【1219】 △ 長尾 基晴 『人事のプロ (THEORY BOOKS)』 (2009/02 講談社) ★★★

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ほぼオーソドックスだが、大企業、メーカーにやや偏っている。誰と比べて「プロ」なのか?。

人事のプロ.gif 『人事のプロ (THEORY BOOKS)』 ['09年]  人事はどこまで知っているのか.jpg 岩瀬達哉 『人事はどこまで知っているのか (セオリーブックス)』 ['08年]

 著者は企業の人事部を経て今は人事コンサルタントをしている人、企業における人事評価や出向・転籍、採用や昇格、賃金制度、労務問題への対応などについて、人事部の中でどのようなことが行われているか、また、それらの今あるべき姿というものがどのようなものであるかを書いていて、人事の内実を明かしたという点では、同じ講談社セオリーブックスの『人事はどこまで知っているのか』(岩瀬達哉著/'08年)と似てなくも無いですが、あちらはジャーナリストが書いたもので、一方のこちらは「人事のプロ」が書いたもの (とのことで、ある程度期待して読み始めたのだが...)。

 事例を入れて読み物風にわかり易く書いていますが、書かれていることの趣旨自体はオーソドックスである分、尤もであっても特に目新しさは無く、気になったのは、それぞれのテーマや話の背景として想定されているのが、大企業、生産部門を持つメーカー企業に限られていると思われる部分がある点と、人材教育・育成的な話にウェイトが置かれていて、制度的な話になるとそれほど専門的なことが書かれているわけではなく、運用論などで啓蒙的方面に逃げてしまっていること。
 また、全体として、社内コミュニケーションの大切さなどは説くが、企業も従業員も成長していくにはどうしたら良いかという大きな視点がやや希薄な印象を受けました。

 「人事のプロ」というのは、一般の人事部員に対して「プロ」なのか、一般の社員に対して「プロ」なのか、「セオリーブックス」(ビジネスパーソン全般がターゲット?)の1冊ということで、後者ともとれるわけで...。

 実際、著者の経歴を見ると、大手自動車部品メーカー(トヨタ系)の人材開発部出身で、そこに10年いたとのことですが、企業規模が大きいだけに、10年では経験できる業務領域は限定されるのではないかと思われ(本書に書かれているような人事が外からどう見られているかということは、人事部長まで経験しなくとも、人事に数年いれば分かる)、独立後も"メーカーを中心に"人事制度構築と浸透に関するコンサルティングを行っているとのこと、中小企業にいる人や非製造業にいる人が読んでも、ややぴんとこない部分があるのはいたし方ないかも。

 一般の人が「読み物」としてざっと読むにはまあまあですが、人事部に何年かいる人が読んでも、それほど多くのものが得られるようには思えませんでした。

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This page contains a single entry by wada published on 2009年8月30日 00:14.

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【1220】 ◎ 元井 弘 『目標管理と人事考課―役割業績主義人事システムの運用』 (2007/08 生産性出版) ★★★★★ is the next entry in this blog.

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