「●人材育成・教育研修・コーチング」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3421】 ローラ・ウィットワース/他 『コーチング・バイブル (第2版)』
「技術」以前にコーチングの本質とは何かということが読み易く書かれている。
原口 佳典 氏(コーチングバンク代表/略歴下記)
『人の力を引き出すコーチング術 (平凡社新書)』['08年]
全5章の構成で、まず第1章で、コーチングとは「自然習得力を向上させ」「自己成長を促す」ものであるということを、アメリカにおけるコーチングの誕生と発展の歴史的経緯から辿り、それが日本にどのような形で入ってきて現状はどうであるかを解説、第2章では、ビジネス現場へコーチングを導入する際の留意点は何かを成功例・失敗例を挙げて解説するとともに、以上を通して、コーチングとはコミュニケーションを改善させる媒体(手段)であってコンテンツ(目的)ではないこと、人を操る手段ではなくてモチベーションをアップさせるものであることを述べています。
第3章では、「聴く」「語る」「質問する」というコーチングの3つの基本スキルについて解説し、第4章では、コーチングによって「自然習得力を向上させ」「自己成長を促す」には、この3つに加えて「想像する/想像させる」「提案する/提案させる」「決定する/決定させる」ということが大切であり、それはどのようなことを指すのかを会話例などで解り易く解説、第5章では「コーチングが効果的な10の分野」を挙げ、コーチングがビジネスのためだけのものではないことを示しています。
著者も述べているように、本書はコーチングの個々のスキルについて書いたノウハウ本ではなく、「技術」以前のコーチングの本質とは何かということを中心に体系的に書かれていて、それでいて読み易く、また一読した後にどこからでも再読できるという"優れもの"、とりわけ冒頭の、コーチングの起源とされるテニスプレイヤーのW・ティモシー・ガルウェイ(W.Timothy Gallway)の書いた『インナーテニス』('72年)に関する記述は詳しく、この本の中でガルウェイが述べている「自然習得力を向上させ」「自己成長を促す」というコーチングの概念は、本書全体を通して繰り返されています。
事例やエピソードも豊富で、最終状態を「想像する/想像させる」ことが目標達成を早めることになることをゴルフを例とし、殆どのゴルファーが良いバックスウィング、良いダウンスウィングをすれば良いショットができると考えるのに対し、タイガー・ウッズは、どういうインパクトをすれば良いかから考え始めるといい、彼の父親のアール・ウッズは、息子にゴルフを教えるに際して、ドライバーから練習を始めるのが通常であるのに対し、「ゴール」であるパットから練習させたとのこと。ゴルフの目的はカップにボールを沈めることであり、上手にスウィングすることではないからであると。
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原口 佳典 (はらぐち・よしのり)
1971年福岡県生まれ。愛知県立旭丘高等学校卒。早稲田大学第一文学部社会学専修(宗教社会学・物語社会学) 卒業後、株式会社三省堂書店に入社。医学書販売を担当。その後、店舗設計に携わり新店を開発した後、1999年2月、インターネットの世界に魅力を感じ転身。ビズナレッジ(株)・(株)コーチングバンク代表。(財)生涯学習開発財団認定コーチ、経営品質協議会認定セルフアセッサー。
《読書MEMO》
●「相手の価値観を尊重すれば、よりよいコミュニケーションをとることができる」(W・ティモシー・ガルウェイ)(33p)
●コーチングが目指すのは、純粋に「自然習得力」を持った、自立した人間である。コーチはあくまで援助者であって、先生やトレーナーではない(51p)
●コーチングはあくまでコミュニケーションの改善を行うだけのもの(95p)
●コーチングをビジネスに活かす方法(103p)
1.M&Aや経営改革を強烈なリーダーシップで引っ張りたいとき(コーチング型のマネジメントは変革で生じるストレスを緩和させる方法として有効)
2.コーチングの導入目的を単にコミュニケーションスキルの向上と捉える(チームや部署内の空気を良くするために、或いは、コミュニケーションスキルを向上させるためにためにコーチングを研修の一環として取り入れる)
●クライアントは語ることによって、自分の行動や感情、体験や気持ちをはっきりと認識する。その語りを未来につなげ、次のステップを明らかにする。(131p)
●最終状態をイメージすることで、自ずとその方向に向かおうとする。この「想像させる」ことが、目標達成を早めることになる(146p)