【1214】 ○ ヘイコンサルティンググループ/浅川 港 『世界で最も賞賛される人事―グローバル優良企業に学ぶ人材マネジメント』 (2007/10 日本実業出版社) ★★★★

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グローバル優良企業の何れもがバリューとコンピテンシーを大変重視していることが窺える。

世界で最も賞賛される人事  .jpg世界で最も賞賛される人事.jpg 『世界で最も賞賛される人事』 (2007/10 日本実業出版社)

 ヘイグループとフォーチュン誌が共同で毎年調査・公表する世界で最も賞賛される企業」(The World's Most Admired Companies)ランキングで常連で上位に位置するグローバル優良企業のヴァイスプレジデントやアジアの人事・組織戦略の責任者に、自社の人づくり・組織づくりの考え方や戦略を取材したものです。

 メインで取り上げられているのは、GE、ジョンソン&ジョンソン、アメリカン・エキスプレス、P&G、フェデックス、ネスレの6社で(その他、IBM、マイクロソフト、BMW、ノキアにも言及)、とりわけ担当者自身がレポートしている前半の3社は1社当り約50ページを割いてその企業の人材戦略が詳説されています(後半の3社はインタビュー形式)。

 読んで分かるのは、それぞれの企業が何れもバリューやコンピテンシーを大変重視していることで、とりわけ興味深かったのはGEでした。
 CEOがジャック・ウェルチからジェフ・イメルトになって更に様々な概念や手法が精緻化しており、例えば「評価」の仕組みについても、まずコミットメント以上の結果を出した人(エクセプショナル=優秀)、コミットメントどおりだった人(サティスファクトリー=満足)、コミットメントを達成できなかった人(ニーズ・インプルーブメント=要改善)の3グループに分け、次に各グループの中でGEバリューを非常に高く持っている人、普通の人と、改善が必要な人の3種類に分け、その結果、9つのブロックに分かれる「9(ナイン)ブロック」になっているほか、そうして選別されたトップ20%の中で更に競争をさせていくとうのがGEの人材育成の手法であるというイメージがあったものの、実は、ボトム10%の「レス・エグゼクティブ」とされた社員にも改善プログラムが用意されていること、ミドル70%の「ハイリー・バリュード」も大切にしなければならないというのが最近の考え方であること(この考え方はトヨタ、キャノンなどの日本企業から学んだとのこと)など、ウェルチの『わが経営』には見られなかった記述もありました。

 ジョンソン&ジョンソンの「クレドー」(「我が信条」)は有名ですが、アメックスなども評価の半分はコンピテンシーで決まるというから、人材評価においてバリューやコンピテンシーを重視しているのはGEだけではないということが窺え(アメックスの事例からは、コンピテンシーが一度定めたら不変というものではなく、時代の変化とともにブラッシュアップしていくものであるということも汲み取れる)、また、いくつかの企業がダイバーシティを重視しているのも興味深いです(P&Gは「5つの主要な行動目標」の第一が「多様性を確保する」)。

 何れにせよ、人材戦略の無い企業に発展は無いということ、グローバル優良企業におけるそれは極めて具体的なものであること、それらの企業はリーダー育成のための様々な仕組みを持っていることなどを実感させられる内容でした(当事者が書いている分、総花的で"手前味噌"感も無きにしも非ずだが)。

《読書MEMO》
●GE
・4つのアクション(イマジン(imagine創造する)・ソルブ(solve解決する)・ビルド(build築く)・リード(leadリードする))を支える8つのバリュー(情熱・工夫に富む・チームワーク・開かれた・好奇心・責任を持つ・コミットメント・鼓舞する)
・2年間で4つのビジネス課題を解決する「リーダーシップ・プログラム」―あえて異なるビジネス領域を転々とさせて「苦しい状況の中で短期間に打開する能力」を養わせる
・リーダーに求められる3つの要素(GEバリュー、専門知識・能力、経営への精通)
・大多数の70%にも目を向け、潜在能力を引き出す
・多様性(ダイバーシティ)のないところにイマジネーションはない
●ジョンソン&ジョンソン
・すべては「クレドー」(「我が信条」)のもとに―4つのパラグラフ、21のセンテンスから成るクレドー
・「我が信条」では、第1は医者や患者に対する責任、2番目に社員に対する責任、3番目に社会に対する責任、最後に株主に対する責任をあげている
・「任せる」ことで顧客への責任を実現できる―信頼されて任されるほど、人のやる気を喚起するものはない
・人事は全社的タレントへの責任を持つ
・ダイバーシティの進展は業績につながる
●アメリカン・エキスプレス
・コンピテンシーの変更に先立ちコーポレート・バリューを見直す―36項目あったコンピテンシーを(8つのバリューと)8つのコンピテンシーに
・評価の半分はコンピテンシーで決まる
●P&G
・PVP(Purpose, Values, Principles)
・5つの主要な行動目標(1.多様性を確保する、2.企業理念に基づく行動を徹底させる、3.社員の意欲と向上心を引き出す、4.人材は内部で育てる、
5.変化への適応力と生産性の高い組織をつくる)

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