記憶術』('67年/カッパ・ブックス)があり、章立ても「語根による記憶術」「接頭辞による記憶術」「接尾辞による記憶術」...となっていて、ここで採られている方式がまさにこれに該当します。

 例えば、「語根による記憶術」であれば、「北極と南極から等しい(equal)地点にあるから、赤道(equator)である」と。「接頭辞による記憶術」であれば、「発見する(discover)とはカバー(cover)とる(dis-)」ことである、「接尾辞による記憶術」であれば、「ライバル(rival)とは、川(river)の両側で魚を取り合う人(‐al)である」といった感じで憶えていく要領となります。

 この本、松岡正剛氏も「千夜千冊」で取り上げていています、。

 ―サンフランシスコへ行く飛行機で難波祐介が隣の席でしきりに本を読んでいる。他人が何を読んでいるのか覗くクセはないので、ずうっとほうっておいたのだが、二人旅の飛行機ではそれでは退屈しすぎるか、失礼かのどちらかなので、つい「それ、何?」と聞いてみた。それが本書だった。 難波君は建築出身のプロデューサーで、世界中の空港を出入りした数と頻度ではめったに他人に負けないコスモポリタンである。体力にも民族にも風土にも自信があって、クウェートに石油パイプを引くプロジェクトもタイに300校の小学校をつくるプロジェクトなども、日本人は難波君ひとりが切り盛り役だった。したがって英語はペラペラ、しかも早口でも喋れる。その難波君がかわいいカッパブックスの英語学習の本を読んでいる。しかも、岩田一男だ。例の大ベストセラー『英語に強くなる本』の姉妹本なのだ。それもこれからサンフランシスコに行こうとしている飛行機で夢中に赤線やら青線を引っぱっている。 「おもしろいの?」と聞くと、「いやあ、これ、よくできてますよ」と言う。(「千夜千冊」第219夜/2001年1月30日より)

英語に強くなる本.jpg 松岡氏自身も読んでみて「中身はなるほどうまくできている。少なくともエティモロジー(語源学)の学術本よりはずっと工夫がしてあるし、ハンディな語源辞典のたぐいの白々しさもない」と感心しています。因みに、上記引用の中に出てくる同著者が最初にカッパ・ブックスとして上梓した『英語に強くなる本―教室では学べない秘法の公開』('61年/カッパ・ブックス)は、発刊後3カ月で100万部を売り上げ、1954年創刊のカッパ・ブックスにとって最初のミリオンセラーとなっています(最終的に147万3000部売り上げた)。

 著者の岩田一男(1910-1977)はは英文学者で、『ジキル博士とハイド氏』『宝島』などで知られるロバート・ルイス・スティーヴンソン研究の日本における第一人者であるとともに、英語の語源学の権威だった人で、本書『英単語記憶術―語源による必須6000語の征服』は、語源にまつわる話がエッセイ風に取り上げられているのが読み易く、また1ページ1テーマで纏めているので(接頭・接尾辞をグループ化している)、どこからでも読めるという利点がありました。受験英語の参考書として使うにはちょっと悠長な感じもしますが、無味乾燥な記英絵辞典 岩田一男.jpg岩田 一男 『英単語記憶術』『英熟語記憶術』.jpg憶対象としてではなく、英単語に知的関心を抱かせるという意味では、親しみ易い本でした(●2014年にちくま文庫に移植されたが、真鍋博のイラストもそのまま生かされているのがありがたい)。その後、'68年に『英絵(えいえ)辞典―目から覚える6,000単語』、'69年に『英熟語記憶術―重要5,000熟語の体系的征服』を続けて刊行していますが、受験英語の参考書としてよりも、教養書&実践の書として読めるという点ではいずれも同じです。
英絵(えいえ)辞典―目から覚える6,000単語 (1968年) (カッパ・ブックス)』['68年]/『英単語記憶術―語源による必須6000語の征服』['67年]・『英熟語記憶術 重要5,000熟語の体系的征服 (KAPPA BOOKS)』['69年] 

英単語記憶1.JPG英単語記憶術 (ちくま文庫).jpg英単語記憶術: 語源による必須6000語の征服 (ちくま文庫)』(2014/02 ちくま文庫)

イラスト:真鍋 博

【2014年文庫化[ちくま文庫]】

  

《読書MEMO》
●1961年(昭和36年)ベストセラー
1.『英語に強くなる本』岩田一男(光文社)
2.『記憶術』南博(光文社)
3.『性生活の知恵』謝国権(池田書店)
4.『頭のよくなる本』林髞(光文社)
5.『砂の器』松本清張(光文社)
6.『影の地帯』松本清張(光文社)
7.『何でも見てやろう』小田実(河出書房新社)
8.『日本経済入門』長洲一二(光文社)
9.『日本の会社』坂本藤良(光文社)
10.『虚名の鎖』水上勉(光文社)

●1967年(昭和42年)ベストセラー
1.『頭の体操(1)』多湖 輝(光文社)
2.『人間革命(3)』池田大作(聖教新聞社)
3.『頭の体操(2)』多湖 輝(光文社)
4.『華岡青洲の妻』有吉佐和子(新潮社)
5.『英単語記憶術』岩田一夫(光文社)
6.『頭の体操(3)』多湖 輝(光文社)
7.『姓名判断』野末陳平(光文社)
8.『捨てて勝つ』御木徳近(大泉書店)
9.『徳川の夫人たち』吉屋信子(朝日新聞社)
10.『道をひらく』松下幸之助(実業之日本社)

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